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攻略!大ダンジョン時代─俺だけスキルがやたらポエミーなんだけど─  作者: てんたくろー
本編

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163/1892

探査者たちはバーにいる

 さて、昼ごはんも食べたし、いよいよダンジョン探査の始まりだ。

 指定された雑居ビルへ向かう。ダンジョンが発生したのがつい一週間ほど前とのことで、元々入っていた会社さんには一時退去してもらっているとのことだった。

 つまりは完全無人。周囲はカラーコーンとコーンバーで立入禁止だよ〜、ということが示されており、何なら警備員も二名、直立している。

 

「お疲れさまです!」

「話は伺っております。どうぞ中へ」

 

 その人たちに挨拶すると、もう話が通っていたみたいでほぼ、顔パスだ。何となく恐縮しつつ中に入ると、すぐ前にエレベーターがあるので乗る。狭い。

 

「こういったところのエレベーターは、やたらと狭い印象がありますね……」

「何かそういう、取り決めでもあるんじゃないですか?」

 

 などと話しつつ地下へ。このビルは地下にもフロアが一つあり、そこにはいわゆる、バーというものが運営されているらしい。

 もちろん今は営業停止中なのだが、件のダンジョンがそのバーの店舗内にあるということなので、予めマスターキーは預かっている。経営主さんからも許可を頂いた上でのことなので、不法侵入にはもちろん当たらない。

 WSO様々である。いよっ、国際機関!

 

 店内に入ると広がる、モダンで物静かな雰囲気。

 まあ静かなのは人が一人だっていないから、なんだけど店構えを見るに、上品な空気を売りにしていそうではある。

 

「ほう……大人びた雰囲気の良い店ですね。営業が再開したら一度、ここで飲んでみたいものです」

 

 ベナウィさんがポツリと溢した。たしかに、俺は未成年なのでお酒は飲めないけど、こういう雰囲気は大人っぽくて憧れる。

 リンちゃんが首を傾げて、彼に問いかけた。

 

「お酒、飲むの?」

「ええ、まあ、人並みに嗜むくらいですがね。飲み過ぎはしないように心がけています。マリアベール様みたいにはなりたくないですからね」

「ああ……そう言えば昔に、身体を壊すまで飲んでいたとか仰ってましたね、あの人」

「おや、ご存知でしたか、ミス・御堂」

 

 驚いた風にベナウィさん。そういえばそんなこと、マリーさんが言ってたな。若い頃に飲みすぎて、もう今は飲みたくても飲めないって。

 

 そんなになるまで飲むの? 怖ぁ……って思ったよ、率直に。

 うちの家は、父ちゃんも母ちゃんも飲みはするけど、両方弱いもんだからそこまで量は多くない。だから、そんな浴びるくらい酒を飲むってことがどんなもんなのか、楽しいものなのかもあんまり分からない。

 

 身近な人で言えば……昨日、昼間から酒を飲んでた香苗さんかな。

 これまでに何度か、焼肉とかレストランとかご一緒させてもらいはしたけれど、いずれも香苗さんの車で行ったから彼女はその時、飲んでいなかった。

 思えば昨日が初めて、俺の目の前で酒を飲んだ姿なのかもしれないな。飲める口、とやらなのかな? 香苗さん。

 

「ミス・御堂は、お酒は嗜まれるのですか?」

「多少は、ですね。車移動が多いので、外で飲むことは滅多にありませんが……同期で飲み会などする際には、それなりに飲みますよ」

「そうですか。車での移動が多いと、飲まれる方には辛いかもしれませんね」

「別に、そこまで辛さを感じるほどではありませんよ……彼だって、酒臭い女は嫌でしょうし」

 

 えっ、俺!?

 唐突に話と視線が俺に来た。ビックリだよ!

 っていうか香苗さん、俺に気を遣って飲んでないところもあるんだな。昨日の紹興酒だって、一杯きりだったから特に平常と変わりなく見えたし。

 

「公平くんが成人したら、それこそ、こういうバーででも飲みたくはありますね。彼が下戸でなければ、の話ですが」

「ゲコ? ゲコゲコ、かえる?」

「お酒が飲めない人を指す表現ですよ、フェイリンさん」

「げこー……」

 

 無邪気に問うリンちゃんの頭を撫でつつ、香苗さんが言う。

 俺が成人したら、なあ。あと5年はかかるんだけど、その頃俺って、どうなってるんだろう。

 正直、予想も想像もできない。たった数ヶ月でこうまで人生変わった俺だから、もう何の予測も成り立たないようにも感じている。

 

 スキルが生えて探査者になった、以上のターニングポイントなんて中々、ないとは思うけれど。

 まあ、今とまったく変わりなくーってわけにも行かないんだろう。良くも悪くも、人は変わるって言うし。

 

 と、雑談しつつバーを進むと、ちょうど裏手の事務所の床にポッカリとした穴を発見した。いつもどおり、ダンジョンの入口だ。

 準備はまあまあ整えてあるし、フェイリンちゃんのコンディションもバッチシだ。ベナウィさんも含め、俺たちパーティはまず、互いの戦いを確認することから始めるけれど……なんでかな、うまいこと連携できる気はしている。

 

「よし、じゃあ行きましょうか」

「弐式・救世技法……必ず授かる!」

 

 俺の号令に、心を燃やすリンちゃん。香苗さんとベナウィさんも頷き、ダンジョンへと潜っていく。

 探査開始だ。

この話を投稿した時点で

ローファンタジー日間4位、週間4位、月間2位、四半期1位、年間7位

総合月間17位、四半期13位

それぞれ頂戴しております

本当にありがとうございます

引き続きブックマーク登録と評価の方、よろしくお願いいたします

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― 新着の感想 ―
[一言] なお状態異常、泥酔・酩酊などにはならない模様……5年後にはスキル自体が消滅している可能性もあるけど。
[一言] 山形君は将来酒を飲むようになるのだろうか
[一言] 探索者が2人でカウンターに座ってオセロしてるんです?
感想一覧
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