ゆるゆるインターフェイサー会議のお時間

　買ってきたお土産をテーブルに広げて、なんならお茶請けとしていくつかお菓子を開けちゃったりして、俺達はひとまず軽いティーブレイクを楽しむことにした。

　駅弁とかは食べるにはまだ早い朝の10時過ぎ。窓から見える外は秋晴れ模様で、どことない寂しさを感じさせる薄い青に微かな白が混ざって見える。

　

　なんとなしそれを眺めながら、ミュトスが入れてくれた紅茶をストレートで飲みつつお茶菓子を食べる。うーん優雅。

　リーベやシャーリヒッタ、ヴァールに神奈川さんも似たように軽食を挟みつつ、次の話題へと移っていた。インターフェイサーにまつわる、重要なテーマについてだ。

　

「えーっと、そんじゃあ始めるかァ新メンバー追加メンバー誰にするんだよ討論会をよォ。白熱した議論にするぜ姉貴に妹、そして神奈川夫妻に後輩」

「加入条件を考えればそう白熱したやりとりにもならんとは思うが……あとワタシは妹ではない、どちらかといえば姉だ」

「夫妻……か。良い響きだな、ステラ」

『うん、私の千尋。いつか私が受肉したら、きっと本当の夫妻になろうね』

「ひぃん、独身女性の一人暮らしにバカップルが襲来してます……」

「うーん、物は言いようですねー」

　

　とっても愉快な精霊知能コントと言うべきか、もうさっそくシリアスのかけらもない導入。一応総隊長としてシャーリヒッタが議長を務めているわけだけど、それに続いてのメンバー達がもうゆる～い空気で喋ってらっしゃるよ。

　まあ、気持ちは分かるというか俺もそうだし。正味な話、インターフェイサーの新メンバーとかって話はどうあっても緊急事項でない時点でのんびり感漂うトークテーマなのは間違いないのだから。

　

　それでも真面目な話であることも変わりはないから、さておき俺も向き直る。隣に座るシャーリヒッタを見れば、一番やる気ある風だけれども放つ空気はゆるキャラ同然。

　アイがこの場にいたらフニャフニャになって寝ちゃいそうなくらい緩めな空間になっちゃってるね……そんななかでも彼女は元気いっぱいに議会を進行した。

　

「ひとまず現状のメンバーを言うぜ。まず総隊長はこのシャーリヒッタ様！　インターフェイサーの活動現場における総責任者であり、いわゆるチームリーダーでありキャプテンだぜ！　改めてよろしくなァ！」

「わー！　いよっ、キャープテーン！」

「合いの手入れてくれたのがメンバーその1、リーベだぜ！　かつてアドミニストレータ計画を担当していたこともあってその計画力と実行力はピカイチ、頼れるオレらのアイドルだぜー！」

「はいはーいピース、ピース！　かわいいかわいいリーベちゃんでーっす！　よろしくー！」

「なんの流れなのだ、これは」

　

　とりあえず現状ここに集まっているメンバーを、一人一人自己紹介も兼ねての点呼と確認。

　シャーリヒッタとリーベが立て続けに明るく名乗りをあげるところに、無表情のままヴァールがツッコんだ。

　まあ、こうしてインターフェイサーって枠組みで集まるのってこれが初めてだからねえ。

　ノリが軽くて生真面目なこの子には馴染みがないかもだけど、このくらいなほうが組織のカラーの方向性としては良いのかもしれないからね。

　

「そんじゃあ次はやたらノリの悪ぃお硬いヴァールだぜェ！　言わずとしれたWSO統括理事にして、先代までのアドミニストレータ達を担当していた百戦錬磨！　ちなみに表のソフィアのほうももちろんメンバー扱いだぜ！　よろしく！」

「ああ、うむ。ヴァールだ、よろしく……とはいえワタシがインターフェイサーと絡む場合は、引退するまでの数年間はやはり統括理事としての立場でのことになるだろう。引退後に正規加入ということで、今は外部協力者程度の扱いで頼みたい」

「世界一の権力者ですからね、それも100年近くもの間。こないだの東クォーツ宣言でも世界が相当動揺してますし、早々すぐの引退も難しいんでしょうね」

『アドミニストレータ計画のために現世を平定してきたんだもん、影響力は私達のなかでも突き抜けてますよね……』

　

　そんなノリのお硬いヴァールちゃんに次、話が振られて彼女も自己紹介をした。現世での立場がWSO統括理事ということもあり、今のところは外部協力者という扱いでよろしくという補足も込みでだ。

　当然の配慮だと思う。彼女とソフィアさんはシステム領域のなかにあっても特に慎重かつ丁寧な扱いをしなければならない子達だからね。

　世界を牽引してきた、本物のカリスマ。引退発表後からこっち、連日世界中で取り沙汰されているほどの影響力を保持している、世界一の政治家。

　だからこそ一言で身を引くと宣言したところで、本当に引退するまでには数年かそれ以上の時間をかけて少しずつ、準備を整えていかねばならない。

　インターフェイサーへの正式加入はそれから先のこととして、今はWSOの仕事回りや引き継ぎに専念したいというのは当然の話だ。

　ゆえにここにいる誰も異論を挟むことはない。むしろ今現在からでも外部協力者として積極的に関わりを持とうとしてくれていることを、ありがたく思うほどだよ。