名産品の多い土地は土産物選びも楽しくていいなあ
隣県の駅に到着した。予定通りに一度そこで降り、改札を出て手近な土産物屋に寄る。
こっちは観光業の盛んな県だもんで、そこかしこにお土産があれば置いてある種類も豊富と来たもんだ。選り取り見取りなのは良いけど、いざどれを買うかとなったら迷っちゃうところもあるよね。
「まあ無難に消え物……お菓子とかかな? せっかくだし抹茶系で行ってみようか」
「酒のあてみたいなのも売ってますし、ミュトスにゃそういうのも良いかもしれませんよ公平サン」
「むしろもう、直接酒でも買い与えるのが一番喜ばれそうですらあるな。ワタシはそうするか」
「うーん、リーベちゃん的には公平さんよろしくお菓子ですかねー。抹茶じゃなくてチョコとかそのへんー」
俺と精霊知能三姉妹でそれぞれ見繕う。基本はミュトスが喜びそうなものってことなのでまあ、方向性は自然と限られてくるわな。
俺とリーベはお菓子。シャーリヒッタは酒の肴。そしてヴァールはダイレクトに酒と。社会的に酒を買える年齢なのは彼女だけだからね、適材適所的なチョイスと言えるだろう。
一方でヴァールの護衛役として付き添ってくれている神奈川さんも、透明なステラとあれこれ土産を探している。
もちろん小声で、周囲に人がいないのを確認してのやり取りだ。一人でボソボソ誰かと喋るふうに見られたら、いかな度を超えたイケメンであっても不審がられるのは間違いないからね。
「うーん……ミュトスさんの喜びそうなものな。菓子だと多すぎるし、やっぱり酒だかツマミだかかな」
『あ、いっそ駅弁とかありかもだよ千尋。この際だし人数分買って、みんなであの子のお家で食べたりするの』
「おお、グッドアイデアだステラ。じゃあ適当に見繕うか駅弁。えーといろいろあるな、弁当も!」
『これはこれで迷うね、千尋』
ステラのアドバイスもあり、どうやら人数分の駅弁を買ってミュトス宅にてみんなで食べようと言うみたいだ。良いねそういうの、駅弁俺ちゃんもだーい好きだし両手を挙げて賛成だ。
駅弁コーナーを探し始める二人でお一人さん。俺も観察してばかりもいられないと、そそくさと土産用のお菓子をいくつかピックアップして手に持った。
抹茶味のクッキーに饅頭。量もそれなりで食いでがありそうだし、お茶請けなんかにはピッタリだろう。
よし、変に悩むのも時間を食うだけだしこれで良いや。見ればリーベも似たようなチョコ菓子を一つ手に持っていた。まとめて買い物かごに放り込む。
「ミュトスちゃんが好みそうなもの、というより各々が食べてみたいもの、になっちゃいそうですねー。これもお土産選びあるあるですかねー?」
「まあ、相手の嗜好はもちろん気にするべきだけど、具体的にじゃあどういうものを好んで食べるかなんて、そこまで詳しく突き詰められないのはあるかもなあ」
「なんか美味そうなの持ってきたぜ! えーっと練り物詰め合わせによく分からないけど漬物!」
「日本酒はあまり詳しくないがな。ひとまず店売りのなかで一番高いものを買ってみた。金銭の多寡など問題ではないが、観光地の売り物となれば高ければまずハズレはないものと期待したいところだ」
続け様にシャーリヒッタとヴァールもおつまみやら酒やらを手にして戻ってきた。うん、いかにもミュトスが喜びそうなものだけど、実際ミュトスの舌に合うかは未知数ではあるだろう。
この場にいない人に向けてのプレゼントである以上、突き詰めてドンピシャ好みの代物をチョイスするなんてのは難しいからね。土産物選びのそこが難しいところで、また醍醐味とも言えるところかもしれない。
と、さらには神奈川さんとステラも戻ってきた。その腕には買い物かごにしこたま入った多種多様なお弁当。
駅弁だ……しかも人数分以上ある。可能な限り買い込んだのか、結局。
照れくさそうに鼻を掻く、そんな所作さえ似合いすぎるイケメンさんは笑って言った。
「お待たせしました、みなさん……何かよさげな駅弁を人数分、と思ったんですけどどれも良さげに見えちまって。だったらもう、気に入ったものをまとめて買っちゃおうってことになりました」
「あはは、あるあるですね。駅弁ってたまにしか買う機会がないから、選ぶとなるとみんな特別に見えちゃう気はしますもんね」
「そうなんですよ! いやあ、正直ミュトスさんがどうとかより、俺個人がなんだか食べたいなって思ったものばかりになっちゃったんで恐縮なんですが。こんだけ種類を買い込めば、どれか一つくらいはお眼鏡に適うでしょうし」
「なんなら全部お気に召しそうな気もしますねー。あの子、健啖ですしー」
駅弁あるあるというべきか、どれも美味しそうすぎて選べなくなる現象は神奈川さんをも襲ったようだ。
その結果じゃあまとめて買っちゃうべとなったのは、さすがの決断力と探査者ゆえの経済力ってところだろう。
もっとも本人はミュトスの趣味に合うかどうか未知数なことに、少しばかり不安げだけどね。
リーベの言うようにそこは気にすることはない、あの子なんでも食べるからね。そこは少なからず山形家でともに生活したなかで分かりきっていることだ。
よく食べてよく遊んでよく寝るミュトスの、喜ぶ顔が目に浮かぶよ。
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