悪夢で覚める
「……っは!?」
私は急に目が覚めた。
窓を見たらまだ夜は明けていない。
身体は冷や汗でびっしょりとなっている。
「ルイーゼ様、失礼いたします」
ミッシェルが着替えを持って入ってきた。
「え? こんな夜中なのに起きていたの?」
「いえ、隣からルイーゼ様が魘されている声が聞こえて来たので恐る恐る入ってみたら汗をかいていたので」
……隣にも聞こえるくらいの大きな声を出していたのね、恥ずかしい。
「因みにどんな夢を見ていたのでしょうか?」
「……聞いても面白くも何ともないわよ。 『あの日』の夢を見たのよ」
「『あの日』と言いますと、王太子妃選定の日の事でしょうか?」
「えぇ、決まって私が呆然と立ち尽くしていた時に周囲から『やっぱり』とか『お前が王太子妃に選ばれる訳が無い』とか『自意識過剰だ』とか言われたのよ。 顔は黒くなっていたけどクスクスとか指を指されながら言われていたわ。 反論したかったけど言葉が出なくて……、どうしたらいいか分からなくなっちゃって……」
思い出しただけで心がギュッとなり締め付けられる。
実際は私はすぐに退場してしまったから周囲の反応はわからない。
もしかしたら、あの時退場していなかったら笑いの対象になっていたかもしれない。
「それは……、今のルイーゼ様の心の中ですよ」
「心の中?」
「はい、ルイーゼ様は今心が弱くなっているからそういう夢を見てしまうと思うんです。 きっと心が穏やかになったら例え悪夢を見たとしても反論出来るでしょうし悪夢も見る事は無くなると思いますよ」
ミッシェルに言われてなんとなくだけど納得した。
私は忘れないように夢の事を日記帳に書いた。
この日から度々、私は悪夢を見る様になる。
お医者様曰く『ルイーゼ様が世間を気にしている証拠』だと言う。
もう少し自分に自信を持つ事が出来れば悪夢を見る事は無くなるだろう、と言っていた。
……暫くは悪夢と付き合う事になるのだろうか。




