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魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー  作者: ウィル・テネブリス
世紀末世界のストレンジャー
159/580

70 スティングはいつもより騒がしい

「いや~、大変なことになってきたっすねえ」


 詰所から飛び出て、最初にそんな呑気に発したのはクビメイドだ。

 もうこいつに事の重大さなんて求めないが、本当に大変なことになり始めてる。


「ああそうだな人生で一番大変な時期が来たかもな! ところでさっきの爆発は本当に市長なのか!?」

「命より大事にしてた高級車だからな! 死ぬときは一緒だろうさ!」

「あいつに生きててほしいのか!? 死んでてほしいのか!? どっちだ!?」

「ここまで来たらもうどっちだっていいさ! とにかく急ぐぞ!」


 自警団たちと共に走る、事故現場向かってとにかく走る。

 既に向こう側では人だかりが生まれている、燃える残骸を拝みにくる方の。


「おい自警団の! 仮にあの"くるま"とやらに裏切者がいたとして、ああまでされる理由はなんだ!」


 もうすぐたどり着くところで、誰より早いペースで進むクラウディアがそう問う。

 確かにそうだ、街を売ったやつがいたとしてああまで派手にやられる理由が謎だ。

 裏切者を許せなかった奴が他にいたのか、実は市長じゃなかったか、それか――


「用済みになった挙句、見せしめになったという路線も頭に入れておくべきだな!」


 また違う予想は一番後ろのクリューサが導き出してくれた。

 仕事は果たした、お前は用済みだ、派手に死ねってか?

 その場合だと最悪だ、もう準備は整ったっていうサインにもなりえるからな。


「どの道ここまで盛大にやってくれたのだ、ただ事ではなかろうな!」


 最後にオーガが締めくくる。そうだ、コソコソする必要がなくなった知らせでもあるからだ。

 次はなんだ? 狙撃か? 爆撃か? 大群の突撃か? なんにしたって最悪だ、くそ。


 正直腹が立っている。ここまでうまくやってきたのに、とんでもない壁が立ちふさがっている焦りにだ。

 仮にこの街が襲われたとしよう、俺たちじゃどうにもならないとしよう、最悪見捨てるとしよう、それからは?

 20000チップの価値がある俺はまた命を狙われて、約束のダムへ向かおうにも果てしない遠回りか、しばらくの足止めが突きつけられる。


 やっとここまで来たのに……いや、今までがうまくいきすぎてたんだろう。

 もしも。うまくいった分がそのままそっくり返り始めてるとしたら、俺はこれからどれだけひどい目に会うのやら。


「スティングの未来談義はそこまでにしろ! とにかく現場を確保して……」


 そうして自警団と仲良く人混みの中をかき分けようとした、その時だ。

 俺たちがこうしてどたばたとやって来るのとほぼ同時に、反対側から武器を持った一団が向かってきた。

 しっかりとした小火器に荒野向けの軍服は、まさに自警団だ。信頼できない九割の方のな!


「お、お前たちは――」


 最悪俺たちの敵にすらなりえるそれはざっと二十名ほどだ。

 ばったり会ってしまったせいで、手にしていた銃を構えるかどうか指が迷っている。

 間違いない、この反応はおかしいぞ。


「動くな! 裏切者どもめ! 市長をやったのか!?」


 そんな様子に真っ先に動いたのはオレクスだった。

 木製銃床の短機関銃をまっすぐに構えた。威嚇などではなく本気でだ。

 それに倣って周りの団員達も戸惑いつつ各々構え始めて、遅れて俺も三連散弾銃を抜いた。

 ロアベアも剣を、ノルベルトも拳を、クラウディアはナイフを抜いて、ニクが唸る。


「オレクス! 市長が、市長が逃げ出したんだ! そしたらいきなり爆発して――」

「ああそうかもな、もうすぐご主人様が来るからここは居心地がさぞ悪いだろうしな! ついでに敵を手引きした裏切者はお前たちだったわけだ!」

「ちっ、違うんだ! 確かに、確かに俺たちはライヒランドの手助けはしたさ、でもここまでやるとは思わなかったんだ!」

「やっぱりか、このクズどもが! お前らの言う「ここまで」は一体どこまで堕ちてるんだ!? その浅はかな考えのせいでここの人間がどれほど死んでるか分かってるのか!?」


