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未来から吹いた風 ~5人でひっくりかえす太平洋戦争~  作者: 青雲あゆむ
第3章 昭和編

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39.日本陸軍の状況

昭和6年(1931年)5月


 海軍の角田中佐と山口中佐と話してから、軍人との接触を増やそうと考えるようになった。

 ここでちょっと、帝国軍の状況を見てみよう。


 まず陸軍だが、日露戦争後に軍縮を実施し、平時は13個師団体制を維持している。

 一応、さらなる軍縮も検討したのだが、第1次大戦で列強の一角として認知された以上、これ以上減らすのはまずいと考えた。


 これでも史実の21個(1915~1925年)よりはだいぶましだし、日本経済は大きく成長しているので、さほど負担でもない。

 もちろん、平時でもそれなりの採用数を維持し、いざという時の動員にも対応できるよう、配慮はしている。


 そして1931年といえば、日本を日中戦争に引きこんだ、柳条湖事件が史実で発生した年だ。

 さらにいえば、28年には張作霖爆殺事件も起こっており、日本は太平洋戦争への道を、走りはじめた時期なのだ。

 しかしこの世界では、そんな雰囲気は微塵もない。


 なにしろ日露戦争後に、即行でアメリカを巻きこんで、満州(清国)への干渉を控えてきたのだ。

 さらには関東大震災からの復興を理由に、旅順や大連からも撤退した。

 さすがに満鉄の従業員を守るため、退役軍人による警備隊は置いているが、それも中隊規模にすぎない。

 おかげで満州で陸軍が策動する余力もなければ、その動機もないのだ。


 そもそも史実で陸軍が満州で暴走しはじめたのは、国民と陸軍内に鬱積した不満が背景にあった。

 まず陸軍は1925年に、4個師団を減らす軍縮を実施し、多くの者が首を切られたり、給料を減らされていた。

 おまけに1927年には昭和金融恐慌が発生し、政府は国民の信頼を失ってしまう。


 これらの不満が満州へ向かい、そこを実効支配しようとしたのが、柳条湖事件であり、その後の満州国建国なのである。

 そして柳条湖事件は、石原莞爾いしはらかんじ中佐と板垣征四郎大佐が主導したが、陸軍中枢にもその支持者は多かった。

 ある意味、起こるべくして起こった事件であり、単純に誰が悪いと言うのは難しい部分がある。


 しかしこの世界では、日露戦争後も継続的な経済成長が続いていた。

 それによって国力は増大し、国民の生活はかなりマシになっている。

 そのため政府は国民の信頼を失っておらず、さらに軍部を指揮下に置くことにも成功している。


 あいにくと軍人の出世スピードはゆるいものの、物価の上昇に合わせて、多少は給料も調整されている。

 しかも軍を辞めても、いくらでも仕事があるのだから、不満は相当に少ないのだ。

 まさに経済成長こそ正義、である。


 そんな陸軍が普段は何をしているかというと、日々、訓練と戦訓の見直しに明け暮れている。

 どんなに平和な期間が続いても、来たるべき戦いに備えるのが軍隊である。

 そして現在の日本陸軍の主敵は、やはりソ連軍だ。


 幸いにも清国と正統ロシア大公国が間に入り、直接国境を接することはないが、いかんせん両国は弱い。

 1億人ちかいソ連の侵攻を受ければ、ひとたまりもないであろう。

 そこで日本は清国、正統ロシア、そして韓国と同盟を結び、防衛体制を整えている。


 ちなみに各国の人口規模は、だいたいこんな感じだ。


清国      :3000万人

正統ロシア大公国:1000万人

大韓帝国    :1700万人

大日本帝国   :6500万人


 人口規模からしても、工業化度からしても、頼りにされるのは日本である。

 史実と違って、宥和政策を取っていることもあって、今のところは上手くやれている。

 それでも油断は禁物なのだが、共通の敵を持っているというのは大きい。


 そのため陸軍は、清と正統ロシアへの技術供与や物資援助により、大陸側の守りを強化することに取り組んでいる。

 さらにはいざという時、いかに迅速に兵を大陸へ輸送できるかということも、熱心に研究していた。


 だからといって、太平洋側は無関係というわけでもない。

 太平洋側には南洋諸島があり、いざという時には防衛戦も考えられるのだ。

 この南洋防衛について、陸軍は海軍と協働していた。


 そんなの当たり前だと思うかもしれないが、史実ではそれが全くできていなかったのだ。

 日露戦争の旅順攻略でもあった、”海軍の領域には、陸軍はいっさい手を出すな”、というあれである。

 おかげで史実では、島嶼防衛の計画がろくにできておらず、要塞の建造も泥縄式だった。


 もしも戦前から陸軍が関わっていたなら、もっと有効で効率的な抵抗ができただろう。

 まあ、陸軍の方も、”大陸側には、海軍は手を出すな”、と言っていたのだから、お互い様なのだが。

 昭和の帝国軍は、本当にいろいろな意味で、ダメダメである。


 それはさておき、陸軍も島嶼防衛には協力し、その計画を練っている。

 ただしワシントン条約で、南洋諸島の要塞化は禁止されてしまったので、あくまで計画である。

 各重要拠点を調査・測量し、いざという時に迅速に建設できるよう、計画を立てた。

 それには最近、国内でも普及しつつある建機を、大量に使うことも、もちろん考慮されている。


 それから陸軍部隊の機械化も、徐々に進展中である。

 なにしろ25年も前から、自動車産業の育成に努めてきたのだ。

 その技術力は史実より格段に進歩し、性能や信頼性も高い。


 あいにくと日本にはまだ中流層が育っていないので、大規模な市場は形成されていないが、官需はそれなりに順調である。

 師団数が少ないのもあって、各隊の機械化率は、着実に上昇している。

 移動用にバイクやジープのような高機動車も導入されているし、戦車の開発にだって、取り組んでいるのだ。


 そして銃砲についても、佐島の支援で装備更新が進んでいるので、その戦闘力は決して侮れない。

 この世界の陸軍は、確実に強くなっていると思う。


 ちなみに航空隊も順調に拡充されているが、海軍もまとめてやるのは、さすがに手狭になってきた。

 そこで海軍にも航空隊を設立し、独自に作戦を立てることが可能になっている。

 ただしバラバラに開発をするのは非効率なので、開発部は陸軍側に置き、海軍はそこへ注文を出すような形にした。

 おかげで海軍は不満そうだが、史実で起きたムダは、だいぶ軽減されている。


 このようにして陸軍は、来たるべき事態に備えている。

 その努力は決して裏切られることはないと、信じたいものである。

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それゆけ、孫策クン!の改訂版を投稿中です。

それゆけ、孫策クン! 改

がっつり校正して、ストーリーも一部変更予定です。

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