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魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー  作者: ウィル・テネブリス
Journey's End(たびのおわり)
401/580

38 クラングル

「――そうか。お前、あのゲーム通りの世界でずっと生きてたんだな」


 長い街道を四輪駆動ががらごろと走っていた。

 実戦向けの車体が走る感覚はすっかり慣れたはずだが、広大な緑の景色もあって今だけは新しく感じてる。


「いいや、もう現実だ。ゲームなんかじゃない」


 どこかへ向かう装甲車の中、俺は助手席で今までを話してた。

 シェルターの脱出劇から見送ってくれたボスたちのことまで、話せる限りを。

 ウェイストランドでの大体の生き様を話せば昼も深く過ぎた頃だ。人気のある道は広くなって、だいぶ風景も変わってきた。


「そうだったな。悪い、もうゲームじゃないんだよな」


 あいつは知らない世界を走らせながらずっと聞き入ってくれてた。

 左を見ればあのやかましい口もぴたっと閉じて、サングラス越しに遠くを見てる。

 後悔したような顔だってすぐ分かった。俺がひどい目にあったと思ってるんだろう。


「タカアキ」

「ん? ああ、なんだ?」

「お前がひどく後悔してたって話ならもう知ってるぞ」

「おいおい、まさかリム様がなんか話しちゃいましたって奴?」

「まあその通りなんだよな。あの人、お前のこと心配してたぞ」


 せっかくの再会だってのに幼馴染はシリアスな様子だ。

 でも俺たちには共通点がある。リム様に世話になったってところだ。

 バックパックの中を漁った。「だいじなもの」リストあたりに薄い感触が伝わる。


「俺の人生ってさ、皮肉なもんだよな」


 もう一度、俺たちの行く先を見た。

 だいぶ走った車は分岐路までこぎつけたらしい。

 そこで道の広さなりの大きな目印がこう説明していた。


【魔女の都市クラングル】


 みんなの言う通りだった。分かりやすい道しるべに繋がったわけだ。


「……そうだな、お前の人生を長く見てきて「皮肉に愛されてるな」って思ったことは多々あったもんだぜ」

「だろ? 俺のクソ親の件だってそうだったよな」

「ああ、お前のご両親は幼馴染視点からも五文字で表現できるお方だ。「くそったれ」ってな」

「そう、ほんとうにクソ野郎二人分だ。おかげで未来の俺は毒親にならずに済む種なしブドウENDだ、しかもそこからこの世界への転生を果たしたってさ」

「ニャルの奴から聞いたぜ、ここが数千年後の地球だってな」

「俺が創造主ってところもだよな?」

「知った時は驚き半分喜び半分さ。ワオ、出世しやがったなアイツ!ってか」

「こっちは出世するタイミングを間違えてるんじゃないかってずっと思ってたぞ。もっと早く定職につけばこんな壮大な事件起きなかったんじゃないか?」

「それかもっと早く冷凍保存されるべきだったな。けっきょく遠い未来で冷凍シューヤになっちまってるのは笑ったわ俺」

「何笑ってんだ冷凍食品みたいにいいやがって」


 その結果、タカアキは俺の隣で相変わらず馬鹿なこと言ってやがる。

 相変わらずの幼馴染の頭をぽこっと優しくたたいた。やっと笑った。


『……くすっ』


 やったぞ。肩の短剣もだ。

 あんな雰囲気の話から一転して、俺たちは「やったな」と顔を見合わせた。


「おい、お前の相棒も笑ってるぞ。そっちは特別に許しちゃう?」

『ご、ごめんなさい……。こんな時に笑っちゃって……』