 向こうだって数の差にすぐ気づいたようだ、誰かが銃を持ち上げ始めて、続々こっちに向けてきた。

 あとちょっとだ。ほんの少しきっかけがあれば、こいつらとやり合う。

 

「オレクス! 待て、銃を下ろせ! 市長をやったのは俺たちじゃない! 急に逃げ出して気づいたらこれだ! 見てくれ、あいつは用済みになったんだよ!」

「そ、そうだ! 我々はその、仕方がなく従ってただけなんだ! それがこんなことになるなんて」

「次のセリフは「こうするしかなかった」か!? 全員武器を捨てろ! 後悔トークはその後いくらでも喋らせてやる!」

「その後は保障してくれるって言ってたのにこれだ! あいつらはなからこんな約束反故にする気しかなかったんだ!」

「確かに俺たちは離反したが本気じゃないんだよ! お前が思っている以上に『スティング』は敵だらけなんだ、この街はもうおしまいだ!」 

「お前らの勝手な都合なんて知るか! いいから武器を下ろせ!」

「おっお前たちが先に下ろせ! お前たちとやり合うほど俺たちはイカれちゃいないぞ!?」

「頼むオレクス! 確かにこうなったのは我々のせいだ、だがまさかここまで酷くなるなんて思ってもなかったんだ! 俺たちはただ――」

「言い訳はいい、お前らクソ野郎どもはここで死ぬか、それとも武器を下ろして腹を割るか、好きな方選ばせてやる!」


 とてつもない有様だ、お互い銃をじりじり向け合って一歩も譲ろうとしない。

 幸いなことにどっちもトリガを引きたくなさそうだが、このままだと押し問答だけで一晩中明かせそうな勢いだ。

 「いっそ俺たちで全員黙らせるか」という強硬策まで浮かんできて、ロアベアやノルベルトに視線を配らせるものの。


『あのっ、皆さん! 落ち着いてくれませんか!?』


 わずかな会話の間に、ミコの声が割り込んできた。

 すごくいいタイミングだ。次に出す言葉が塞がれて、向こうは『今の声は誰だ?』と戸惑ってる。

 そのうえで、


『今は言い争ってる場合じゃないですよね!?  あなたたちはこの街をどうしたいんですか!? なくなってもいいんですか、大切にしたいんですか、どっちなのか答えてくださいッ!』


 頼りなく武器を構える連中に向けて、はっきりそう尋ねた。

 そいつらにはさぞ効いたのか、戸惑いを深くしつつも銃を構える姿を緩めていく。

 同時に俺たちもだ。相手を刺激しないように、誰に言われるまでもなく、それに合わせて武器を解いていく。


「……な、なくなっていいもんかよ……! ただ、俺たちは安全でいたいだけなんだ。お前ら、あそこがどんだけヤバいのか知らないだろ……!?」

「べ、別にあいつらに魂すら売ったわけじゃないんだ。仕方なく従ってりゃ見逃してくれるはずだったんだ、それが、それが……」


 なるほど、こいつらはどっちつかずか。

 都合のいい方に最後まで従ってたらこうなったわけだ、クリューサの考え通りだったかもしれない。

 しかしそんなわがままな連中に、オーガの巨体がどすんと踏み込む。

 

