第17話 後片付け専用部隊
「準備が出来たが、どうしてそうなった」
荷物を抱えて奥からノーが戻ってくると、ノーの部屋は荒らされていた。
メイキングされていたベッドは、子供が五人来て暴れていったかのようにぐちゃぐちゃになっていて、戸棚のドアというドアが開いていた。
「すまん、止めさせるよう努力はしたんだが……」
「食べ物がどこにもないにゃ!」
ストライプの言い分は、強盗が居直ってるだけだ。
「どこに隠したにゃ!」
「私は食べ物を自分で用意しない。食堂のご飯とお友達のくれるおやつだけで生きている」
「そんな小食で、生きていけるわけないにゃ!」
食堂の料理の量は分からないが、それと時々の菓子があれば普通の女の子は生きていけると思うが。
「どこに隠したにゃ!」
「今はない」
「じゃ、持ち物チェックだにゃ!」
どうしてそう上から出られるか分からないが、ストライプはノーの持っている鞄を漁り始めた。
恐らく整理して入れたと思われる鞄は、一瞬で荒らされた。
「どうしてパンツが入ってるにゃ!」
「パンツは旅の必需品だと思われる」
荷物を荒らされ、男のレザーの前でパンツを出されてもあまり動じていない様子のノーだが、かむっていたつば付き帽子が落ちたところをみると、動揺はしているらしい。
「必要ないにゃ! これはすべて没収にゃ!」
「これはひどい」
「ノーパンはノーパンじゃなきゃならないにゃ! 今もはいてないにゃ?」
ストライプはレザーはもいるのに、ノーパンの長めのスカートを思いっきりめくる。
レザーは、思いっきり見てしまった。
「よし、ノーパンだにゃ。ゆるしてやるにゃ」
「何の権利があるのか」
「大親友だにゃ」
「ならば仕方がない」
本人が仕方がないって言ってるから、それはもう仕方がない。
ノーは自称大親友の命令で、ノーパンで旅をすることが決まった。
「失礼します。うちの者がまたご迷惑をおかけいたしております」
突然、メイド服のエルフ数名が挨拶とともに入ってきた。
「よろしくお願いする」
「はい」
メイドたちは一礼して、部屋の片づけに入る。
あと、ワインの存在にも気づいて一礼した。
「この子たちは何なのかしら?」
「ナルケナが派遣した、ストライプの暴れを後始末していくメイドたち。さっきまで工房にいた」
女王ナルケナが、ストライプをおとなしくさせることを既に諦めて、尻拭いをしている現状に愕然とするワイン。
「こちらがお詫びのお菓子、こちらがいつものお尻の塗り薬です」
「感謝する。尻は私以外にもこの子が入れられている。あと、あのエルフの人が四回叫んでいる」
「え……? かしこまりました。ではこちらを」
ワインは同族のしもべ階級の者たちに、ストライプに負けて四回も突っ込まれたことを知らされ、その場で縮こまる。
「お菓子にゃ!」
そんな、尻拭いとか尻穴とか、一切気にしないストライプは、メイドの持ってきた菓子を奪おうとする。
「にゃ? 何にゃ、これは!」
「奪われることを想定して、鍵をかけています」
「うにゃぁぁぁぁぁっ!」
箱を開けようとして力を入れるが、開く様子はない。
「開けるにゃ!」
「開けません。では」
メイドたちは一礼すると、出て行った。
まあ、これで、旅支度は出来た。