「お前のせいで謝ってるぞ、どうすんだタカアキ」

「俺のせいかよ。ごめんよミコちゃん、俺たちいつもこうなんだわ」

「そうだな、一応どこがおもしろかったのか答えてもらおうか?」


 元の世界とはずっと違う環境だけれども、タカアキとのいつものがあった。

 二人でふざけてミコに視線を送れば、あいつは困ったように「えっと」と悩んで。


『……だって、二人とも仲が良くて……』


 またくすっと笑った。だから俺たちは満足した。


「良かったなタカアキ、俺の相棒視点からでも仲良しだってさ俺たち」

「やったぜ。ヒロイン視点からでも面白かったか?」

「おい、俺も面白いやつみたいに言うなよ」

「違ったのか?」

「面白いやつはお前だけで十分だ」

「そりゃどうも」


 そういうやつなのだ、タカアキは。

 安心したよ。こいつは昔から変わらないいつもの幼馴染だ。

 あのくそったれの毒親二人から抜け出した後から、あいつはずっとこんな態度で接してくれた。


「……だからなタカアキ、もう後悔する必要はないんだ」


 またまっすぐとした道に入った。遠い地平線に白い形が見えてきた気がする。

 そんな合間だった。荷物から持ち出した一枚をくれてやった。


「正直言うぞ? お前のせいでひどい目にあったのは事実だ。内臓やられるわ頭撃たれるわまた内臓やられるわひでえ真実を告げられるわでもうボコボコでボロボロだ」

「本当にひでえ目にあっちまったな」

「しかも種なしって言われて、おまけに貞操まで奪われた」

「貞操まで失ったのかお前。前と後ろどっちだ?」

「その質問ができるってことは未来の俺がエロ配信したことも知ってるか」

「ああ、未来のモトムラ・タカアキもそんな幼馴染を受け入れたってこともな」

「まったくひどいよな。でも――」


 長い長い付き合いになるし、これからもそうであろう幼馴染にそれを見せた。

 ダムで撮った集合写真だ。黒いジャンプスーツ姿の周りに仲間がいっぱいいた。


「皮肉なことにそれが今の俺を作ってくれた。遠い遠い未来でお互いくたばるっていうオチはこれで少なくともなくなっただろ?」


 写真には少し得意げなストレンジャーがいた。

 肩にはずっと共にした相棒がいて、そばには黒い犬耳パーカーのわん娘もいて、そんなご身分がメイドと一緒にオーガの巨体を挟んでる。

 とんがり帽子のロリはドヤ顔だし、よく見るとヌイスだって少し楽しげだ。


「それにさ、大事なことをいっぱい知ったんだ。俺ってこうなる前は誰かに引っ張られるだけで、自分で歩こうともしなかった」


 でも良かった、タカアキは馬鹿騒がしい『ストレンジャーズ』に安心してる。


「やっと分かったよ。お前がずっと面倒を見てくれて、ただ漠然と生きてるだけだった。だから今からお前に言うのは世話になったことと、それからいろいろな縁を結ばせてくれたことに対する「ありがとう」だ、タカアキ」


 写真を取り下げた。俺なりの感謝を伝えながら。

 あいつはどんな気持ちなんだろう。はあ、と腹からため息を出して。


「俺のこと、恨んじゃいないんだよな?」


 少し油断すれば聞き逃してしまいそうな加減でそっと口にしていた。

 んなことあるか、と笑って返してやると。


「ご主人はそんなことしない。信じて」


 意外にもニクが取り繕ってくれた。

 俺の幼馴染もちょっとびっくりだ。おかげで気の抜けたように笑んで。


「……立派になったなあ、お前」


 なぜだか湿った声でそう言った。サングラス越しの視線は遠くを見てる。

 でもこいつの言うことは間違ってるな、俺が立派だって?


