第114話 最強による編成チーム。
ここからは忍によるチーム編成の話となります。
閻魔から依頼を受け、帰宅した忍は早速行動を共にするチームの編成へ移った。
(『アトラス財団』、名前の通り何かをする会社だな。その何かの正体は後で閻魔に聞くとして、調査するメンバーをどうするかだ)
ベッドの上に『覇気使い』関連の写真をバラ撒いた。じっくりと吟味しながら頭の中で設計図を組み立てる。
(……ここは安定の雅を採用するか。調査ぐらいならできるだけ少人数で動きたい、俺と雅と誰かだ。品川修二は落ち着きが無い上、煽り耐性も皆無、削除)
赤マジックで修二の写真にバツ印をつける。
(相川祐司、検察で働く『鉄の覇気使い』。コイツは確かに頭は良い、組んでみるのも面白そうだが、閻魔の依頼というのは命に関わる。初めてには荷が重い、これも削除)
相川を採用しようと考えた。が、修二が来るまで雅にコテンパンされていたので、生命関係は危ないと判断し、除外した。
(輝にするか? いや暫く海道を留守にするから強い奴が残っていないとな、これも削除。カズにしてみるか? だが、警察官だから無理強いは出来ない……削除。シェリア……いや削除。)
次々と知り合いで扱いにくい『覇気使い』は除外していく。南雲は協調性がないという簡単な理由で除外された。
所在不明の二名だけは相手にせず、次々と模索しながら計画設計する。
(残ったのは吹雪雅人だけか……)
一度は司祭命令で柏木や桐崎等を使おうと考えた。が、職権乱用なんかすれば閻魔にも迷惑が掛かるので止めた。
(コイツは協調性もあれば、鋭い観察力、そして意外な所から妙案が出てくる。そして何より重要なのはコイツが暇だという事だ……早速、家を探して拉致るか)
吹雪に対して無礼だとは思わず、早速接触する為、家を探す。
「お呼びでしょうか忍様?」
そこへ忍から、呼び出された中年の執事が部屋へと入り、命令を尋ねた。
「吹雪雅人の所在地を探してください。俺の計画に必要なので……後、それと一番いい菓子折りの店は何処にありますか?」
その頃、何も知らない平和に部屋でゲームをしている吹雪は……
「あ~またか。現実で悪魔は倒せるのにゲームになると完全に負けるな」
部屋は色々なゲームキャラクターのポスターが飾られ、枕が二つあるソファーベッド、テレビ下には、ファミコンからプレステーション4まで揃っていた。
吹雪がプレイしている物は所謂死にゲーという物らしく、覚えては負けての繰り返し作業でクリアを目指していた。
「……まあ、しょうがねぇ。ここで文句言ったってクリアできるわけじゃねぇからな、よし再挑戦だ!」
と意気込む数秒後……
「雅人? 美鈴ちゃんが来てるわよ?」
そこへ吹雪の母親が玄関から呼び掛ける。
「え? 美鈴? 今日デートの約束はしてへんよ、オカン?」
「アンタ忘れてんちゃうん? ほら、彼女待たしてんねんから、早よういき」
吹雪の母親は台所へ移動したらしく、後は本人である吹雪に任せられた。
致し方ない気分で吹雪は毛髪を掻きながら玄関まで向かう。
「美鈴、今日はデートの約束はしてへん……で……」
吹雪は気ゲルげな様子でドアを開き、美鈴に対して、デートの約束はしてないと文句を述べようとした。が、一瞬にしてダルさから不快感へとシフトチェンジした。
吹雪の瞳に映った景色は……高身長、見覚えのあるサングラス、女物の黒いワンピースを着用した身体がムキムキの男、更には銀髪のツインテールまでしに来た。
衝撃的な出来事に吹雪の顎は自然と落ち、唖然としていた。
「吹雪く~ん、彼女の天海美鈴が迎えに来たよ? どうしたのかな~? あ、もしかして! 私の姿でエッチなこと想像したでしょ~もうヘ・ん・た・い! なんちゃって~」
ノリノリな様子で美鈴に成りきる神崎忍がいたのだ。
「……お前、今すぐ通報か殺害されたくなかったら、答えろ……ここへ何しに来やがったぁぁぁぁぁぁッ!」
