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第十七話 待ち望んだ便り

「もう……無理だ……」


「何言ってるの? まだまだ稽古始めたばかりじゃない! あたしより年上のくせに先にへばってどうするのよ!」


「そうじゃぞ? 強くなるならこれくらいのことで泣き言言うでない」


「あっ悪魔だこの二人……」


 毎朝ワシとアンナ、マイクの3人による稽古で、いつも一番最初に泣き言を言い始めるマイク。

 情けないのう。

 3人の中では一番年上じゃというのに。


「無茶言うなよ……いくら年上でも俺は君たち二人ほど強くないんだからな……」


 空き地での勝負以降、月の盃亭にはアンナが毎日やって来るようになった。

 彼女いわく宮殿で一人で稽古をしているよりワシらとやった方がはるかに効率的だからとのこと。

 上司であるギルフォードがどう思っているのかとそれとなく聞いてみたが、向こうは渡りに船とばかりに彼女を送り出してくれるらしい。


「閣下にしてみればこれでケガをする兵士の数も減るから、あたしの相手をしてくれる人が出来て楽になったと思ってるんでしょ?」


 というのがアンナの弁。

 いやまぁワシとしても歯ごたえのある稽古相手が出来たのじゃから嬉しいのは確かなんじゃが……。

 それでいいのかギルフォード?


 地面に寝転んで動かないマイクの隣で、ワシとアンナはやれやれと腰を下ろす。


「仕方がない。マイクの体力が戻るまで少し休むとしようかのう」


「もう、しょうがないわねえ」


「たっ助かった……!」


「疲れが取れたら稽古再開じゃからな?」


「助かってない!?」


 その後、再びの稽古で完全にへばって動けなくなったマイクを残し、ワシとアンナは汗を拭きつつ月の盃亭へ戻る。

 ミランダから出された冷たい水を飲みながらお互いの動きについて熱く論議を交わしていると、唐突に青い制服を着たギルド職員がやってきた。


「すみません。ファルコさんはいらっしゃいますか?」


「おう、おるぞ」


 名前を呼ばれたワシが手を上げる。


「ああ、よかった。ギルドマスターがあなたにお話があるということで、ぜひギルドに来てほしいとのことです」


 ほほう、フランクがのう。

 果たしてどんな話があるのやら……。


 ワシは宮殿に出仕するというアンナと別れ、一路ギルドへと向かう。

 

「ファルコじゃ。ギルドマスターのフランクから話があるということで来たんじゃが」


「ああ、承っています。少々お待ちください」


 受付に話を出すと、女性職員は頭を下げてフランクの部屋へと入っていった。


「ギルドマスターは中でお待ちです」


 出てきた職員に案内されたワシは部屋へと入る。


「やあ、久しぶり。アンナとの勝負はどうだった?」


「久しぶりに血がたぎったわい。あれほどの槍の遣い手そうはおらぬぞ? お互い真剣に何度も剣と槍を交えて白熱した勝負であった」


「へえ、ギルフォードの話じゃ木剣で彼女に勝っていたらしいし、腰の剣も最後にちょこっと抜いただけって聞いたけど?」


 むっ、しまった。

 ちと余計な一言をしゃべってしまったかのう。


「そういえば少し前に、君のいる月の盃亭の近くにある空き地がめちゃくちゃになっていたって話があったね。住民の通報によると、どうも夜にそこで剣を持った男性と槍を持った女性が戦っていたらしいけど……」


「それがどうかしたのかのう? ワシには何のことかサッパリじゃわい」


「……ふふっ」


 フランクは意味ありげに笑みを浮かべる。


 ……どうやら向こうは完全に察しておるようじゃの。


「それよりもフランク。ワシに話があると聞いてわざわざやってきたのじゃが? 一体どんな話なのかのう」


「おっと、そうだったね……いよいよ帰ってくるよ。カインくんが」


「……——! なんと!?」


 ようやく戦う時が来たのか、双剣のカインとやらと!


「昨日連絡があってね。未探索地域の調査を無事終え、帰還するとのことだ。おそらく3日後くらいにはここに戻ってくるだろう」


「ほう! 楽しみじゃのう!」


「一応彼には君と戦いたいっていう人がいるから、帰ってきたら相手をしてあげてほしいと返事を送っている。後は向こうの様子次第だね」


「いっそのこと、ワシがカインのいる所まで出向いて戦ってもええんじゃが?」


「それは可哀そうだからやめてあげて……彼は今まで依頼にかかりっきりだったんだから、帰ってしばらくは休ませてあげてほしい。君だって万全の状態のカインくんと戦いたいだろう?」


「むう……」


 それを言われるとワシも反論しづらいのう。


「そういうわけだから。カインくんが帰ってきて君の挑戦を受けるかどうかの返答を聞き次第、また君に連絡するよ」


「分かったぞ」


「僕としてもできるだけ説得するけれど、もし勝負を受けないと断ってきても怒らないでくれよ。あくまで受けるかどうかの判断はカインくんにゆだねられているんだから」


「……分かった」


 ワシとフランクはしばらく歓談した後、ギルドを出て月の盃亭への帰ることにした。


「さて……いよいよ本命の相手との勝負じゃ。帰ったらまたマイクと稽古の再開じゃのう!」


 来るべき相手との勝負に向け、ワシの心は燃え上がるばかりだった。

これから毎日投稿頑張っていきます!


もし面白いと思っていただけたら、各話の下にある☆☆☆☆☆をぜひ★★★★★にしてください!


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