「いいや、()()()()さ。この旅は俺一人じゃ成し遂げられなかったし、知らないことだっていっぱいある。どうだ、まだまだ未熟だろ?」


 残念だけどストレンジャーは不完全だ。

 そして周りには自分より優れた仲間がいっぱいいた。

 そんな奴らと持ちつ持たれつ、そういう関係のもと楽しくやってきたのだ。


「じゃあ、俺のお世話もこれから必要か?」

「まあそうだろうな。パンケーキ一つも満足焼けないような奴だぞ」

「パンケーキてお前。なんかあったん?」

「レシピを信じられなかった結果馬鹿デカいクッキーになった。写真あるぞ、後で見るか?」

「パンケーキがクッキーになるとか聞いたことないぞ笑うわそんなん」

『みんなクッキーって言ってたよね、リム様もそう言っちゃうぐらいの……』

「でも米研いで炊くぐらいならできるようになったからな――ああそうだ、種とか米とかリム様に持たせたのはお前だろ?」

「おう、まさに俺だ。どうだった?」

「おかげで俺の好物にマカロニアンドチーズと白おにぎりって項目が追加された。んで、向こうの世界はフランメリアの土壌が転移したとかですげえ豊作」

「ははっ、マジかよ! 世紀末台無しにしたか?」

「おかげで屈強な農家の先輩ができたぞ。そいつらに訓練してもらって爆薬の使い方とか教わってきた」

「今度はテロリストにでもなるつもりか? よし、気に食わないやついたら爆破してくれよな」

「悪いな、悪用厳禁って言われてる」


 これからもきっとそうなんだろう。

 タカアキとの縁もまだまだ続きそうだ。

 でも何よりうれしいのは、さっきまで寂しそうにしていた幼馴染がこうして良く喋ってくれることだ。


『ふふっ……良かった、いちクンとタカアキさんがまた会えて。なんだか私も嬉しいや』


 そこに物言う短剣の気持ちも混ざれば、もう至れり尽くせりだ。


「聞いたかタカアキ、俺たちがこうしてまた会えて喜んでくれる相棒もできたんだ。確かに過酷な世界だったけど、何もそこにあったのは地獄だけじゃないってことさ」


 だからまた笑った。

 皮肉という言葉があるように、世紀末世界の裏にはいい出会いが山ほどあった。

 何もない俺を拾ってくれたプレッパーズ。意気投合したシド・レンジャーズ。長い縁を結んだガーデン。強く学ばせてもらったブラックガンズ。気の合うスティングの自警団。フランメリアの戦士たち……。

