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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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180/1892

パンダもゆるキャラもリーベもいっしょよ

 ワームホールを抜けると、そこはホテルの一室でした。

 なんて、しょうもないネタを考えられる程度には、どうにか落ち着いてきた。今は命からがら、端末から逃げ延びてもう、30分は経過するかってところだ。

 

 俺を含めた全員が、部屋のソファなりベッドなりで横たわって心身を休めていた。無理もない、完全にあれは死地だった。

 三界機構に、天地開闢結界。悪夢のような光景だった。リーベが来てくれなければ、間違いなく全滅していた。そんな確信がある。

 こみ上げてくる生還への感動と安堵。俺は改めて、リーベに礼を言った。

 

「……本当にありがとう、リーベ。助かったよ、心の底から」

「どういたしましてですよー。むしろ、遅くなって申し訳ないくらいですー。何せ受肉なんて初めてですから、色々と準備に手間取っちゃいまして」

 

 俺の隣、ソファにて寛ぐリーベが、そう言いながらも俺に擦り寄ってくる。やたら距離が近い! かわいすぎて緊張する!

 なんだこいつ、リーベのくせに生意気だぞ!?

 

「んっふふー! やっと、やーっとお会いできました! 公平さん、改めましてお初にお目にかかります。精霊知能リーベ、ここに顕現しちゃいましたぁー!」

「え、あ、あ、はい。あの、山形公平、です」

「ぷふー! ちょっとちょっと公平さ〜ん、リーベのあまりの美少女ぶりに、もしかしなくてもキンチョーしちゃってますぅー? キャッハー! 脳内であんなにマスコットだペットだ言ってた公平さんがー、顔真っ赤にしてリーベを意識してるぅー! かんわゆ〜いぃ!」

「張っ倒すぞゆるキャラぁっ!!」

 

 この野郎、ちょっと戸惑ってたら青天井に図に乗りやがった! 間違いなくリーベだこのウザさ、天文学級!

 思わずリーベの両頬を摘む。何するんですかぁーなどとギャイギャイ騒ぐ姿が、脳内に住み着いていた頃と変わらぬやかましさで、俺はなんだか逆にホッとしていた。

 そうだよ。いくら見た目が超絶的にかわいくても、所詮こいつは中身リーベじゃないか。何を照れてたんだか、俺は。

 

「いやぁ、お前のギャースカを見てるとなんだか安心したなあ。いよっ、リーベ〜!」

「なんですかそれはー!? 世界に誇る究極美少女リーベちゃんを、まるでお笑い芸人さんみたいに仰って!」

「見た目と中身のギャップでウケは取れるぞ。頑張れリーベ、いつか師匠と呼ばれるその日まで!」

「何十年スパン!? んもー、照れ隠しにしてももうちょっと可愛げ見せてくださいよぉ〜」

 

 誰が照れ隠しだよ。くねくねすんな、擦り寄ってくんな!

 見た目だけはマジで本気ですごく美しいから本当に困る。勘違いしちゃいかねない。リーベだ、これはリーベ。そうだ、誰がなんて言おうとリーベなんだ。必死に言い聞かせる。

 そんな俺とリーベを見て、ベッドに横たわる香苗さんがポツリ、呟いた。

 

「何と言いますか……愉快な方ですね。システムさんの代理人というのは」

「リーベちゃん、かわいい。おもしろい。ぱんだ」

「パンダ!?」

 

 香苗さんの傍、ベッドに腰掛けるリンちゃんもリーベに対してコメントする。いや、パンダて。

 いきなりの保護動物扱いに、笹食ってる場合じゃねえとばかりにリーベが反応した。頬を盛大に引きつらせ、彼女らに抗議する。

 

「ミッチー! それにリンリン! なんですか寄って集って人のことをパンダとは!」

「え? ミッチー、え、私ですかそれ?」

「リンリン……?」

「たしかにパンダは愛くるしいですが、リーベちゃんのかわいさはむしろ、それこそ世界的アイドルとして歌って踊ってナンボ、みたいなベクトルでしょう!」

「は、はあ」

「リンリン……」

 

 いきなりハイテンションで絡んで来られると、スンってなるよね。まさに今の香苗さんがそんな感じに見える。

 リンちゃんはリンちゃんで、リーベからのあだ名を舌で転がすかのように何回も呟いてるし。

 

 マンボでも歌って踊っていてくれと思いつつ、俺は立ち上がり、香苗さんたちの隣のベッドにて休む、ヴァールへと近付いた。

 リンちゃんとの戦いで負った傷も、リーベの回復スキルですっかり治っている。とはいえ体力の消耗は激しいし、何より彼女は端末から、精神的な暴力を振るわれていた。疲れ切っているのだ。

 そっと傍にてしゃがみ、顔を覗き込む。落ち着いた様子のヴァールは、そんな俺に視線を合わせてくれた。

 

「山形公平……どうした?」

「いや、気になって。その、大丈夫か? 辛いところとか、ないか?」

「ああ、大丈夫だ。ありがとう。あなたには、助けられたよ」

 

 しおらしく、ヴァールは微笑んだ。無機質な無表情などどこにもない、普通の女の人に見える。

 ……ていうか、何か俺への態度が変わってないか? お前、じゃなかったっけ。あなた、なんて呼ばれてたっけ?

 確認すると、どこか陰のある表情で彼女は、

 

「……そのことについては、後で話そう。今はまだ、心身を休めたい。頼む」

 

 とだけ言ってくるので、まあそれもそうかと俺は頷いた。

 別に何ぞ、急ぐ話でもないだろうしね。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間7位、週間6位、月間2位、四半期1位、年間6位

総合四半期10位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[気になる点] フェイリン微妙に呼び名気に入ってない? もしくはパンダみたいと考えていたり?(動物園にいたような)
[一言] お笑いの才能ありそう
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