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第78話 パーリィーでのやり取り

「話が進まねえな!」


 いや、シルクとか言い出して二話くらい潰したのお前じゃん?


「まあ、何を言っても始まらないわ、話を進めましょう」

「ああ……」


 ワインも突っ込みたいこともあったが、彼女自身、シルクワインだと主張して、話を延ばしたのでそう言った。

 まだ、ノーの方が建設的な意見を言った方だ。


「私も意見を言った。みんなも言えばいい」


「あーーーーーーーーーっ!」


「どんな意見や情報でもいいんだ! 言って欲しい」


 さっきどうでもいい意見を表明した者は、この短期間に二回叫んでいる。


 まあ、案も出ないし、ワイガヤをやりたいんだろうね。

 ちなみにワイガヤは、ブレストと違って否定あり、しかも上長の意見も否定できる。


「そう言えば、フリルが公開処刑されたパーティーの時のことだけれど」

「他に言い方あるだろ!?」


 フリルさんは、あのパーティーがトラウマになっていた。

 間近で見ていたレザーはそれを思い出して鼻血が出そうになったけど、出すとひどく怒られるので鼻水をすすってる感じで誤魔化した。

 

「あの時に『第一王女の悩みを聞いたことがある』と言っていたご婦人がいたわね。その時は、フリルのお姉さまのことね、程度に考えて深く考えてはいなかったのだけれど」

「何て言ってたんだ?」

「彼女は強くなりすぎたために、伴侶となる夫が見つからないのでは、もし見つかっても、それは強くもおぞましい何かなのでは? というような事だったかしら」


「なるほど……そりゃそうかもな」


 シルクは地上最強のヒト族かも知れない、というか多分そうだ。

 だが、王族の姫は自分よりも強い相手と結婚しなければならない。

 そうなると、人間と結婚できることはないと言える。


 結婚相手となりうるのは、人間など下等で弱い生き物だと思っているような生き物であり、それは多分人の形をしていないのではないか、という事だ。

 確かにもはや人間ではないだろうし、その中でそれなりに美しい生物となると、もはや非常に限られる。


 しかも結婚した上で生殖行為を行わなければならない。

 王族の結婚というのは、子供を産む、次世代の王族を作ることとほぼ同義だ。

 つまり、彼女は強くなり過ぎた代償として、結婚相手を見つけることが困難になってしまったのだ。


 「王族は強さと結婚する」と言っていたものの、それでもやはり、美しい男性と恋に落ちたい、という望みもあるのだろう。


「……なんであいつは、そんなに強い奴との結婚にこだわってんだ?」

「どういうことですか?」

「強い男との結婚ってのは確かに王族の掟だ。だが、あいつはそれをいつでも崩せるんだぜ?」


「そうですよね。彼女より強い人はいないんですから、彼女が決定して、そのルールを壊せば、誰も文句は言えないですよね」


 もし、彼女に反対する者がいれば、彼女はそれを拳をもって制することが出来る。

 王族の力とは、そのための力だ。


「うーん……もしかすると、正統な王族として後継していきたいのではないでしょうか? ルールを破って誰も文句を言わなかったとしても、彼女が亡くなって次の代、その次の代になった時、例えばフリルさんの子孫の人が『お前らの祖先は掟を破った結婚をしている! お前らは王族として認められない!』って言い出す可能性もありますし」

「そんなもん大事かねえ。自分が死んだ後の事なんて知らねえけどな」


 パンは、それは王族としての責務の問題では、と思ったが、フリルが確実に気を悪くするので言わなかった。

 代わりにワインが「それはあなたが王族としての心構えが出来ていないだけではなくて?」と言ったら、やっぱり気を悪くした。


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