第10話 魔導師は性交がお好き
「で、そいつはどこにいるんだ?」
「魔法都市ヨーランにいます」
「ヨーラン? あそこって魔法都市になったのか?」
「? 違うのですか? 侯立タニサーリャ魔法学園とその卒業生の工房が沢山ある魔法都市だと聞いているですが」
「俺の知ってるヨーランは、ただの地方都市だったと思んだけどよ」
街道を歩きながら、パンとフリルが話をする。
「ヨーランが魔法都市に発展したのはここ数年ね。侯立タニサーリャ魔法学園の生徒が強力な、魔法も効かない不死の死霊使いを倒したことで一躍有名になり、魔法使いが集まってきたと聞いているわ」
「そうなんですか?」
全然話についていけないけど、相づちくらいは参加しようと必死なレザー。
存在感なさ過ぎ。
「ちなみにそのパーティーのリーダ的存在だったのが、我が女王ナルケナ様よ。この功績で、彼女と彼女の開放主義に懐疑的だったエルフ族の一部の貴族達も彼女を女王にすることに文句は言わなくなったわ」
「へー」
よく分からないし、びっくりするほど興味もないのでドヤ顔のワインの表情に微笑ましく思うだけだ。
彼女の年齢は分からないが、長寿のエルフは、大抵若く見える。
だから、言動だけならおばさんぽく見えるかも知れないが、見た目は綺麗というか、こういうドヤ顔をすると可愛い。
「あ、それです。私の言ってるマリュン師は、その死霊使いを倒したパーティーの一人です」
「でもあれは数年前のことでしょう。あの学園は主に人間の十代が通うと聞いているのだけれど、だったらまだ二十歳くらいの方なのではないのかしら?」
「今、十七歳だと聞きました」
「ちょっと待って、それはおかしいわ? それなら彼女は当時十二、三だったはずよ? まだ、学園に入れないのではないかしら?」
ワインが恐る恐る聞く。
彼女も人間社会に熟知しているわけではないため、自分の絶対正を主張できないのだ。
「確か、十一歳で入学して、当時は十二歳だったと思います。彼女は天才魔導師だったためそれも遅かったと言われたようです」
「てめえみたいなものか?」
「近いかも知れませんです。ただ、魔力は十四十五で飛躍的に成長するため、知識だけではどうにもならない事もありますです」
つまり、ただ頭がいいだけの天才ではなく、生まれながらの魔力を持った、元々から素質があった人なのだろう。
レザーはよく分からないので、可愛い人だといいな、と思った。
「私に会いたいという人がいると聞いた。男性がいると聞いて忙しい時間を押して来た」
ヨーランに到着し、マリュン師の工房に行こうと思ったら、彼女は魔法学園に教員兼研究者という形で働いているため、学園に行く必要があった。
それで、パンの時と同じように入っていって呼び出してもらったのだ。
マリュン師は、師と言うには若い、年齢的にはまだ生徒側とも言えるような幼さも残る少女だった。
ただ、その美しさはかなり目を引き、スタイルも胸が出ている割にウエストがかなり細いという、奇跡的な体型だった。
まるで、誰かの理想を全て盛り込んだ人形のようだ。
「あなたは私とセックスする?」
「はいっ!」
「ちょっと待て! なんだよこの流れ!?」
マリュン師がいきなりレザーにセックスするか聞き、レザーが即肯定したところを、フリルに止められた。
だが、レザーの気持ちも理解できる。
こんな魅力的な女の子とセックスしたくない男がいるだろうか?
「私はセックスで魔力を高めたい魔法使い」
「確かに魔法使いは異性との性交によって魔力を増加させる事もあるようね。だけど、レザーくんはこう見えて勇者なのよ。だから、そのような者は他を当たって頂戴」
ワインもマリュンを牽制する。
「私は構わない」
「いや、構えよ!」
フリルも突っ込む。
「あのな、こいつは俺たちと魔王を倒す旅をしてるんだ。分かるだろ? そう言うことなんだよ」
フリルが遠まわしに、レザーの所有権を主張する。
もちろん彼女の物でもないし、誰の物でもない。
みんなのレザーくんだ、アイドルかよ。
「なるほど、理解した」
「そうか、ならいいけどよ……」
フリルはこう見えてお処女さんで、今日明日じゃないがいつかレザーとそういうことをやりたいと思っている。
だから、いきなりそれを表に出せる美少女の存在は驚異となる。
フリルは恋愛、特に性欲的な部分には奥手なのだ、可愛い。
いや、可愛いとか言うけど、この子、最初レザーを全裸にして眺めた挙げ句、自分ちにさらって一緒に住もうとして、その後彼の愛称をレザーにしたんだからな?
「旅立ちの前に、大魔導師に近い私とめくるめくセックスを行う感動ストーリー」
「てめえ何を理解した!?」
全然理解されていなかった。
マリュン師を人形のようだと評したが、実際表情がほぼないためまんま人形のように思える。
つまりさっきから、表情を変えない美少女が、ずっとセックスセックス言っているのだ。
「私の男性遍歴を聞いて興味を持たない男性はいない」
「……一応言って見ろよ」
「まずは触手」
「陵辱されてんじゃねえか!?」
なんかいまいち話が通じなかった。




