システム領域、黒か白か(企業体質的な意味で)
「そんでもって次は期待のニュービー! バカップルっていうのはこういうのを言うのか、神奈川千尋とステラだ! サークル相手に戦いを挑んだ聖剣使いのお二人さんにゃ、現場仕事をいろいろ頼むと思うからよろしく頼むぜェ!」
続いてインターフェイサーのメンバーとして、紹介されたのは神奈川さんとステラのコンビ。椅子に座る神奈川さんと、半透明の姿を見せるステラが揃って会釈する。
こちらの二人は完全に現場要員というか、基本的にシャーリヒッタの指示に沿って動く隊員という形になるだろう。サークルとの戦いではヴァールを上に戴きそのように動いていたみたいだけれど、それがそのままスライドしてきた感じだね。
これから探査者としても活動を開始する傍ら、有事の際にはシステム領域のためにも動かなくてはいけないという、ハードな立ち位置の二人だ。
しかし彼と彼女はそれを承知の上で、それでも穏やかに微笑んで俺達に告げた。
「二人で一人の精霊知能、神奈川千尋とステラです。よろしくお願いします」
『インターフェイサーとしての活動においては隊長や先輩の指示に従い、過不足なく使命と任務を果たしてみせます。どうかいかようにもお使いください』
「神奈川とステラの実働能力についてはワタシが保証する。サークルを相手取っての戦いにあっては一年もの間、彼らだけで現地調査と現場捜査、および散発的な戦闘をこなしてくれていた逸材だ。正式に精霊知能かつ能力者となった今、そこで培ったノウハウもありエージェントとしては一級と言えるだろう」
「助かるぜ! もちろん私生活や探査者活動とのバランスは考えて仕事振るからよ、そう身構えないで気楽に頑張ってくれりゃ良いぜ!」
穏やかななかにも、壮絶なまでの使命感と覚悟を秘めた二人の眼差し。ヴァールがその能力の高さを保証するだけのことはあるんだろうね、佇まいからそれが分かるよ。
とはいえやはり、彼らはそれでも新米探査者であり新米精霊知能。そして新居に越して新生活を始めた新しいことづくめなカップルさん達である。
シャーリヒッタの言うように、ワークライフバランスに配慮した業務の割り振りをしなければならないだろう。
そこは管理側の俺やこの子の責任だね。しっかりしなくちゃ、インターフェイサーがブラック企業みたいに思われるのは勘弁願うし。
システム領域はとってもホワイトな職場だよ! ……そんな売り文句の時点で真っ黒な気がする文言を思いながらも、次、紹介はミュトスへと移っていた。
相変わらずの軽いノリで、ふにゃりと笑いながら名乗りをあげる。
「はろはろにゃちわ、ミュトスですー! はい、改めましてようこそ我が家へ、精霊知能ミュトスです。よろしくお願いしますー!」
「ミュトスも神奈川ステラコンビ同様、やるこたァ現場での実働だなァ。特にお前さんはワールドプロセッサ肝煎りの切り札だ、戦闘方面では頼りにしてるぜェ」
「とはいえくれぐれも出力調整には気をつけてくださいねー? あなたがその身に宿す三つの力は、そのそれぞれがかつて異なる世界を管理運営していた偉大なる力の欠片なんですからー」
「……はい、肝に銘じます。私を受け入れて新たなカタチ、力を授けてくださったこの世界と三つの異世界のワールドプロセッサ様方。そしてコマンドプロンプト様や先輩方のご期待に応えられるよう、このミュトスめは全身全霊を尽くしてインターフェイサーとしての役目に殉じましょう」
軽いノリから一変し、かつて魔天世界では水の女神だったことを端的に示す穏やかで厳粛な態度で誓いを示す。
精霊知能ミュトス。異世界から来て、ワールドプロセッサの手によって三界機構の力を組み込まれたイレギュラーのなかのイレギュラー。
ゆえにその身に宿す力はこの世界でも間違いなく頂点に近く、S級探査者や創造神などさえ超えてそれこそ、ワールドプロセッサやコマンドプロンプトのほうに近いほどの出力を誇る。
間違いなくインターフェイサーの、荒事方面における切り札だ……しかしだからこそその力は慎重に扱われる必要がある。
ダンジョン内のモンスターならともかく、人間や概念存在な相手に無制限振るうべきものでもないからね。ここもやはり、彼女の上司にあたる俺なりシャーリヒッタなりが手綱を握るべきものであるんだろう。
ま、人格的にも極めて穏やかで優しく、そして温厚な彼女だ。こちらの意図もしっかり理解してくれているから問題はないと思うよ。
さておき最後は俺か。ミュトスに続いて、俺も一応ながら自己紹介をば行う。前振りとして、シャーリヒッタが説明してくれた。
「最後にやっぱり総司令だ! 言わずとしれたコマンドプロンプト、山形公平様だぜ!」
「あ、はい。山形です、どうぞよろしく」
「父様は基本的に、オレ達の活動についての事前承諾や事後報告、また事件中の相談等アドバイザー的な役割に就いてもらうぜ! 御方に現場まで面倒見てもらうわけにゃいかねえ、現場はあくまでオレら現場組の受け持ちだからそこんとこよろしく!」
「力になれるならなんでもやります。現場でのことでも手が足りないとかなったら気軽にお声がけくださーい」
俺の立ち位置、総司令。文字通りの総責任者ポジションで、それゆえに基本的に現場に出向くことはまずない。
部下からの提案や報告、連絡や相談を受けて話し合うアドバイザー的な役目が主だ。
そしてもちろん、現場で起きたあらゆることについての責任を負うこともね。そこは前提だ。インターフェイサーのみならずシステム領域に関わることの、現世における責任担当が俺なんだもの。
ワールドプロセッサだけにすべてを背負わせはしない、この私コマンドプロンプトのそれが現世での立ち位置なわけだな。
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二巻
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三巻
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