60.ハワイ攻撃作戦
昭和16年(1941年)1月 東京砲兵工廠
「それでウェークとミッドウェーの制圧は、順調なのか?」
「ああ、第1と第2機動艦隊の支援を受けて、それぞれ制圧した。今は工兵隊も入って、要塞化を進めてる」
「そっか……そうなると次は、ハワイ攻撃だね」
「ああ、ボッコボコに叩いて、しばらく使えないようにしてやる。後は潜水艦でシーレーンを締め上げれば、そうそう復旧もできないだろう」
「アハハ、まあ、占領するほどの余裕はないから、そうするのがベストだろうね」
「せやな。そしたらルーズベルトは、どんな顔をするんやろな?」
「めっちゃ悔しがるだろう」
「いやいや、下手すると、倒れるんじゃねえ」
俺たちはまた砲兵工廠に集まり、戦況を確認していた。
日本海軍は先のマリアナ沖海戦での消耗を補充し、すでに次の作戦に移っていた。
それはまず、アメリカ軍の支配するウェーク、ミッドウェー両島を占領することだった。
幸いにも第1、第2機動艦隊はあっさりと両島を攻略し、次のハワイ作戦に備えて、ミッドウェー近海に集結しつつあるという。
いずれはハワイを強襲し、その基地機能を大きく削り取る予定だ。
対するアメリカは、現状でも10隻近い戦艦を持っているし、空母も3隻ある。
しかし大西洋にイギリスとドイツ、イタリアという敵を抱えている以上、その全てを太平洋に回せるはずもない。
その隙を突いて日本は、ハワイを蹂躙するのだ。
その衝撃はアメリカ国民を震え上がらせるのに、十分だろう。
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昭和16年(1941年)2月 東京砲兵工廠
そして2月になると、ハワイ攻撃が始まった。
まず6隻の空母を飛び立った戦闘機群が、数機の”彩雲”に導かれてハワイに到達。
迎撃に上がってきたアメリカ軍機と、正面から殴り合った。
アメリカは可能な限りのP39、P40、F4Fなどを、ハワイにかき集めていた。
その総数は実に400機にものぼったが、日本側も負けていない。
やはり400機近い97艦戦と、レーダー付き彩雲の指揮管制により、戦闘を優位に進めた。
基本的に97艦戦の方が性能は上だし、搭乗員もマリアナ沖海戦などで鍛えられている。
そのうえで組織的な空戦を繰り広げたのだから、負ける要素は少なかった。
さすがに数十機の被害は出たものの、敵航空戦力をほぼ駆逐してのける。
ちなみにこの時、アメリカ艦隊は何をしていたかというと、西海岸の主要港湾を警備していた。
本来なら全てをハワイに集め、敵わないながらも、日本艦隊と戦わせるべきだったろう。
しかし西海岸の世論が、それを許さなかった。
すでにウェークとミッドウェーが陥落したことは、アメリカで知れ渡っている。
もし日本軍に攻められたらという恐怖心が、西海岸に充満した。
その結果、国民の声を無視できない西海岸の政治家が、軍艦の配備を要求し、もったいないことに分散配置されてしまったのだ。
ルーズベルトとしても、やりきれない思いであっただろう。
彼は昨年の大統領選挙に勝利し、今もホワイトハウスの主ではあるのだが、マリアナ沖海戦の大敗によって、足元が怪しくなっていた。
おかげで強い指導力を発揮することもできず、反撃のチャンスを失った形だ。
そしてハワイの航空戦力が排除されると、いよいよ地上施設の攻撃だ。
出せる限りの艦攻・艦爆に加え、97艦戦も爆弾を抱えて、軍事施設を攻撃した。
その攻撃は何度も繰り返され、ハワイ各地にある空港、港湾施設、造船ドック、重油タンクなどが、破壊されていく。
当然ながら、それは航空攻撃に留まらなかった。
第1・第2機動艦隊から分離された戦艦・重巡部隊が、ハワイに接近し、砲撃を実施したのだ。
金剛型の14インチ砲と、長門・大和型の16インチ砲が、無数の砲弾を撃ち放って、ハワイの大地をえぐる。
32門の14インチ砲と、54門の16インチ砲から吐き出された砲弾は、実に5千トンにものぼった。
その圧倒的な暴力は、アメリカ軍人とハワイ住民を、大きく打ちのめしただろう。
一方、空と陸の戦いの陰で、海中の戦いも繰り広げられていた。
ハワイに集められていたアメリカ潜水艦が、日本艦隊に攻撃を加えるべく、動いていたのだ。
敵潜水艦は静かに海中に潜み、そして果敢に攻撃しようとした。
しかしすでにマイクロ波レーダーを実用化している日本艦隊に、それは通じない。
敵潜水艦が潜望鏡を海上に出した時点で、日本艦隊はそれを察知し、即座に動きだす。
日本版のヘッジホッグが火を噴くか、対潜航空機の爆弾によって、アメリカ潜水艦は追い詰められていく。
もちろん、その全てが命中するわけではない。
それどころか敵の魚雷発射を許し、逃亡されることもあった。
しかし主力艦の被害は皆無であったし、20隻以上の敵潜水艦が沈没・損傷したそうだ。
その熾烈な戦いを生き延びたアメリカ潜水艦は、ほうほうの体で西海岸へ逃げ帰った。
そしてその代わりにハワイ近海に入りこんだのは、日本の潜水艦である。
ミッドウェー島を拠点とする新型、旧型の潜水艦、50隻あまりが、ハワイ近海へ押し出したのだ。
今後、日本は西海岸ーハワイ間での無制限潜水艦作戦を宣言し、敵のシーレーンを締め上げる。
それは国際法的には違法であるものの、アメリカがすでに日本に対し、やっていることだ。
ならばその報いを、受けさせてやろうではないか。
その攻撃は即効性はないものの、確実にアメリカ国民の厭戦気分を高めるであろう。
そして俺たちは、一日も早く停戦に持ちこむため、どんなことでもやってやるつもりだった。