「では問おうか! それがお前たちの望むこれから(・・・・)か!」


 今度はご立腹な様子のノルベルトが鼓膜を揺らす巨声で問いかける。

 その先には見事に爆発四散したばかりの新鮮な廃車がある。

 恐らく車の中にたんまり詰め込んでいたであろうチップの山が炎で焦げ溶かされていて、その持ち主と思しき何かもいた。

 これでもなお、どこかに逃げようとしてるんだろう。

 体ははち切れ人型の炭みたいな形になりつつも、その姿はスティングの外を目指してるようだった。


「目を覚まさんか人間ども! ふらふらふらふらと己の信念で遊ぶぐらいなら、その服を脱ぎ、手に持ったそれを捨て、そこの荒野にでも逃げるがいい!」


 オーガが人間の頭蓋骨を貫けそうな太い指で、どこまでも続く荒野を示す。

 目の前の男たちは――戸惑っている。

 間近なところで出来上がった無様な死と、厄介ごとから逃げられる唯一の逃げ道を見比べたんだろうか。


「……くそっ、こうなるのも、野垂れ死にも勘弁だ……!」

「お前ら、武器を下ろすぞ。もう俺たちは市長命令なんぞ従わなくていいんだ」

「これからどうすればいいんだよ……!?」


 二人のおかげでうまくまとまったか。

 俺たちの総数よりもずっと多い銃口がようやく下ろされて、白昼堂々撃ち合い殺し合いになる事態は避けれたようだ。


「けっきょくこいつらはどっちだ? 黒か白って意味でな」


 ひとまずお互い銃を向けずに済んだところで、自警団の男に聞いた。


「まだ灰色だ、これ以上事態が悪化しなきゃな」

「先に言っとく。もしこいつらがふざけた真似したら、あんたの同僚だろうが俺は容赦しないからな」

「その時は勝手にしろ。こいつらの自己責任だ」


 気は許せないが、少なくとも今ここでやり合う必要がなくなったなら十分だ。

 状況が落ち着いてくると向こう側から一人団員がやってきて。


「オレクス、聞いてくれ。この街はもう敵だらけだ、レイダーだけじゃない、ミリティアの傭兵集団やライヒランドの奴らだって潜り込んでるんだよ!」

「ああそうだろうな、お前らの働きのおかげでな!」

「違う、俺たちがこうなるずっと前からだ! あいつら、もう何年もこの機会を――」


 「何があったのか」を必死に弁明しようとしていた。

 今はそんなことしてる場合じゃないだろ、と思ったが……実際そうだった。

 なんでかって? こんなトコでにぎやかにしてる俺たちに、また別の一団が姿を見せたからだ。


「おい、あれ……!」


 目の前の奴か、それともこっちの奴か、自警団の一人が声を上げた。

 どちらにせよ、もう俺たちは一つにまとまっていた。「あれ」とやらをみんなで見るほどには。

 それは街の方からやってきたんだろう、またご同類の一団だ。

 今この場にいるのとはまた別物の自警団たちがやって来たわけだ。


「また自警団かよ! 今度はどっちだ!?」


 ややこしくなってきた、だが信用できないのは確かだろう。

 俺は散弾銃に手をかけながら様子をうかがう、向こうは様子がおかしいぞ。

 確かに横から現れたそいつらは落ち着いてはいるが、動きが違う。

 いつでも物陰に身を隠せるように位置についたまま、仲間同士でもごもごと何かを話してる。


『――! ……!』『……。……?』『……! ――!』


 無駄に高い感覚ステータスを使ってどうにか読み取るが、これだけは分かる。

 この場にいる俺たちをどうするか、先に手を出すか、やるかやられるか。

 結果として、その中の一人が慌てた様子で何かをこっちに向けて来た。


 ……機関銃だ、湾曲した弾倉が横向きについた二脚つきのそれを構えだして。


*Brtatatatatatatatatata!*


 ――ほんとに撃ってきやがった! 

