表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/138

77. ニーモとジェームズ

 皆さん、お疲れ様です。マリーンです。警戒していたにもかかわらずあっさりクラークを倒すことができました。私はその後クラークを犯罪ギルドの主犯として衛兵に引き渡しました。


 その後の取り調べでクラークは罪を認め、犯罪ギルドの本部だと明らかになったパーシャル商会は取り潰しとなりました。まさか街で有数の豪商が関わっていたとは驚きです。


 保護したナッツは特に怪我なども無く、その日のうちに孤児院に引き取られました。わざわざ司教のクルツさんが迎えに来てお礼まで言われてしまいました。そういうのは私に直接言うのではなくてギルマスあたりに言ってほしいものです。なぜなら私の評価が上がるから。


 ニーモさんは全身打撲という有様でしたが命に別状はなく、治癒魔法を受けてすぐに帰ってしまいました。なぜ取引現場に居たのか聞きそびれてしまいましたね。



 そして次の日、私はナッツと共にスワン男爵の元を訪れていました。スワン男爵からナッツを取り戻すために行った交渉、そこで出された条件はナッツの【再生】でスワン男爵の娘を治癒する事でした。治癒さえできればナッツが手元に居なくてもよかったのでしょう。私はそれを了承しました。それ以上のことはしません。相手は貴族なので、人身売買程度で罪を問えるほど私は偉くありません。


 スワン男爵に連れられて娘さんが部屋に入ってきました。右腕が肩から先が失われています。


「ナッツさん、お願いします」


 私がそう促すと、ナッツさんは早速娘さんの傷口に触れスキルを発動させました。傷口が光を発し、徐々に腕が生えてきます。途中でナッツさんが魔力切れを起こしたため、魔力ポーションを飲みながら休み休みの治癒になりました。そして6回目の治癒でとうとう、娘さんの右腕は完全に再生したのでした。


 娘さん、嬉しさのあまり泣き出してしまいました。スワン男爵も我が身のように泣いていました。


 その直後に、世界樹の迷宮から帰ってきたルークさんがエリ草を届けに来て微妙な空気になったというのは蛇足です。


 とにもかくにも、こうして犯罪ギルドに関わる全ての事件が解決したのでした。







「ただいま帰還しました」


 ニーモは冒険者ギルドに来るとすぐにギルマスの執務室を訪れた。ニーモは仕事が終わった後も独断でクラークを調べ、そして負けた。さらにマリーンに姿を見られるという失態まで犯した。暗殺者としては失格である。どんな罰も受ける覚悟であった。


「ああ、報告に来たのか。まあ座りなさい」


 しかしギルマスはニーモの覚悟など不要とばかりに座らせるとお茶と菓子をだした。その様子にニーモは肩透かしを食らう。


「あの、罰とかは……」

「欲しいのか?」

「いえ、あまり欲しくないです……」

「私が必要ないと判断したなら必要ない。では報告を聞こうか」


 ギルマスにそう言われれば、それ以上言えることはない。ニーモは事の顛末を報告した。


「うむ、マリーンからの報告と齟齬は無いな」


 ギルマスはマリーンからの報告書を見ながらよしよしとそう言った。


「お前も知っている通り、パーシャル商会は取り潰しとなった。じきに別の組織が用意されるだろう。場合によってはまたお前に働いてもらうことになるかもしれん」

「構いません。仕事ですから」

「で、マリーンはどうだった? あれはあれで随分と優秀だろう」


 ギルマスはにやりと笑みを浮かべた。随分と機嫌がよさそうだ。


「人攫いの情報のみから犯罪ギルドの黒幕にたどり着いたのですから、そうですね」

「どうだ? お前とは歳も近いし、仲良くできそうじゃないか?」

「……監視対象と仲良くするわけにはいきませんよ」

「あれにもう監視など必要ないだろう。ヨハンに来たばかりの頃は荒れていたが、もう落ち着いている。立派な大人だ。王国はあれを気にしすぎだ」


 ギルマスはお茶を飲みのどを潤した。


「お前には気を許せる友人が必要だと思っている」

「それがマリーンさんだと?」

「あれはうちで政治が分かる数少ない職員だ。必要悪を飲み込む下地もあるだろう。お前のことも忌避しはすまい」

「ジェームズ、拾ってもらった恩は感じています。ですが、さすがにお節介が過ぎますよ」


 ニーモはギルマスにそう言って執務室を後にした。残されたギルマスはやれやれと首を振った。


「小さいプライドにしがみつくか。まだまだ子供だな」


 ギルマスはそう言って残りのお茶を飲みほしたのだった。

「マリーン」をお読みいただきありがとうございます。

これで犯罪ギルド編は終わりです。気持ち的にはこれで2部完といったところです。


*活動報告にて犯罪ギルド編までの振り返りを書きました。執筆裏話とか気になる方はどうぞ。


次回予告:

 昏睡した甥のサッシュを目覚めさせてほしい。そんな依頼を受けたマリーンはサッシュの夢に潜入して昏睡の原因を探ることになる。はたして夢の世界でマリーンを待つものは!?


告知:

 短編「ホムンクルスは魔導羊の夢を見るか」を投稿しました。ジャンルはファンタジーSFです。ブラック多め。

もし興味があればそちらもどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