 数えきれないほどの人付き合いがあったからこそ、ストレンジャーはここにいる。


『……うん。わたしもね、ウェイストランドがあったからこそだよ。もう何があっても、みんなの前に強い顔で帰っていけるもん』


 ミコだって出会った頃よりもずっと強くなった。

 困ったときに助けてもらうぐらいのいい相棒だ。


「ご主人はぼくも助けてくれた。だからずっとついてくつもり」


 わん娘も後ろで少し得意げだ。撫でてやった。

 するとタカアキはハンドル片手に腕を伸ばしてきた――俺も撫でられた。


「……こんなこと、いっていいか分からねえけど」

「言っちまえよ」

「お前が成長してくれて嬉しいよ。悪いな、大変な目にあったっていうのにこんなこと言っちまって」


 ところが言われたのは「よく成長しましたな」だ。重なるセリフが蘇ってつい笑った。


「あれ、面白いこと言ってないけど大丈夫?」

「いや、リム様にも同じこと言われたんだ。そうか、そりゃ気が合うだろうな」

「もちろんだ。リム様ってノリいいからな、俺の故郷のじゃがいも料理教えた時とか毎晩作ってくれたんだぜ」

「やっぱり芋か。なんだっけ、お前のとこのじゃがいも料理って……けっこう前に作ってくれたよな?」

()()()()だ」

「そう、いももち」

『いももち……?』

「いももち、ってなに?」

「タカアキ、説明してやってくれ」

「教えて進ぜよう。潰したじゃがいもに片栗粉よーく混ぜて火を通した食い物だよ。もちもちしててうまいんだ、リム様ニョッキだこれとかいってたな」


 しかしそんなタカアキとリム様の共通点はやっぱり芋だったか。

 二人とも、本当に世話焼きだな。


「……おっと、皆さま。前をご覧ください」


 そうやって話を弾ませてると、車は速度を落とした。

 ガラス越しに何かが見えた。遠くに――巨大な壁がぐるりと何かを囲ってる。

 なんだあれは。豊かな大地にブルヘッドより大きな『壁』がとてつもない規模で陣取ってた。


『あっ……! クラングルだ! いちクン! あれが私のいた場所だよ!』


 ミコの興奮した声がやっとそこに一致した。

 あれこそがクラングルだった。白くて円状の防壁が都市を包んでる。

 遠くからでも分かるような塔が幾つも目立ち、大げさに囲われたそこは見るだけで賑やかだ。


「あれがクラングル? なんだあの、くっそデカい壁……」

「驚いたか? あの壁の中に街があるんだ」

「ブルヘッドってところでそう言うのは見たんだけどな、気のせいかあれよりデカく見える」

『うん、大きいでしょ? あの中に都市があるの、すごく広くて、人もいっぱいいて。やっと帰って来れたんだ……』

「……あれが街? おっきい……」


 三人で思わず釘付けだ。身を乗り出したわんことまじまじ見てしまった。

 しかしそんな風景も段々と近づいていく。車は足を速めていって。


「でだ、ミコちゃん。この世界の情勢云々話しておきたいけどよ、ミセリコルディアのみんなについて話すことがある」


 タカアキは軽やかなハンドルさばきと一緒にそう伝えてきた。


『は、はい……。あの、みんなは今どうしてるんでしょうか……?』


 対して、肩の相棒はそれはもう緊張した感じで尋ねるが。


「あれから半年ほどずっとお前を探してたそうだ。諦めずにずっとな」

『そう、だったんだ……』

「少ししか話したことないけどな。蜥蜴の真面目そうな子がこういってたぜ、「ミコに負担をかけたせいで出て行ったんじゃないか」って」

『……そんなことないのに。わたし、みんなと一緒にいて楽しかったんだよ?』

「そりゃ本人に直接言えよ。でも、いつ帰ってきたっていいようにずっと準備してたんだ。いい家族を持ってるじゃないか、毒親育ちの俺たちからすりゃ羨ましいさ」


 ミコの家族はずっと待っててくれたらしい。今もなお、ずっと。


『みんな、わたしのこと……ずーっと待っててくれたんだ……?』

「でな、向こうからフランメリアに来た連中がいっぱいだよな? 俺も最初は「まさか」と思ったんだが、そこでリム様が杖で飛んできて「帰ってきますの!」だぜ? そこからもう大変で大変で」