 的当てにちょうどいい状況だったのかもしれない、固まってたところに全自動射撃がぶち込まれる。


「皆の者! 俺様を盾にしろッ!」


 急いで射線から抜け出そうとするが、ノルベルトが先に一手打ってくれた。

 まさに仁王立ちと言った様子で相手の銃口の先に立ちふさがると、オーガの面積にびすびすと弾がめり込む音がした。

 屈強な背中越しに着弾音が伝わってくるが、防ぎきれなかった弾の存在感がびゅんっと掠めていく。


「ひ、ひいいいいいいいいっ!」

「あ、あいつら撃ってきやがったァ!? なんで、なんでぇぇぇッ!?」


 元々一緒にいた自警団の連中はいい、でもさっきの二十名ほどはまるで駄目だ。

 突然の銃撃にパニック、一目散に逃げ出して射線から逃れようと努力する。

 しかしそんなところにも銃撃は向けられる、向こうの誰かが撃った弾が当たって何人かが倒れた。


「くそっ、あいつらお構いなしのようだぞ!」


 そうオレクスが筋肉の盾の裏で短機関銃を構え始める、すると連射が止んだ。

 俺も散弾銃を手に顔をのぞかせると、別の自警団の連中は俺たちから逃げ出してるように見える。

 時々銃撃を加えては、とにかく距離を放そうとしているというか、中には廃屋に逃げ込むやつもいた。


「お前ら散開して身を隠せ! もたもたすんな素早く動け!」


 とにかく攻撃されてるのは事実だ! 逃げる姿に散弾をぶっ放しながら、手近な遮蔽物に飛び込む。


「イチ様ぁ、どうするんすかあれ? もう完全に敵っすよねぇ」

「ウォンッ!」


 ロアベアもわんこと一緒にちょこちょこついてきたみたいだ、頭を大事に抱えて身を守ってる。

 そこにまた掃射。背中を預けたコンクリートの目隠しに弾の重さがびすっと伝わる。


「完全に敵だ、自警団だろうがやるしかない!」

「でもうち、銃とか持ってないんすよねえ」

「知るか! 生首でも投げてろ!」


 「お~いいアイデア」とかいうおバカメイドはほっといて、身を乗り出す。

 他のメンバーはどうにかうまく隠れたみたいだ、ノルベルトが身を挺して橋渡しをしてくれたらしい。


「イチ! そちらは無事なのか!」

「これくらいどうってことない! それより――」


 三連散弾銃を構える、仲良くなれない方の自警団メンバーはかなり離れてた。

 機関銃持ちが二人、そのうち片方はこっちを狙ってる――40-75弾に切り替えた。

 すぐ近くを弾が掠めた。問題ない、逃げ込んだ廃屋から依託射撃中の機銃手をオープンサイトに合わせる。

 頭上に何かがひゅっと摩る。凸型照星(フロントサイト)の上にぴたりと上半身がはまる――今だ。


*BAM!*


 トリガを絞ると射撃が止んだ、もう片方がそれに気づいてこっちに銃撃を始めるが。


「あいつらめ、お構いなしに撃ちやがって! イカれてるのか!?」


 反対側でみんな仲良く隠れていたオレクスが身を乗り出す、あの短機関銃を構え。


*PapapapapapapakinK!*


 廃屋めがけて撃ちまくった。ぱきぱきという金属音が目立つ変わった銃声だ。

 しかし効果はあったに違いない、しばらく弾に煽られたそこから銃が引っ込んでいくのが見えた。

 ついさっきまで一悶着あった自警団どもも死に物狂いで打ち返してる、いきなりの奇襲はようやく静まりかけるのだが。


「あああああああっ! うた、撃たれたああああぁぁッ!」

「な、なんで……なんでだあああああああああァッ!? 俺、撃たれっ」


 道路の上には判断が遅れた奴らがいっぱい転がってる有様だ。

 残念ながら死者も出た。数人ほど、間違いなく即死してる。


「ノルベルト、負傷者をこっちに連れてこい!」


 他に敵がいないか確かめてると、いつの間にかそばにいたクリューサが叫んだ。

 反対側で肉盾になってたご本人は即決だ、いう通りに倒れた団員を何人もまとめて担いできて。


