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第92話 それも我々の世界ではご褒美です

「じゃあ、始め!」


「……物理の盾(ナチュラルガード)


 開始とともに、魔法をかけたノー。

 かかった後から名前を言ったけど、呪文じゃないなら言う意味なくね?


時間差の矢地獄(ヘル・アロー)!」


 ワインはドットを破った技をノーに放つ。

 よく考えたら、ノーが重傷を負ったら誰が治すんだろう?


「……くっ! やっぱりね」


 と思ったけど、その矢は全て見えないガードにかき消された。


「ファイア」

「っ!」


 炎の魔法を繰り出したノーと、それを何とか避けるワイン。

 また言う前に出してたけど、逆に動かないので予備動作もなく、いきなり魔法が飛び出てくるのは、結構怖い。


 しかし、ワインは弓が効かない以上、体術しかないが、小柄なエルフは力業が一番苦手なのだ。

 だが、今回は相手も体術の心得はないし、そもそも片手で転ばせそうだ。

 ここは体当たりでもして勝とう。


「てぇぇいっ!」


 ぼんっ!


「!?」


 なんか、もの凄い圧力の空気弾に弾き飛ばされるワイン。


「……空気弾?」


 ノーが疑問系で魔法の名前を言った。

 なんか適当に打ったらしい。

 取りあえず、弓が使えない、近付けないでは、何も出来ない。

 どうすればいい? ワインは考える。


 ぼこっ!

 ぼこぼこっ!


 地面から何か出てきた。


「っ! ゴーレム!?」


 出てきた三体のゴーレムを辛うじて避けるが、彼女の後ろに、更にもう二体いて、捕まってしまった。


「くっ! ぁっ!」


 非力な弓エルフには、彼女より小柄ではあるが力は強いゴーレムに抗する術はなかった。


「……まさか、悪魔法以外の全ての魔法を習得しているとはね」


 これは、勝てない。


「悪魔法にも興味はある」

「それは覚える必要はないわ。とりあえず今回は私の負けね?」


 ワインは負けを認めた。

 ノーが勝った。


「ねえ、どうしてストライプ相手にそれを使わないの?」

「親友と戦う意味が分からない」


 お前の親友、お前のこと、玩具としか思ってないからな?


「ノーの勝ち!」


 フリルがノーの勝ちを告げる。


「やったにゃ! ご褒美をあげるにゃ!」

「おいおい、勝ったんだからやめてや──」


 どうせまた指入れだと思い、止めようとしたフリルは、振り返って口にキスをされているノーを見た。


「は……あ……」


 とっさに何の反応も出来ないフリル。

 そもそも、二人とも何考えているのか分からないから。


 考えた末、まあ、どうでもいいやってなった。


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