#316 登校時のハプニング
はーい!登校Any%RTAはーじまーるよー!
今回のRTAの計測区間は自宅での登校準備から総明高校にある自席に着席するまでの区間を計測するぞ!
本RTAにおけるレギュレーションは自家用車の使用禁止! そもそも持ってないから禁止にしてるだけだけどね! その他には制限無いから取り敢えず遅刻だけはしないように焦らず走っていこうね!
さーてさて! RTAの一番最初に待ち受けているのはエナドリ補給!
昨日徹夜でゲームしたからここでエナドリを補給しとかないと間違いなく授業全部爆睡する事になるからね! そもそも思考回路がまともにならなくて登校準備に大幅なタイムロスが生じてしまうぞ! どれぐらいのスピードで給油出来るかに全てが掛かっていると言っても過言じゃないね!
さあさあ、早速冷蔵庫をオープン・ザ・ドア! 予め買い溜めて置いているエナドリを取り出し…………
◇
「嘘だろ……? 在庫を切らしてる、だと……!?」
はい初手大ガバ再走決定! なんか既視感あるなぁ……。
というかおかしい、確かにアガレスの大穴に挑戦する前はまだ一本だけ残っていた筈なのに……。
「あ」
そうだ、10階層でデスワさんと戦った後、徹夜するからって事で一度休憩がてらエナドリ補給したんだった……マジで忘れてた……。
チャートはちゃーんとしておけってあれほど先駆者の皆々様が口酸っぱく言っていたというのに……なんという不覚。
「うごごご…………糖分が、糖分が足りない…………」
クソ、エナドリが無いと分かった途端急激に眠気が来たぞ。取り敢えずガバの穴埋めとしてプリンでも食べて何とかしよう……。うん、糖分は補給出来たけど眠気は一切変わんねえや。当然っちゃ当然か。
「だ、だるい…………」
全身を包む気だるさのあまり、ぐでぇとだらしなくテーブルの上にへたり込む。
VRの特性上肉体的な疲れはあまり生じないが精神的な疲れの方がきつい。取り敢えず自宅から出る予定時刻まで後十分ある、取り敢えず速攻で着替えて学校の準備をしなくては遅刻する……。
「あ、寝れるわこれ」
駄目だ。ちょっとだけ楽な体勢になったら一気に眠気が加速してきた。あ、ダメダメ寝れる寝れる寝ちゃう寝ちゃうああああああ……………。
◇
「ふわ……」
襲い来る睡魔にあくびを漏らしながら、唯は渚の部屋のインターホンを鳴らす。
結局、彼女は一晩中【エクスポイズン・ギガイーター】に挑み続けたが、一度も勝利出来ずに終わってしまった。だが、ただやられ続けた訳では無く、出来る限りの情報収集に努めていた。
次回挑戦時は撃破とまでは行かずとも良い所までは行くだろう……そう確信しながら。
「あんまり攻略が遅いとムーちゃんが怒っちゃうかもだけど……」
当の本人(龍)が聞いたら怒りそうな愛称で呼ぶ唯は、たははと苦笑いする。
実際、本来であればもっとゲームが進行してから遭遇するクエストをかなり前倒しで引き受けてしまったので、スムーズに攻略出来なくて当然だ。それを向こうが理解してくれているのかどうかは置いといて。
「そうだ。渚君にもアドバイスを貰おうかな」
【二つ名レイド】でエクスポイズン・ギガイーターと戦闘した経験を持つ渚なら的確なアドバイスが貰えるかもしれない。他言厳禁という異質な内容のクエストだが、リアルでぼかしながら伝える分には問題ないだろう……そう思いながら、渚が出てくるのを待つ。
だが、インターホンを鳴らしてから1分が経過しても、一向に出てくる気配が無かった。
「……渚君、まだ寝てるのかな?」
バスに乗らないといけないので少し余裕をもって出てきてはいるが、インターホンを鳴らしても反応が無い所を見ると、まだベッドで寝ている可能性もある。
一応電話を掛けてみようか悩みつつドアノブに触れてみると、鍵が開いている事に気付いた。
「あれ? 開いてる……? 鍵かけ忘れたのかな……?」
そのまま玄関のドアを開けて、恐る恐る渚の家へと入る。
「お、お邪魔しまーす……」
勝手に入るのは悪いと思いつつも、本人からは何かあったら勝手に入っていいという風に言われているので、靴を揃えてからリビングへと歩いていくと……。
「し、死んでる!?」
