第一話:秘密の時間
夜空の下、村から少し離れた丘の上。そこは、ルナとアストロだけの秘密の場所だった。
ルナは、隣に座る少し年上のアストロを見上げる。
旅人の息子である彼は、父である天文学者から教わった星の知識に満ちていた。
ルナは、常に旅をするアストロが語る外の世界の話や、星の伝説が大好きだった。村の大人たちがよそ者である彼らに距離を置く中で、ルナの瞳だけは、アストロの話を聞いている時、夜空の光を映してきらきらと輝いた。
「あのね、アストロ。私も、いつかこの村を出て、あなたが話してくれるみたいに、世界中を旅してみたい」
アストロは、ルナの輝く瞳を優しいまなざしで見つめた。
「ルナの瞳は、星の光を一番きれいに映すよ。まるで夜空に残された星みたいだ」
その言葉にルナは少し寂しくなった。アストロがもうすぐ村を去ることを知っていたからだ。
ルナは、彼が語ってくれた星の伝説を思い出す。
遠い昔、二つの星が離れ離れになっても、片方が流星となって必ず会いに行くという、切なくも優しい物語を。
「私が、待っている星になるね」ルナは決意を込めて言った。
アストロは静かに頷き、自分のポケットから、夜光石と一枚の手紙が入った小さな木の箱を取り出した。
「これは、僕が大切にしていた宝箱だよ。中には、僕たちの『大好き』が、いっぱい詰まっているんだ。大きくなったら開けてごらん。その時が、きっと僕たちがまた会う日だ」
それが、二人が交わした、遠い未来の再会を誓う、最も大切な約束だった。