「お前たちも見ていないで連れてこい! さあ医者よ! 連れて来たぞ!」


 敵か味方かも分からぬ奴らに負傷者を担がせながら、こっちにのしのし走ってくる。 

 痛がるケガ人を見て「もっと丁重に扱えないのか、くそ」と文句を垂らしながらも治療を始めたようだ。


『あ、あのクリューサさん! わたし、回復魔法が――』

「奇跡の業のことか? 弾が残ってるやつには使うな。弾が抜けてるやつ、重度の奴に使え。安全なところに移して弾を摘出するまで応急処置で済ませるぞ」

『わ、分かりました! いちクン、ロアベアさん、怪我人を選んで連れてきて!』

「分かった、急ぐぞロアベア!」

「了解っす!」

「手が空いてるやつは俺の指示に従い患者を分けろ! 死者を増やしたくなければ急げ!」

「い、いでえ……! 早く助けて……!」

「すぐ処置すれば死にはしないから落ち着け! くそっ、軟弱な奴らめ!」

「もう大丈夫だぞ、これでも食べて落ち着くといい」

「お、おれ、あまいのにがてなんだが……」

「何トヴィンキーを食わせてるんだ馬鹿者!? トドメを刺すつもりか!?」


 一応、連携は取れてるみたいだ。

 ようやくまとまった自警団の連中は負傷者の確保と、周辺の安全の確保を自然と分担してる。

 オーケー、もう十分だ、こいつらは敵じゃなくなったわけだ。

 それからクラウディアがおやつで患者を殺そうとしてるから止めた。


「おっ――オレクス! あれ、あれを見てくれ!」


 ついさっきまで裏切者扱いされてた自警団の一人が、いきなり叫んだ。

 心の余裕が一切なくなった悲鳴同然のそれに、当然目が向いてしまう。

 道路をずっと上った先に、何か巨大な質量がぎゃりぎゃりと這いずりまわっている。

 履帯があって、丸みと傾斜を帯びた装甲に覆われ、砲を積んだ頼もしい存在……戦車だ。


「おい、あの戦車はなんなんだ!?」


 問題はだ、その戦車が一体どういう立場なのかという話だ。

 俺は可能な限り「敵に回ってない」ことを願いながら誰かに尋ねた。


「あれは自警団が保有してる戦車だ! あいつは俺たちのとっておきだ、どうしてここに――」


 あれはこの街のとっておきのようだ。

 単眼鏡を取ってその姿を確かめると、枯草色の車体は道路を横切ってるところだった。

 何をするのかと思ったその直後、


*DooooM!*


 砲身の先が爆ぜた、砲撃したのだとまき散らされた煙が語っている。

 一体何を狙ってるのか分からないがこれだけは確実だ。街を撃ってやがる。


「お前らのとっておきっていうのはいつもあんな風に街を撃つのか!?」

「んなわけあるか!? くそっ、戦車まで奪われたってことか!」


 何かを狙う戦車に続いて、またどこからか爆音が聞こえてきた。

 『今度はなんだ』と全員で見た先は北西方向、街の中心部だ。

 何かが爆ぜて燃えている、それだけの事実がある。


「次はなんなんだよ!? 街が爆発したぞ!?」

「オレクス、まずいぞ……! あの辺っていったら武器庫だ、武器庫を爆破しやがった!」

「ああそうだろうな、俺の自宅のすぐ横だから良く分かるさ! これで我が家もなくなったぞ畜生! どうなってんだ今日は!」

「大丈夫か自警団の! 今お茶も飲ませてやるぞ!」

「口の中ぱっさぱさで……死ぬ……」

『あのクラウディアさん!? 負傷者におやつを与えないでください!』

「クラウディア、いい加減にしろお前は! 物食って傷が治るのはお前らぐらいだ馬鹿エルフ!」


 この場もそうだが、スティングは騒がしくなっている。

 騒ぎを聞きつけた住民たちが慌てふためいてるし、さっきまでいた怪しい連中はここぞとばかりに姿を消した。


「俺たちは、いや、この街はこれから一体どうなっちまうんだ……?」


 辺りが静まった時、誰かがそう口にした気がする。


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