第四話:宝箱の真実
息を切らしながら丘の上にたどり着いたルナは、夜光石の光がピタリと止まるのを見た。
そして、そこに立っている人物に、ルナは思わず息を飲んだ。
見慣れない、少し大人びた服。しかし、夜空を背負ったその佇まいは、ルナの記憶の中にある少年そのものだった。旅を重ね、少し大人になったアストロだった。
ルナの瞳を見たアストロは、驚きに目を見張った後、すぐに優しい笑みを浮かべた。
その表情を見た瞬間、ルナの瞳から、堰を切ったように涙が溢れ出した。
アストロはゆっくりとルナに近づき、そっと言った。
「約束を果たしに来たよ、ルナ」
そして、ルナのきらきらと輝く瞳をまっすぐに見つめ、あの日のように囁いた。
「ルナの瞳は、星の光を一番きれいに映すよ」
再会の喜びを分かち合った後、二人は宝箱を前に向き合った。
「開けてもいいの? アストロ」
「ああ。それが、僕たちの『大好き』が完成する瞬間だから」
ルナがそっと蓋を開けた宝箱の中には、夜光石と手紙。それだけだった。
ルナが「空っぽだ」と呟くと、アストロは優しく笑い、宝箱の底を指さした。
「違うよ、ルナ。中には、もういっぱい詰まっているんだ」
アストロはルナの手を取り、その手のひらを宝箱の中の空洞にそっと重ねさせた。
「この箱に詰まっているのは、目には見えない宝物だ。君が僕を想い、この村で待ち続けた一途な優しさ。そして、僕が君との約束を果たすために、星の導きを信じて旅を続けた希望。それが、僕たちの『大好き』の全てなんだ」
アストロは、夜空を見上げながら続けた。
「僕たちが交わした約束は、あの伝説の星と同じだ。もう、僕たちは離れなくていい。僕の父さんは、旅の終着点は、君のいるこの丘だと教えてくれた。これからは、二人で一緒に、夜空の星が示す未来を歩いて行こう」
ルナは涙を拭い、アストロの言葉に力強く頷いた。
彼女の瞳には、残された星と流星となった星が一つに重なり合った、新しい未来の光が宿っていた。
ルナは宝箱を抱きしめ、夜空を見上げながら、そっと呟いた。
「星はあなたの願いを聞いています。心からの願いはきっと叶います。だって、私もかなったから。次はあなたの番ですよ」
ここまで読んで頂きありがとうございます。
ルナとアストロのきらきらした物語楽しんで頂けましたでしょうか?
いつもは、異世界恋愛ロマンス小説を書いています。
現在、【お飾りにされた方、お飾りの婚約者をお待ちしております】連載中です。
太陽の聖女と月の騎士の物語です。
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