そこには、リビングのテーブルに対し、直角に突っ伏して爆睡している渚の姿があった。
大慌てで唯は渚が生きているのを確かめた後、何とか彼を起こして学校へと向かったのだった。
◇
大急ぎで着替えた事で、何とかバス到着前にバス停に辿り着いた二人。
「ごめん紺野さん、本当に助かったわ……」
「取り敢えず起きてくれて良かったです、本当にびっくりしたんですよ……?」
申し訳なさそうに頭に手を当てる渚に、心配した様子の唯が窘める。
「いやー、リビング側の空調効かせて無くて、部屋が結構蒸し暑かったんだよね。そしたらテーブルがひんやりしてて意外と気持ち良くてさ……」
「にしてもあんな体勢で寝てたら身体悪くしちゃいますよ。気を付けて下さいね」
「面目ない……」
そう言いつつ、くぁ、と何度目か分からないあくびをする渚の様子を見て、唯は首を傾げる。
「徹夜でゲームしてたんですか?」
「ついさっきまで厨二と一緒に【アガレスの大穴】攻略してたんだよ。取り敢えず区切りの50階層まで攻略出来たから急いでログアウトしたんだけど、流石に眠気には勝てんかった……」
「凄い、まだ50階層って攻略されて無いんじゃないでしたっけ?」
「多分ね。ライジンの奴もまだそこまで行けてないっぽいし、俺と厨二が最速なんじゃないかな。ま、とはいっても100階層までは最低でもあるっぽいし、通過点に過ぎないんだけどな……」
もう既に先の事を考えている渚の様子を見て、唯は凄いなあと笑みを浮かべる。
そんな彼女の顔をじっと見ていた渚は、僅かな疲れを感じ取って問いかける。
「紺野さんも大分お疲れみたいだけど、もしかして紺野さんも結構遅くまでゲームしてた感じ?」
「実は私も殆ど寝てなくて……」
「そうだったのか。例のクエストやってた感じ?」
「ですです。ただ、全く勝てなくて全敗でした……」
「ソロ限定って言ってたもんなあ、助力しようにもアドバイスぐらいしか出来ないな」
「丁度その事でアドバイス貰おうと思ってたんです。バスが来るまでちょっと色々聞いて良いですか?」
「俺なんかのアドバイスで良かったら幾らでも」
それから数分間、バス停で談笑をしていると、バスが時間通りに到着する。
一度話を切り上げ、バスに乗り込んでから二人が座れる席へと向かった。
「隣、どうぞ」
「ん、ありがとう」
唯が先に奥に詰めると、隣の座席をぽんぽんと叩く。
渚は唯の隣に腰掛けると、背負っていたリュックを膝の上に乗せ、中からスポーツドリンクを取り出して口を付けた。
「本当に暑いですねえ」
「だなー……やっぱクーラーが効いた部屋でずっとゲームしてたいわ……」
「ふふ、同感です」
ペットボトルを締めながら、ため息をこぼす渚に唯も頷く。
冷蔵庫でキンキンに冷やしておいたスポーツドリンクの心地よさと、空調の効いたバス内の丁度良い温度に目を細める渚。バスに無事乗れて安堵した事もあり、次第に視界が暗く染まっていく。
「さっきの続きなんですけど、丁度装備を新調しようかなと思っ、て……」
次の瞬間、こてん、と渚の頭が唯の肩に倒れ込んだ。何が起きたのか分からない、とばかりに唯はまるまる10秒硬直したが、状況を理解した瞬間に顔が真っ赤に染まった。
「ななななな、渚君……!?!?」
「…………ん……」
公共の場ではあるので小声で動揺していると、唯の声にくすぐったそうに肩を揺らす。
徹夜でゲームし続けたという事もあり、ものの数秒で熟睡してしまった渚におろおろする。彼女自身もかなり眠気を感じていたが、思い人が自分の肩で寝てしまうというハプニングにより一瞬で眠気が吹き飛んでしまっていた。
「ど、どうしよう…………」
彼が後で罪悪感を感じないように戻してあげるべきか、それともこのままの状態で居させてあげるべきか。
「んん~~~~!!!」
唯自身の理性と欲望を天秤に掛け、考え込む事十数秒。
両手に込めていた力を緩め、一つ息を吐いて。
「渚君は疲れてるんだもんね。……うん、だから仕方ない」
唯は自身の欲望へと天秤を傾けた。
「……役得、という事で」
そう言い、唯もまた、寄り添う渚に少しだけ体重を預けるのだった。
懐かしのネタ。
一応貴方達以外にも通学してる学生が乗っているんですが大丈夫そうですか?(真顔)