「お前に伝えにきたってことは、ミセリコルディアの連中にも届いたんだな?」

「おう。エルヴィーネっていう子が探しに行こうって騒ぎ始めたもんだから、必ず連れてくるから待ってやれって言っといたたぜ? すれ違ったら困るだろ?」


 幼馴染はアクセルを片足に明るい表情だ。

 その通りの結末がクラングルで待ってるに違いない。

 ミコの帰りを信じた面々が必ずいて、俺たちは間もなくたどり着こうとしてるのだ。


『……ありがとうございますタカアキさん。みんなのこと、安心させてくれて』

「ほんとはさ。帰ってくるぞ、じゃあさよなら……って終わらせるつもりだったんだけどなあ。みんないい子すぎて飛んできちまったよ?」


 面倒見のいいやつめ、タカアキ。

 すっかり安心したのか、肩の短剣からすすり泣きが伝わってきた。

 車は適度なスピードで『クラングル』の壁へと近づいて、とうとうその門が見えてくる。


「よし、到着だ。ちょっと待ってろよ」


 目の前にして分かった。この都市とやらはかなりデカい。

 見上げれば高い建物が幾つも飛び出ていて、ブルヘッド以上の白壁が丁重に全てを包んでた。

 その入り口は既に人がいっぱいだ。ウェイストランドとは違う身なりが往復してる。

 ウォーカーが通り抜けられそうな門には馬車すら通って、槍を持った見張り番が行き交う人を見守っているようだ。


「……ほんとにファンタジーだな」


 もっと見上げようか。空に女の子が飛んでる。

 箒にまたがったいかにもな姿が空を過ぎって、一見大きな鳥――に見える人型混じりの何かが優雅に飛び回る。

 いやこっちに来た。肘から先が翼になった茶髪な女の子がバサバサと着地姿勢を取って。


「――やっほい!」


 銃座に着地したらしい。

 天井の穴から八重歯の眩しい元気なボーイッシュ系ロリが覗いてきた。

 半ズボンみたいな服装はあれど脇やらが良く見える涼しそうな格好だ。


「あー……やっほい?」

「くるまだー! ねえねえ、にーちゃんたちプレイヤー?」

「プレイ……ああ、そうだな」


 質問の内容で分かった、こいつはたぶんヒロインだ。

 好奇心強めの無邪気な顔は俺たちの人柄を見て探ってるようだ。


「変わった格好してるねー、"くるま"はあっちに停めるといいよ!」


 翼に混じった爪っぽい腕で向こうを示してきた。ご親切にどうも。

 壁の外側に馬車やらが停まってるたまり場がある。なるほどいい駐車スペースだ。


「ガイドありがとよ鳥ッ娘――おい、そろそろ離れな。危ないぞ」

「ボクも乗っちゃだめ?」

「だめ。ケガしちゃう」

「ちぇー」


 タカアキはそんな女の子を見送って、またスピードを上げた。

 鳥っぽい子は「じゃあね!」と元気に飛んでいった。空飛ぶ鳥娘がお出迎えか。


「……今の、ミュータント?」


 ニクだって目を真ん丸に驚いてる。ウェイストランド慣れするとついそう思ってしまうのが難点だ。


『あれはね、ハーピーの子だよ。空を飛べるヒロインで……久々に見ちゃったけど、懐かしいや』


 でもミコは懐かしがってた。あれがこの世界の普通だってさ。

 

「ハーピーか。ほんとにあのゲームの世界なんだな」

「未来のお前のおかげで単眼美少女に会えたから文句なしだ」

「お前はまた単眼言って……いや、性癖を一つかなえられて何より」


 ハーピー一匹分軽くなった装甲車はならされた土地に近づいていった。

 小屋やら馬車やらの近くに軍用車両がざざっと停まって、時代感覚がバグりそうな光景が出来上がりだ。


「さ、クラングルへようこそだ。ついてこい」


 こんな世界に慣れてしまったタカアキは頼もしかった。

 車を降りるなり堂々と歩いて、クラングルの無駄に大きな門へとまっすぐだ。

 それに続いた。喋ると短剣とわんこを、そしてバックパック二つ分の重さと共に。


「……ねえ、あの人って旅人(プレイヤー)かな?」

「プレイヤーじゃないかな? だってヒロインっぽいワーウルフがいるし」

「でも銃持ってる。最近来た『外の人』じゃない?」


 しかし俺たちは違和感しかないんだろう、さっそく近くの目が飛んでくる。

 見れば途中で「これから冒険です」という身なりの女の子たちがいた。

 まあ、下半身が蛇だったり、羊の角が生えてたり、向こう透き通るスライムだったりと人間じゃないが。


「あれ……プレイヤーじゃないですよね? あんな格好初めて見るんですけど」

「そうだな、この世界らしくない姿だし。噂の外国人じゃないか?」

「いや、プレイヤーなら銃なんて使えないはず。俺たちの仲間じゃなさそうだ」


 ちゃんと人間の男女もいた。

 世紀末世界の血の気盛んな類じゃなく元の世界で見かけるような人間だ。

 そんな奴らが「剣と魔法」な装いをしていて、少しアンバランスだった。

 どうも俺たちが目に馴染まなかったらしい。どいつもこいつも訝しんでる。


「……また余所者(ストレンジャー)からか」

「どしたシューヤ?」

「いや、ただの俺の身の上話だ。気にしなくていい」


 今度は世紀末世界の余所者ってわけか。

 でも分かった。俺はもうここの奴らから遠く離れた存在になってるんだろう。

 プレイヤーからもヒロインからも距離を置くストレンジャー(余所者)だ。別にいいさ、いつも通りだ。


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