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ダンジョン暮らしの転生少女~ゆるっとダンジョンで暮らしながらガチ攻略します~  作者: 十一屋 翠
第7章 進化とクラスチェンジ編

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第132話 命の価値と相応しい立ち位置(やりたい事と向いてることって違うよね)

「うわぁぁぁぁ!!」


私達が戻ってくると、さっきの冒険者達が今まさに魔物達によって止めを刺されようとしていた。


「『火魔法』!!」


 即座に火魔法で無数の火弾を打ち出す。


「ギャウ!?」


 冒険者達に止めを刺そうとしていた魔物に炎の球が直撃する。


「はぁ!」


 遠距離攻撃による奇襲が途切れるタイミングでリドターンさんとフレイさんが魔物達を切り裂いてゆく。


「ギギィイ!」


「「「ギャア! ギャア!!」」」


「あれ? もう逃げちゃった」


 魔物達は増援が現れ不利になったと知ると、あっさりと逃げていった。

 倒された仲間の敵討ちをしようともせず、非常にドライな判断だ。


―『初級救助』のスキルを取得しました―


 あ、なんかスキルゲットした。

 ともあれ今は襲われていた冒険者の方が先だ。


「大丈夫ですか」


 魔物が戻ってくる気配がない事を確認してから、襲われていた冒険者達に声をかける。


「あ、ああ。助かった。ありがとう」


 冒険者達は負傷しているものの、死者や重傷者の姿はなかった。

 よかった。こんな場所じゃ救急車も呼べないからね。


「ちっ、誰が助けてくれって言ったよ」


 と、そんな中、さっきオタケさんにやり込められていた冒険者が不満そうに毒づく。


「ちょっと! 助けて貰ったのになんて事言うのよ!」


 慌てて仲間の冒険者が止めるけれど、彼の口は止まらない。


「はっ、どうせ謝礼目当てに決まってるだろ」


 なんともひねくれた物言いだなぁ。

さっき会った時もそうだったけどなんでこの人はこうも喧嘩を売る様な物言いをするんだろう。

 仲間の前で恥をかかされて意地になってるとか?


「そんな事より早く治療したらどうだい?」


 けれどオタケさんはそんな言葉をスルーして他の冒険者さん達に声をかける。


「それが、もうポーションも回復スキルも無くて」


 どうやら回復手段が尽きてしまったらしい。ここからダンジョンの入り口に戻るにしても、怪我をしたままじゃかなり大変だよね。

 うーん、ポーションを分けてあげた方がいいのかな?


「ポーション、売ってやろうか?」


 同じことを思ったのか、オタケさんがポーションを取りだす。


「良いんですか!?」


「そうだね、相場を考えると初級ポーションで銀貨10枚ってところかね」


 前言撤回。めっちゃ暴利でした。


「銀貨10枚!? 流石に高すぎる!」


 冒険者達も同じことを思ったのか流石に文句が出る。


「ほれみろ!コイツ等は金目当てで俺達を助けたんだよ!汚ぇババグボァッ!」


「ベッツ!?」


 ベッツと呼ばれた冒険者がオタケさんの一撃を受けて山の壁側に吹っ飛ぶ。

うん、反対側にぶっ飛ばされなくて良かったね。


「アンタは黙ってな。命がかかってる時に文句しか言わないような奴がリーダー面するんじゃないよ」


「……ピクピク」


 いや、黙るどころか気絶してますよ。めっちゃ顔がへこんでるし……


「で、どうすんだい? アタシらは別に売らずに探索に戻っても良いんだよ」


「えっ!? あ、はい! あ、いや、ええと、その初級ポーション1本で銀貨10枚は高すぎじゃないですか?」


 我に返った冒険者の一人が慌てつつもやはり銀貨10枚は高いと反論する。


「なに甘えた事言ってんだい。ダンジョンのこんな場所で誰がポーションを売ってくれるんだい。アタシ等だってここに来るまでの労力がかかってるんだよ。しかも赤の他人を治療する事でこちらの回復手段も減るんだ。それでもアンタ等は町で手に入る相場で売れって言うのかい? この価格は危険を差っ引いた命の価格だよ!」


「「「「っ!?」」」」


 オタケさんの言葉にぐうの音も出ない冒険者達。

 そうだよね。ここに来る前に私達も結構戦ったし、時間もかけた。

 町中みたいに魔物に襲われずにコンビニまで行って買い物とはいかない。


「……分かりました。お支払いします」


 彼等もそれを痛感したようで、銀貨10枚でポーションを買う事を受け入れる。


「ただ金が足りないのでその分はここで手に入れた素材で支払いたいんですがいいですか?」


「ああ、構わないよ」


 そうだよね。これまでも会話からもお金が無いから無理して利益を出そうとしてたんだもん。そりゃ全額現金で支払う事なんて出来ないや。

 冒険者達はここまでの探索で手に入れた素材やお宝を取りだしてそれをストットさんが鑑定する。

 というか何で僧侶が商品の鑑定をしてるんだろう?