「コラ、雅人! 大声なんか出したらアカンやろ! 近所迷惑やで!」
全力全快で吹雪による魂のツッコミが炸裂した。そして母親にまで注意される始末だった。
「仕事の依頼と嫌がらせ。後、お母様に迷惑が掛かるから、菓子折りは渡しておいた……」
「そういう事じゃねぇ……なんでテメェが、俺に仕事なんか依頼することあんのか? って聞いてんだよ。頭悪いのか?」
怒り狂っている吹雪は素早く形成した。氷のナイフで、首元へと近づけていた。
「……暇そうだから、お前にした。以上、何か文句あるか? 無いなら、今すぐ家に上がらせて麦茶の一つでも用意したらどうなんだ? えぇ? 一般庶民くんよ?」
腕組みながら吹雪を見下した様子で上がらせろと言ったのだ。
「おい、客観的に見てみろよ。どっちが悪者に見える? 強面なパーマイケメン野郎と女装変態不審者が喧嘩してんだぜ? もう見た目だけで判明してんだろ?」
「……なるほど、見た目で判断されるから俺が強いと言っているのか。だったら……」
忍は両手を目で覆い隠し、吹雪の膝位置までしゃがむ、そして……
「うぇーん、うぇーん、酷いよ~吹雪くん私を捨てるんだ~。この五年間付き合ってたのに、エッチした後はいらないんだ~。他の女の子とヤりたいから、私は捨てるんだ~。うぇーん、うぇーん……」
忍による泣き寝入りが発動した。吹雪から見れば酷い光景で、とても続けて見れる状況でもなかった。だが、効果覿面だった。
忍の女声は本物で、誰もが正体を知らなければ勘違いする程だ。それが数秒続くと次々とマンションから住民が野次馬の如く出現する。
「わ、分かった! もう止めろ、これ以上見てられる自信もなければ、こっちが恥ずかしくていてられねぇよ!」
流石に野次馬が集まりだすと吹雪は焦りだし、忍を家へ招き入れる。が、そこに忍は存在しなかった。
「あれ? 何処に行ったアイツ……あの、なんか変な人がいたみたいなんで……」
忍が荒らしに荒らしまくった物を何とか吹雪は収めようとした。
何とか野次馬を収めて吹雪は疲労気味で自室へと戻った。
「お疲れさん、問題解決は流石だな。これで実力が見られたから、採用は決定だな……?」
忍はソファーベッドへ座り、細い目でバトル漫画を読みながら悠々自適に過ごしていた。
そして吹雪の採用を決定した瞬間、足下には氷が纏まりつき、ガッチリと拘束されていた。
「おい、目的はなんだ? こんな、しょうもない事に付き合わせたんだ。くだらねぇ事なら、品川か南雲を呼んでブッ飛ばしてもらうぜ?」
自分の『覇気』では透過するだけなので、ここは効果ある二人へ頼み、痛い目にあってもらおうと言った。
他人任せかよと忍は内心呆れた。
「……まあ、聞け。お前にとっても悪くない話だ。報酬が出て、更には俺に恩まで作れるんだぞ? 南雲の件で恨んでる、お前には都合のいい話だろ?」
ヘラヘラとした様子で忍は報酬等の話を続けた。
「都合が良すぎて気に入らねぇんだよ!」
吹雪は忍の胸ぐらを掴み、強い目で激昂した。
「テメェ一体何がしてぇんだよ? いきなり来ては挑発したり、更には協力しろ? ふざけんのも大概にしろ!」
「……」
ここは茶々を入れずに忍は黙って、吹雪の話を聞いていた。
「……何か言えよ。胸ぐら捕まれて、馬鹿相手に色々と言われてんだぞ? 普段のテメェなら数倍言い返すだろ! 何があったんだよ?」
「……話して欲しかったら離せ。折角、お前を馬鹿にする為の服が台無しになるだろ?」
いつもの調子に戻ったのか、忍は吹雪を軽く馬鹿にして訳を話そうとする。
納得した吹雪はみるみると手の力を緩ませて、離した。向かい合うように地べたへ座り込んで、真剣に聞こうとした。
「さて、ここから話すのは覚悟がいるぞ? 冗談抜きのな? それでも聞くか?」
「――何時もの事……ってアンタだから簡単には行かねぇけどよ。話なら聞くぜ?」
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