第67話 魔王城
「……誰もいねえな?」
辺りを警戒しつつも、フリルがつぶやくように言う。
「でも、確かに誰か偉い人がここにいたような形跡がありますね? 少なくとも半年前くらいには」
パンがフリルの後ろで、フリルの行動を邪魔しない程度に隠れながら言う。
あれから町のレストランを見つけて入った。
町一番のレストランらしいけど、鄙びた町の町一番なので、期待できるはずもなかった。
が、みんな文句を言いつつもがつがつと食べた。
ストライプは食べながら新しい遊びである、ノー舐めをしていたので、ノーの敏感な部分が油塗れになった。
しょうがないので、フリルが拭いてやったが、敏感な部分なので、ノーが声を上げた。
それが気に入らない、といういつもの理不尽で更にノーは叫んだ。
本当、ノーは可哀想な子。
そんなどうでもいいことがあった後、魔王がいたというこの城にやってきた。
この城は、思ったよりも大きく、立派な造りとなっていた。
ここは遠くから見るとそうでもなかったが、内装も豪華で、広く、床の大理石も磨かれていて、奥の大広間には玉座もあった。
魔王かどうかは分からないが、少なくとも王がいた形跡がある。
この状況と、さっき町で集めた情報を合わせると、ここに半年前まで魔王がいた、というのは本当のようだ。
そして、やはりその姿はない。
町の人たちは魔王に怯えていたので、誰もここには来たことがないようだ。
だから、この城の状況は誰にも分からない。
だが、不思議なことに、床にも玉座にも埃一つなかった。
半年、というのは微妙な期間で、空気の綺麗な場所なら埃はつかないこともあるだろう。
ここはそれなのだろうか? それとも──。
「これって、もぬけの殻なのか……?」
「分かりません。ですが、警戒はしましょう」
フリルを先頭に、奥へと進んでいく。
一番背後にはワインが背後を警戒して歩いている。
リボンは気配を消しているが、脇を固めるように歩いている。
フリルのすぐ後ろにはパン、その後ろにノー、ブラック、そして、その後ろにはレザーが歩いている。
レザーはみんなが見ていないのをいいことに、スタイルのいいブラックと、下着類のないノーをガン見していた。
「む、何かの気配にゃ!」
「おい、勝手に行くな!」
ストライプが玉座の脇の出入り口の奥に走っていく。
そして──。
「きゃ!?」
短い悲鳴が聞こえた。
それは、ストライプのものではない。
つまり、ストライプが何者かを見つけたのだ。
そしえ、争っているような音が聞こえる。
「! 行くぞ?」
全員が武器を構えて走る。
いや、パンは武器を構えてないし、ノーは走ってないけど、あるじゃん、そういう雰囲気的な?
「ストライプ、無事か?」
「あーーーーーーーーーっ!」
扉を開けたフリルが見たのは、髪の長い、後、トカゲみたいな尻尾のある女の子が、ストライプによって尻穴に指を突っ込まれている現場だった。




