第20話 首都を目指す
「で、どう行くんだ? その魔王のいる場所ってのはよ?」
既に魔王の住んでるところの地名も忘れたフリル。
誰も知らなくても誰も困らないからいいよ。
いきなり「魔王は前に記述した通り、アレフガルドにいる」って言い出しても誰も気にしないさ。
「まずは首都のエラニューゼを目指しましょうです。街道は地方と首都を結んでますし、ちょうど向かう先にありますから最適だと思うです」
「……首都かよ。他に行き方はねえのか?」
「? これが最適だと思いますけど……他の道は街道が整備されてなくって厳しいことも多いですし、万一途中で新情報を聞いて、魔王の居場所が違うと分かっても首都からならどこにでも行けますし」
パンの意見は合理的で隙も無い。
だから、それに従うのが一番いいし、フリルも含めて一番頭のいいパンに決めてもらうということは大体暗黙の了解だった。
「あれだ、えーっと……ワイン、一旦国に戻りたいとかそういうことはねえか?」
「? 特にないわよ? 私は魔王の調査のために派遣されているのだから、何もないのに戻れないわ」
「そ、そっか……」
フリルが、少し困ったように笑う。
パンは不思議に思うが、向かっている最中にいきなりやっぱりやめよう、と言われても困るが、おそらく自分が聞いても何でもないと言うだろう。
正確には、何でもねえと言うだろう。
「レザーさん、首都ってとっても賑やかで、何でもあって、おいしい食べ物もいくらでもあるんですよ。女の人もみんな綺麗ですよ。どうです、首都に行きたいですよね?」
「行きたいです」
女の人が綺麗なら行きたい、とそれだけを考えていたが、てめえ、周り綺麗な女の子ばかりじゃねえか。
「どうしましょう、皆さん?」
「問題ない」
「どこでもいいにゃ!」
「人が多い街はまだ少し厳しいけど、慣れなくちゃね」
誰も行きたくない、という者はいない。
通り道でもあるし、田舎者は都会への憧れもある。
「それで、フリルさんはどうですか?」
「……しょうがねえな、レザーが行きてえってんなら連れてってやるか」
乗り気という感じでもないが、しぶしぶ承諾した。
「では、首都エラニューゼに向かいましょう!」
向かうことになった。
もちろんパンはそれ以外の道は危険だし遠回りなので避ける理由がないのだが、フリルに明言させるためだけに、みんなに聞いた。
「ワインを人に慣れさせてやるにゃ! うにゃ~!」
「あなたは人じゃないでしょう」
そういえば、ストライプは、にゃーにゃー言う素早いだけの人間じゃなく、ケットシーハーフだった、
猫耳としっぽがチャームポイントだ。
もっとおとなしい性格なら部屋で一日中可愛がりたい。
「人に慣れるなら、ノーパンがいいにゃ! 何をしても拒否しないにゃ!」
知らない人が聞いたらノーパンになることを勧めているように思える。
「……別に何かをしたいわけではないのよ」
「私はいつも拒否している。それに誰も気づかないだけ」
「え……?」
「うにゃ?」
周囲がざわっとする。
当然だ、これまでノーが何度もストライプに襲われているところを見ているが、何か抵抗した様子は一度もない。
完全にされるがままだったから、そういう仲だと思っていた。
「そんなことのないにゃ! これまで拒否されたことないにゃ!」
そう言ってとびかかるストライプ。
「あーーーーーーーーーっ!」
いつも通り、指を突っ込まれ叫ぶノー。
フリルに目隠しされる直前、レザーは見た。
ノーがストライプにタップしようとして出来なかったところを。
あんなん分からんやろ。