もしかしてお金が好き過ぎて金目の物を調べ捲ったことで鑑定スキルを取得したとか?


「全部で銀貨40枚分といったところですね」


「ええ! それじゃ一人分足りないわ!」


 冒険者達はさっき吹っ飛ばされたまま気絶してる人を合わせて5人。このままだと全員の治療は出来ない。


「仕方ない。俺はまだ大丈夫だから皆で飲んでくれ」


「何言ってるのよ。前衛の貴方が飲まなくてどうするのよ。一番怪我が軽い奴が我慢するべきよ」


 と言っても見た感じみんな同じくらいの怪我なんだよね。全員が今すぐ死ぬほどじゃないけどこのまま出口まで向かうにはキツイくらいには重い怪我だ。


「はいはい、誰が使うかはアンタ等で決めな。ほら、人数分のポーションだよ」


 そう言ってオタケさんは冒険者達の会話をぶった斬ると女の人の腕にポーションをぐいと押し込む。って、あれ?


「それじゃあ行くよアンタ達」


「えっとアレ……」


 しかしオタケさんは私の口に指を当てて黙らせるのだった。

 まぁ、悪い事……じゃないからいいのかな?


 ◆新米冒険者達◆


 魔物に襲われて危機に陥っていた俺達を颯爽と助けてくれた老冒険者達は、来た時と同じように風のように去って行った。

 俺達の手にポーションを残して。


「……」


 俺は去り際の老冒険者の言葉を思い出す。


「ああそうそう。決めるにはちっとばかし遅かったが、金よりも仲間の命を優先する決断をしたのは上出来だよ。そこで転がってる小僧よりもアンタの方がリーダーに向いてるんじゃないかい?」


「俺が……リーダーに?」


 俺達のパーティのリーダーはそこで気絶してるベッツだ。

 だが満場一致でリーダーに選ばれた訳じゃなく、俺がやるぜとベッツが言い出して皆もまぁ別にいいかとなぁなぁでリーダーの座に就いたわけだが……


「よく考えるとリーダーらしいことしてないな」


 何かをやろうぜとか、この依頼を受けようぜ、とは言うものの情報収集やアイテムの準備は他人任せ。本人は役割分担だと言っていたが、何かあったら責任を誰かに押し付けてくるしじゃあお前は何をしてるんだって思った事は一度や二度じゃない。

 そのくせ金には汚いしな。


 とはいえだったらお前がやれと言われたら、自分がリーダーの重責を負う覚悟も無かった。

 今回の件もベッツが起きたらポーションを銀貨10枚で買った事をネチネチ言われて自分の分の支払いを拒否しようとするだろう。

 うう、そう考えると今から気が重くなってきたな。

 しかもポーションは一本だけ足りない。

 ベッツは絶対自分の分を要求するだろう。


「あれ?ちょっと待って」


 と、ポーションを受け取ったアンカが困惑の声を上げる。


「どうした?」


もしかしてポーションに問題でもあったのか!?


「これ、ポーションの数多くない?」


「え?」


「ホントだ。五本ある」


 言われてみれば確かにアンカの手にはポーションが五本あった。俺達は四本分の値段しか支払ってないのに。


「間違えた……とは思えないが」


 正直年を取っているとは思えないくらい鋭い目つきの老人だった。そんな彼女が初歩的なミスを犯すとも思えない。という事は……。


「もしかして、最初から人数分くれるつもりだったとか?」


 仲間達も同じ考えに至ったのか、老冒険者達が去った方角に視線を向ける。

 その事にあの老冒険者の仲間達は気付いていたのだろうか?

 いや、あの老冒険者の事だ。仲間達が気付いていなかったとしても自分が勝手にやった事と悪びれずに責任を取るつもりなのだろう。


「それがリーダーの責任の取り方って事か」


 たったそれだけの事で、俺はあの人が冒険者としての生き方を示唆してくれた気がした。

 自由と無責任は違うんだ、と。


「もしかしたらポーション異常に大きな恩が出来たのかもな……よし!」


 俺達は気を失っているベッツを蹴り起こすと、ダンジョンを脱出する為に山頂を目指した。

 戻ったら改めて今後のパーティの方針を考えないとな。


「その為にもまずは新しいリーダーの選出からだ」

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