お前たちのナンパって、醜くないか?
映画の内容ときたら、もう、とんでもない代物だった。
何しろ突拍子がない。メタ的な要素全開だし、とんでもないサプライズゲストなんかもいたし、ネタに走りまくってるし。
なのにそれでいてストーリーに一貫したものがあり、メッセージ性も強く、どこかこちらへ、エールを送ってくれているような。
そんな、風邪を引いた時に見る悪夢めいた、カオスな良作だったように思う。
「訳わかんなかったー!」
「ははは……ですよねー」
見終わってちょうど昼時、フードコートにてランチを食べながら感想を言い合う。俺はオムライス、佐山さんはドーナツだ。
俺としては、それなりに良い映画だったというのが率直な感想なんだけれども、佐山さんの理解不能だったという感想もよくわかる。そのくらい俺たちが見た映画は、良くも悪くも人を選んでいた。
あの場面は良かったとか、あそこの役者はカッコよかった、とか。何なのあのシーンとか、あのゲストは誰? 何? とか。
色々語り合う。何というか、ああだこうだ言い合う分には、滅茶苦茶な作品の方が話題が尽きなくても良いのかもしれないなって思う。
「あーいうさぁ、バトルみたいな感じのって、山形くんもしたりするんだよね?」
「え?」
「動画で御堂さんが言ってたし。何か、パンチでビームが出るって」
「ビーム……」
いやビームて。たしかにビームだったけども。ビーム……
そう言われると何やら、ロボットアニメみたいになった自分を想像してしまう。
あれ衝撃波だったんだけどなあ。光ってただけで。
「あー、まあ似たようなのは。いつもできるわけじゃないけどね」
「ふーん? なんか条件とかあるんだ」
「そうだねえ。自分でもよく分からないけど」
実際、俺のスキルが発動する条件とか新しく獲得するタイミングなんて、システムさん次第だもんな。アドミニストレータ用のスキルがそうだし、そうでなくとも誰かが傍で戦ってるだけでも発動しないスキル、素手以外だと発動しないスキルなど制限ばかりだ。
こんな雁字搦めでよくまあ、俺も探査業を続けてるもんだよ。効果が半端だったら成立してないもの、こんなステータス。
ま、結果として今、それなりにこのスキルや称号にも慣れてきた。それならそれで良い、と思うことにする。
食事を終えて再びショッピングモールを歩く。さあ、次はどこへ行こうか。
「本屋か、ゲームセンター……ゲーセンかなあ」
「おー、山形くんゲーセンとかよく行くの?」
「いやあ、あんまり。だからちょっと楽しみだったり。女の子と二人で行くなんて、これが初めてだし」
何なら最後の可能性まである。
そんな、恥ずかしながら何もかも初体験な俺の言葉に、佐山さんはにんまり笑って、俺の背中をバシバシと叩いた。
「山形くーん、山形くぅ〜ん!」
「えっ、何!? 怖ぁ!」
「もうホント、山形くんったら山形くんなんだもんなぁ〜!」
何をそんなに面白いことがあるのか、滅茶苦茶笑って嬉しそうだ。箸が落ちても面白い年頃かな?
さておき、ゲームセンターへ向かう。フードコートのすぐ隣りにあるから移動なんて代物ですらない。昼ご飯食べてる最中も賑やかな騒ぎがこっちまで聞こえていたくらいだ。
ゲーセン特有の薄暗いスペースに、色んなゲームの筐体が所狭しと並ぶ。クレーンゲームは元より、ホッケーゲーム、様々なゲームのアーケード版。メダルゲームやパチンコ・パチスロまである。男子のみの入場禁止エリア、プリクラとかもね。
人も多い。さすが日曜だ……若い人たちは元より家族連れ、子連れ、なんならお年寄りの方々までいる。歳が上になるに連れてメダルゲームに集中してるのは何なんだろうね。パチンコとかならまあ、なんとなーししっくり来るんだけれど。
ともかく、ゲームセンターとはそんな感じのちょっとしたテーマパークだ。
テンション上がってきたみたいな、佐山さんが俺の手を引く。
「ね、ね、山形くん! 何する? 何しよう!」
「え、と……まずは一通り見て回ろうよ。気になったのがあったらその都度やれば良いし」
「おーっし、ラジャー! ワクワクしてきちゃった、私もそんなにこういうとこ来ないからさ!」
へえ、それは何ていうか意外だ。デートってんじゃなくても、友達といくらでも行ってそうな感じしてたんだけども。
詳しく聞くと、女子だけだと薄暗いのが怖いし、変なナンパとかもあったりするしで大変らしい。
まあ、佐山さんとか佐山さんのお友だちみんな、かなり美少女ばっかりだもんね。ゲーセンが今時、不良の溜まり場だなんて言うつもりはないけど……若い男のグループなんかも見てるだけでも結構いるし、ナンパ的なのもあったりするんだろう。
「ねえねえお姉さん、今ヒマ? ホッケーやらない、ホッケー?」
「俺たちここのゲーセン詳しいんよ。良ければ一緒に遊ばなーい? 太鼓やろ、太鼓」
「……ほら、こういうの」
「なるほど」
よく分かる話だ。まさか、目の前で実例が起きるなんてね。
佐山さんに二人、同年代の少年たちが話しかけてきて俺たちは目を見合わせた。
この話を投稿した時点で
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