INTERFACE ERROR : 数値が大きすぎます!
ダンジョンってのは、発生する際にモンスターも一定数、生み出すことがメカニズムとして突き止められているわけなのだが。どうもそこの機能が時折、異常をきたした状態で発生するケースがあるそうだ。
たとえばある特定の種類のモンスターしか出てこないだとか。反面、異様な種類のモンスターが出てくるだとか。ダンジョンの規模に対してあまりにモンスターの数が少ないだとか……逆に、モンスターの数が多すぎる、だとか。
そうした異常なダンジョンは現在、業界用語で『エラーダンジョン』あるいはシンプルに『エラー』とだけ呼ばれている。一般的な規格から外れたものと見なせる、まさしくエラー品なわけだ。
そして今回。そのエラーダンジョンが町中に発生した。
俺の家の近く、豆腐屋ダンジョンがあった商店街の、今度は路地裏にあるスナックの店前。そこに突如穴が空いたのだ。
そこまでならばよくある話だが、そこからが問題だった。
なんとモンスターが這い出てきて、商店街中を練り歩き始めたのだ。エラーダンジョンの一種で、規模に対して発生したモンスター数が多すぎたため、内部が飽和状態となり溢れ出てきたわけだな。
滅多にないことだが過去、歴史を紐解くと類似ケースは少なからず見つかる。それが通称『スタンピード』と呼ばれる現象であった。
「既に商店街の人々は避難して、組合派遣の探査者たちが周囲を封鎖しています。モンスターに襲われた軽傷者は複数いるものの、重傷、重体者はなし」
「根本原因である、スナック前ダンジョンへの到達は?」
「モンスターの数が多すぎて手を焼いているようです。それゆえ私のところにも救助要請が来たんですね」
足早に商店街へと駆ける中、俺は御堂さんから状況説明を受けている。
急な連絡だったが、ことがスタンピードとなれば、探査者としてあらゆることを置き去りにしてもそれに対処しなくてはならない。探査業における最優先解決事項の一つとして認識されているほどに、このスタンピードというのは危険な事態なのだ。
まあ、俺にはお呼びが掛かってないんだけどね?
今回のエラーダンジョンは、モンスターの種類と質から見てD級。実力不足の探査者まで派遣していらぬ被害を生まないよう、E級、F級の探査者は今回、待機指示が出ているのだ。
「私の、A級ライセンス保持者としての権限で、公平くんのエラー対応への参戦を許可します。あなたのスキルの都合、共闘とはいきませんが……できる限りのフォローはします、戦ってください」
「俺もよく行く商店街です、もちろんやりますよ」
「急なことですみません。今は戦力が、一人でもほしいのです」
「分かっています。御堂さん、あなたは立派です」
新人だけど、F級だけど。俺には規格外としか言いようのないスキルと称号がある。俺みたいなのこそ、エラーとでも言うべきなのかもな。
とにかくそんな奴を、今、遊ばせておいて良い状況じゃないってことだ。既に怪我人は出ているんだ、一刻の予断も許されない。
俺も御堂さんも探査者として、それ相応に身体能力が高まっている。それゆえ人通りの多い道を避け、パルクールよろしく建物を次々駆け上り、屋根伝いに商店街へと向かっていく。
こちらの方が遠くまで見渡せるから状況把握もしやすい。見えてきた……逃げ惑う人々、明らかに異様なるモノたちで溢れるアーケード街。それを食い止める、探査者たち!
「飛びます!」
「はい!」
御堂さんの掛け声に呼応して大きくジャンプする。そのまま商店街へとなだれ込むように飛び込んで、探査者の人たちが及んでいない群れにまで到達。そのまま勢いよく腕を振るう。
「どっ、こい、しょー!」
『ぬぎゃあぁぁぁー!?』
全力全開の、100倍以上の補正が掛かった俺の手刀だ。横薙ぎに放たれたそれは光放つ斬撃となり、一気に視界を広げていく。
一撃で大きくスペースを得た。振り返れば御堂さんがモンスターを食い止めていた探査者たちと合流し、既に敵対者を蹴散らしている。
「私たちはこのままダンジョン踏破を試みます! 公平くんは、地上にまで出ているモンスターの対処を願います!」
「分かりました、ご武運を!」
「御堂さん、彼は!?」
「新人だろ、あいつ! 大丈夫なのか!?」
「彼は救世主、あなた方より遥かに強い! さあ行きますよ、先輩として、彼に恥じない姿を見せなさい!」
俺にやるべきこと、為すべきことを指示して御堂さんが、困惑しきりの先輩たちを何人か連れて商店街の中央、スナックダンジョンへと向かう。
スタンピードは元となるエラーダンジョンを踏破すれば収まる。今ここにいたモンスターだけでもかなりの数だった、恐らくはもう、件のダンジョン内は至って普通の状態となっているだろう。
御堂さんたちならそう時間もかからず踏破できるはずだ。
だったら。それまで俺は、地上に出てきたやつらを倒す!
「南口は倒したから、次は北口の方か!」
既に静けさを取り戻したこのアーケード街の南口は、残って封鎖を続けている探査者たちに任せる。
俺は、やるべきことをやるために北口へと走った。
この話を投稿した時点で
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