第85話 戦力の分析
「それで、ドットさんは近接最強という事は分かりましたけど、防御系の魔法は使えますか?」
「魔力防御が使えなくはないですけど、弓矢が貫通しない可能性が高い程度のものですし、魔法も高度なものならほとんど意味がありません」
「となると、最前衛タイプか。だが、味方を巻き込まないように単体で動かなきゃならねえな」
何しろ触れると魔法が炸裂するのだ。
敵味方など関係ない、近くにいるものがやられる。
「分かりました。ありがとうございます」
パンがまた深く考え込む。
戦力としてどう役立てるかを考えているのだろう。
ドットもそうだし他の子たちも一つの事に特化していて他の子とはからっきし駄目という子が多い。
欠点が少ないのがフリルとワイン、あと、ギリでストライプとリボン、というところだろうか。
ドットはストライプクラスと考えていいだろう。
もし、ストライプと戦えば、勝ち負けは分からない程度には強い。
機動性はストライプ程はなく、それをカバーする攻撃の強さと、薄膜程度のガードがあるくらいか。
触れられたら勝てる、というのはある種リスクも高い。
だから、使いどころを誤るわけにはいかない。
パンはこの集団の作戦を任されていると言ってもいい。
新魔王との戦いは、場合によっては死人が出てもおかしくはない。
だからこそ、念入りな作戦が必要なのだ。
向こうは、ケットシー三匹と新魔王ライサナのみ。
人数ならこちらの方が多い。
そこを何とかうまく突く方法はないだろうか?
「あーーーーーーーーーっ!」
新しいおもちゃをもらったのに、古いおもちゃがお気に入りのストライプ。
ノーはいつものように叫ばされ、そのそばをうろうろして次は自分にこの|災厄《幸運
》が訪れないかな、と待望しておるとしか思えないドット。
彼女たちにしても強さで言えばトップクラスだ。
ドットとストライプはもとより、ノーも動きが異様に鈍いという大きな欠点はあるものの、実はあの歳で伝説級の魔法使いなのだ。
使い方によっては、もしかすると一番貢献してもらえるかもしれない。
だからこそ、中衛で攻撃側に回すか、後衛で防御や支援に回すかの判断が難しい。
途中で切り替え、という事がこの人に出来るだろうか?
「うーん……」
気が付くと、一人で考え込んでいた。
「パン! ちょっと向うへ逃げててくれ!」
フリルの切迫した声。
顔を上げると、何故かストライプ、ドットの二人と、フリル、ワインのコンビが戦っていた。
え? 何が起きてるの?
パンは考えながら耳で聞き流していた記憶をたどる。
ストライプがフリルに「結局フリルとドット、どっちが強いにゃ?」と聞いたのが始まりだ。
フリルは「そんなもんどうでもいいんだよ、俺は戦力が知りたかっただけだ」と答え、「フリルの方が弱いんだにゃ~?」と煽って、フリルが見事に乗った感じでなんだか喧嘩になった。
で、ストライプとドットがフリルと戦うことになり、「二対一では可哀想だから、私が戦うわ」と、ワインがフリルに付いた。
後のメンバーは、気持ちではフリルに付きたかったが、ストライプに睨まれると後々目を付けられるので、様子を見守るだけだった。
なんでこんなことになるんだろう?
パンは頭を抱えるばかりだった。




