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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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割れ鍋に綴じ蓋?

「逢坂美晴っていう、私のクラスメイトなんだけどさ……一年くらい前からスキルに目覚めたらしくて。今度、E級探査者の昇級試験を受けるって言ってた」

「つまりF級か。それで?」

 

 我が妹、優子ちゃんからの相談は意外なものだった。何しろ彼女のクラスメイトがまさかの探査者だというのだから。

 これで俺、関口くん、逢坂さんと3人、学生探査者がこの近辺にいることになる。国内1万人の、さらに学生なんて少数派なのに。世間は狭いね。

 

 それで、その逢坂さんの何が問題なのだろうか?

 聞くと、優子ちゃんも半ば困惑してぽつぽつ話し出していた。

 

「その……相談を受けてさ。兄ちゃんを通じてA級トップランカー、御堂香苗さんにお会いできないかって」

「……御堂さん? なんで俺経由」

「最近、御堂さんが高校生の男の子に夢中で、ものすごく入れ込んでて有名なんだって聞いたけど。それでその男の子ってのが、兄ちゃんのことなんだって。本当なの?」

「お、おーう……と、遠からずも近からずかなあ……」

 

 噂になってる。怖ぁ……でもなるよね、そりゃ。ならないわけがない。

 御堂香苗ったら非探査者にまで広く名の売れている、日本の探査者といえば? と聞かれた時、結構な割合でこの人が挙げられるくらいだ。

 S級の人たちがいまいちメディアへの露出が低いため、SNSを積極的に利用している香苗さんが比較的に目立つんだよなあ……もちろん他の探査者も大勢、配信業に手を付けている人もいるけど、それでもやっぱり一番人気は香苗さんだ。

 

 そんな有名人が、未成年の少年にドハマリしあれやこれや教えているのだ。ネットの反響なんて怖くてとても見れないけど、相当アレコレ言われてるんじゃないかな。

 いよいよファンに刺されそうな気配がしてきた。ゾッとする思いでいる俺に、どうやら噂が本当であるらしいことを察した優子ちゃんが頬を引くつかせてドン引きしていた。

 

「兄ちゃん……その、大丈夫? 変なイタズラ、されてない?」

「なんで俺がされる方なの前提なんでしょうかねえ……」

「だって兄ちゃん隙だらけで死ぬほどチョロいじゃん。御堂さんくらいの美女さん、ちょっと胸元開けられただけでもコロッと行きそうだし」

「ひどい」

 

 妹よ、君の中の兄はなんだ、飴玉一つで知らないおじさんについていく幼子かい? でもチョロい自覚はあるからうん、つらい。

 閑話休題。俺と香苗さんの関係性はともかくとして、今は逢坂さんの話だ。俺を通して香苗さんに会いたいのは分かったけど、それで一体何がしたいんだ?

 

 正直ね、今の時点でもう取り合う気はあんまりないんだけど。

 俺を、というか俺の妹を利用して俺から香苗さんに取り次がせようなんて、ちょっと都合が良すぎる。あの人に迷惑をかけるつもりはないんだよ、俺。

 

「その、逢坂さんの探査者としての能力が、一人での戦闘? に向いてないらしくて。サポーターってやつらしいんだけど」

「サポーター、は珍しくもないけど……一人での戦闘に向いてない?」

「うん。持ってるスキルが全部、他の探査者を助けたり補助したりするスキルなんだって。本人が運動音痴だから、そういう戦い用のが手に入れにくいんだって」

「なんとまあ」

「内勤……って言うの? それになる道があるそうなんだけど、本人はなんとかダンジョン探査を続けたいって」

 

 中々に珍しい話に、俺は思わずその、逢坂さんへの疑念を忘れて驚いていた。

 戦闘向けのスキルを一切持たない、運動音痴の探査者だって? それでいてしかも、当人にはダンジョン探査への熱意があると言う。

 

 普通なら新人研修が終わったら即、内勤組に行くような人材だろうに。スキルがサポーター的なものしかないのはさておき、戦闘用スキルを取得できないレベルの運動音痴は率直に致命的だ。

 そんな状態の探査者ならまず、喜んで内勤に行くようなイメージがあるんだけどな。ダンジョン探査への熱意がそこまでとは、何かのっぴきならない事情があるんだろうか。

 

 気になってきた。香苗さんへ取り次ぐのはさておき、一度会って、話を聞いてみたいな。

 と言うかあれだ、そんな探査者、場合によっては俺が求めていた人材──戦闘面ではからきしだけどサポーターとしては有能──に、ドンピシャの可能性があるじゃないか。

 

『言ってもF級さんでしょう? あんまり期待しすぎると良くないですよー? 取らぬ狸のなんとやら、なんとやら』

 

 リーベがそんな、釘を刺してくるのだが俺としては期待せざるを得ない。まず可能性すらないと思っていた話なんだ、ちょっとくらいはワクワクしたって良いんじゃないかなーって。

 

「よし、優子ちゃん。まずは俺が、その逢坂さんに話を聞いてみようか。香苗さんに話を通すのはそれから判断しても遅くはない」

「あ、うん。ありがと、兄ちゃん……香苗さん? え、香苗さん? 御堂さんを、え?」

 

 何やら動揺しだした妹を尻目に、俺はまだ見ぬ才能との出会いにウキウキし始めていた。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間、週間、月間1位、四半期7位

総合日間8位、週間2位、月間19位

それぞれ頂戴しております

ありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方よろしくおねがいします

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― 新着の感想 ―
[一言] きっと、主人公はチャーハンにあんかけをかけて食べるんだろう。
[一言] 戦闘スキルないけどダンジョン行きたいのと、御堂さんに会いたいのは関係なくないかな? 協会の人に聞いても分からない解決策を持ってるとかって情報も無いのに
[一言] 外から見ると完全にノクターン主人公ムーブ
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