第二話:待つ優しさ
「空高く輝く星に、遠い未来を思い描いたことはありますか?」
アストロが村を去ってから、六年の月日が流れた。
ルナの住む小さな村は、高い山々に囲まれ、その閉鎖的な空気は変わらなかった。
ルナは村の生活が嫌いなわけではなかったが、外の世界への憧れは、あの夜の約束とともに、彼女の心の中で生き続けていた。その憧れは、誰にも言えない大切な秘密だった。
アストロがいなくなってからも、ルナは毎晩、丘の上へ向かい夜空を見上げた。
ルナは、自分が伝説の「残された星」なのだと信じていた。
どんなに時間が経とうとも、どんなに村の日常がその日を忘れさせようとしても、ルナの瞳だけは、流星となって旅立つ星の帰りを、静かに、そして強く待ち続けた。
彼女の瞳がきらきらと輝くのは、あの日の約束が、その光の中に生き続けている証だった。
宝箱は、ルナの部屋の隅に置かれたまま、一度も開けられることはなかった。
中には、夜光石と再会の手紙が入っている。それは、ルナの一途で優しい心を支える、唯一の道標だった。




