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第19話 友情とかそういうの無縁の話です

「どうやって移動するのか」

「いや、どうやっても何も……」

「馬がないので歩きです」

「それは初耳」


 いかにも馬車に乗って移動するような恰好をしたノーが、歩くという、普通最初に考え付く手段を考えたこともなかったようだ。


「じゃ、どう移動するつもりだったんだよ?」

「ホウキで」

「そりゃ魔法使いだけだ!」


「歩きは大変」

「だな、ま、ガキもいるし、のんびり──!?」


 いきなり、ノーが浮いた。


「私は飛んでいく。最近は魔力も安定しているから安心」


 そう言って、ふわり、と舞い上がる。

 そしてそのまま、自分の魔法を見せつけるようにふわふわと上がっていく。


「ぶっ……っ!」

「レザー!?」


 そして、レザーが鼻血を出して倒れた。


 ノーさんがノーなのでノーさんが見えてしまったのだ。

 これは健全な青少年の育成に問題がある光景だ。


「おい、降りて来い! スカートの中が丸見えだ!」

「私は構わない」

「構え! いいから下りて来い!」


 ノーは徐々に降りてくるが、長めのスカートがふわりと舞うので、レザーの鼻血は吹き出し、フリルはその鼻と目を塞ぐ


「てめえには羞恥心がねえのかよ?」

「羞恥心はある。だけれども、セックスをする相手に裸を見せることが恥ずかしいとは思わない」

「…………」


 フリルは何だか負けた気になった。

 同じ年齢なのに、自分が出来ないことを平然とやってのける。

 そこにシビれたりあこがれたりはしないが、先を行かれている気分になる。


 実際はノーが子供のころから慢性的な魔力不足で、魔力充填にはセックスがいいと聞いたので、そういう頭になっている変な子というだけなのだが。


「そういうのは普段隠しておくからいいんだよ! なんか……あれだ! パン!」

「ふぇ? わ、私です……?」


 フリルはここ最近ストライプが怖くて黙っていたパンに無茶ぶりをした。

 恋愛とか男女の機微の話を十一歳に振るのは無茶を通り越している。


「えーっと……ご褒美は普段から出しているものを出されても何の意味もありません。人は普段できない体験をすることでより一層の喜びを感じますから、普段は見せない方がいざというときに喜ばれますです」


 男女の機微とか一切関係ないけど、十一歳にしては頑張った方ちゃうん?

 それが駄目だとか、ちゃんと言い直せるほど恋愛を知ってる子はいないので、誰も何も言わなかった。


「ふむ。それも一理ある」


 ノーは考えるように腕を組む。


「だが私にはパンツがない。これは困る」


 まあ、十七歳の女の子がノーパンで旅に出ることをあっさり了承すること自体どうかしているが、やっとそこに気付いたのか。


「パンツに関しては、俺はどっちでもいいが、あいつがなあ……」


 フリルはちらりとストライプを見る。


「うにゃ~」

「ちょっと、あまりくっつかないで頂戴」


 ストライプは、ワインの背中にのしかかって甘えていた。

 何故かワインに懐いている。

 世話になってるエルフ族だからなのか、尻穴に突っ込み合った仲だからか、後者希望。


 フリルはストライプが強いことは認めている。

 戦うとなるとかなりエネルギーを消耗する。

 自分と互角なはずのワインが、油断していたとは言え、何度も指を突っ込まれているのだ。

 ワインの手助けがなければ自分も叫んでいたかも知れない。


「あいつが駄目だって言ったら、あいつ以外総出で、何人かの犠牲(指挿入)があって始めて言うことを聞かせるかどうかってところだろう」

「それは大変」

「そうだな?」


 ノーは会ったばかりだが、少しは可哀想だとも思う。

 とは言え、自分があれの犠牲になることを厭わないほどでもない。


「あんなのでも、長年の親友」

「そうか」


 それは諦めなのか、受け入れたのか、ノーはそれ以上は求めなかった。

 ノーとストライプの間にどんな関係があるのかは分からない。

 だけど、長い年月を経て、それでもまだ変わらない関係、というものがないフリルには眩しく見えた。


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