3 拾ったパンツは宝物
本日二回目の更新です
「そんなに珍しいかしら?」
「私達の国だと当たり前だよねー」
「いや、うん、俺は魔法すら無い世界から来たから……」
「そう言われるとそうね」
「確かに!」
ミレーとリイラが納得するように頷いた。
俺のいた世界じゃ魔法なんてなかった。
まあ、アニメや漫画、ゲームの世界ではあったけど。それでも、パンツから魔法を出すなんて俺の記憶には無い。
しかもこのパンドラパーツ、作為的な何かを感じる。
何故かと言えば、それは使用する為の条件にある。
「使用出来るのは女性だけ。その中でも、素質のある者だけ、ねぇ」
ミレーが教えてくれたことを、声に出してみる。
うん、やっぱり引っかかる。
「長い研究の結果、魔力の波長が関係するんじゃないかと言われているわ。だから個人差はあるけれど、扱える期間は大体十歳から三十歳くらいまで間っていうのが一般的よ。あと、顔の造形やボディバランスが重要だと言ってる研究者も居るわね」
「後半って魔術的な素質なのか……?」
「知らないわよ。そんな目で見られても、私が決めた訳じゃないんだからね」
「それは分かってるけど」
ミレーから聞いた情報を纏めるとこうだ。
見た目の良い人以外は装備出来ない。
布なんかでも、遮っていると使用出来ない。
だからこの国の魔法騎士団はほぼ若い女性で、下半身はいつでも脱げるスカートが制服なんだとか。
これ、可愛い子のパンツを見る為のシステムにしか思えない。
俺が思春期真っ盛りのエロい男子高校生だからか?
魔法の神と呼ばれる存在が侵略に嘆くこの国に、この技術を授けたらしい。
本当にござるかぁ? と、問い詰めてみたくなる。
あまりにも仕様が変態的過ぎるだろこれ。
「あ、そういえば」
「何?」
パンツの話をしていて思い出した。
木に引っ掛かっていたパンツ。拾ってポケットに入れたままだった。
二人は普通にパンツを履いてたけど、予備かもしれないからな。
確認しておかないと。
「これ、さっき森の中で拾ったんだけど見覚えある?」
ポケットから取り出したパンツを、ピラッと広げて見せつける。
後ろ側にまで綺麗な刺繍が入ってて、見事な逸品だ。
「私達は今履いてる物しか持って――ええっ!?」
「え?」
「ミレー、どうしたの?」
ミレーは突然大声をあげた。
やばい、やっぱりパンツを女子に見せるのはやばかったか?
いや、最初は普通だったし、リイラも驚いている。
パンツを広げて見せてる絵面が変態度数キャリーオーバーだとしても、そこじゃない気がする。
「ちょっと、よく見せてもらえる!?」
「あ、はい」
あまりの剣幕に、思わず敬語になってしまった。
パンツを差し出すと、ひったくる様に奪われた。
そしてミレーは、手に持ったパンツをじっくりと眺め始めた。
その眼差しは真剣そのもの。燃えそうだし穴も空きそうだ。
女子にパンティーを見せつける男子高校生もアウトだけど、パンツをじっくり見つめる女子も中々の破壊力だ。
一部のマニアには受けそうだ。
俺もちょっと興奮してきた。鎮まれ俺のスカイツリー!
すみません嘘つきました俺のはせいぜい太めのゴボウです。
「……これ、どこで見つけたの?」
「えっ、あー、あっちの方で拾ったんだ。枝に引っかかってた」
俺が飛び出してきた方向を指差す。
それは何か爆発音みたいな音が響いてくる方向で、今も丁度ドドンみたいな音が微かに聞こえた。
「拾った!? こんな貴重な物がその辺りの枝に引っかかってるなんて、そんな――、もしかして――、でもそれって――」
「もー、ミレーってばすぐこうなっちゃうんだから」
俺の言葉に衝撃を受けたようだ。
一しきり驚いた後はまたすぐに自分の世界に戻ってしまった。
何かブツブツ呟いてて、こういう姿も可愛いから美少女は困る。
リイラも呆れたようだけど、笑っている。
二人は仲良しなんだろう。
そんな雰囲気がある。美少女同士で仲良し。
――ヨシ!!
「……返すわ、ありがとう」
「もういいのか?」
「ええ、満足したわ。まさかこんなところでこんな貴重な物を見られるなんて、ツイてたわ。流石は邪竜の住まう大森林ね」
言葉通り、ミレーはとても満足そうだ。
楽しそうな笑顔も可愛い。
なんだこの子、クールメガネキャラだと思ったら属性多過ぎじゃない?
いや、そんなこと考えてる場合じゃない。
いくつか気になるワードが出て来たぞ。
「えーっと、これってもしかして?」
「ええ、≪希望魔具≫よ。それもとびきり貴重な、ね」
「マジか」
ミレーが言うには、この≪希望魔具≫は性能によってざっくりランク付けされるそうだ。
一般的にはレアな順に、≪神話級≫、≪伝説級≫、≪伝承級≫、≪戦術級≫、≪導師級≫、≪術師級≫。
その更に上に、魔法の神が最初に授けたとされる≪起源級≫。一番下に訓練用としての≪二才級≫というランクがあるらしい。
二才って聞き慣れない言葉だけど、青二才の二才かな。
「それは少なくとも戦術級、もしかしたら伝承級以上かもしれないわ。今の私じゃ既に雲の上の存在だから、高すぎて判別出来ないくらい凄いのは確かよ」
「はー、上から三番目か。それは確かに凄いな」
≪起源級≫は魔法の神からの贈り物で、明らかな特別枠だ。
ガチの伝説の存在で、実物はどこにあるか謎らしいしな。性能のランクとは外れた位置にあると考えていいだろう。
その中で上から三番目だとしたら十分すごい。
ミレー情報だと、騎士団でも隊長クラスでも装備している人は少ないらしいからな。
そんなものを拾うなんて、運が良いで済ませていいんだろうか。
まぁ、俺じゃ装備出来ないから使い道は限られるんだけど。
「とりあえず大事にとっておくか」
「お金に困ったら私のところに売りに来てね。なるべく高く買い取るわ」
「お、おう。自分で使えたら、絶対売らないんだけどな」
手に持ったパンツを広げて眺めてみる。
魔法が出るとしても、これを履くのはきつい。色々な意味できついし、全ての意味でアウトだ。
「男の子には使えないもんね」
「あら、絶対って訳じゃないみたいよ」
「え、そうなの!?」
「マジで!?」
「ちょっ、二人とも、落ち着きなさい!」
思わず前のめりになったのを、同じ動きをしていたリイラごと押し返された。
それも仕方がない。装備出来るのは女の子だけじゃなかったのか?




