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ある日、勇者の剣を抜いた。  作者: N.ゆうり
第十三

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エピローグ沈黙の棘

 昼下がりの執務室。

 紫は次の任務の呼び出しを受け、メンバーが揃うまでの時間をやわらかすぎる椅子で潰していた。

 何気なくつけたラジオから、とある歌手の訃報と共に追悼の曲が流れる。

 耳に馴染んだ旋律に、紫は自然と声を合わせた。

 低く抑えた声で、ほんの断片だけ。

 それでも音は確かに空気を震わせ、場を静かに染めていく。

「……紫、このバンド好きなんだ。意外」

 開いたままの扉から、レイの声がした。

 自分が無意識に口ずさんでいたことに紫は驚いたが、否定はせず、ただわずかに目を伏せる。

「……あー、まぁ」

 歯切れの悪さに小さな違和感を覚えながらも、レイは追及しなかった。

「ファンなら、任務担当になれば良かったのに、運悪いね」

 今頃アサヒたちは、その歌声の主の告別式に出ているはずだった。

「……そうだな」

 その言葉もさらに意外だった。

 紫の短い返事は、さらに意外に思えた。彼女がエンタメに興味を示す姿など、誰も想像しないからだ。

「……ミーハーすぎ」

 扉の影から、焔羅が不機嫌そうな顔で現れる。扉の前で実に面白くなさそうな顔をみせ、紫を見つめる。

「こんななよなよした声の、どこがいいのかねぇ」

 語尾を嫌味っぽく伸ばしながら、紫の隣に腰を下ろした。

 ぴりつく空気に、レイは少し居心地悪そうに息をつく。

「ファンに刺されるよ……」

 軽く忠告しても、焔羅は「知ったことか」と言わんばかりの顔で返した。



 紫はその反応に気づいたのか、気づかなかったのか。

 ただ短いフレーズを最後まで口ずさみ、静かに唇を閉じた。

 ――その沈黙は、小さな棘のように三人のあいだに残り続けた。




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