第十五話 再戦
すみません……仕事と私用で投稿が遅れてしまいました……申し訳ありません。
「なんじゃ、わざわざワシを追っかけてここまで来たのか。難儀な奴じゃのう」
「うるさい! 今まで負け知らずだったあたしが敗れっぱなしじゃいられないの! 三度目の正直よ! 今度こそ勝ってみせるわ!」
「二度あることは三度あるともいうがのう……」
「くっ! そんなことよりあたしの再戦を受けなさい!」
やれやれ、気の強い娘なことじゃ。
「よかろう、じゃが人の往来があるこの場所ではまずかろう。向こうに空き地があるからそこでやるとしようか」
すでに周りでは何事かと足を止めてこちらを眺めている人がちらほら。
さすがにここで一戦交えるのは無理じゃ。
「いいわ、そこに連れて行きなさい」
アンナは少し考えた後、顎でしゃくってワシに案内を指図してくる。
昼間の醜態を見せてなおその態度に少々辟易はしたが……。
ふふふ、狙い通りの展開。
このアンナという娘がこうすることはワシの読み通りよ。
こういう気の強い娘は煽れば煽るほど激しく対抗心を燃やすもの。
きっとワシに再戦を申し込んでくると思っておったわ。
じゃからこそ宮殿では剣技を使わず、わざと手を抜いて戦ったのじゃ。
さすがに彼女の上司など、衆目があるところで本気の勝負はまずいからのう。
「こっちじゃ」
アンナを引き連れワシは宿屋から少し離れた空地へと向かう。
空き地は通りから外れた場所にあり周りには住居などもない。
なので少々騒がしい音を出しても問題なし。
街灯も設置されているのでそこまで暗くもなく、戦うにはうってつけの場所である。
「着いたぞ」
目的の場所へと着いたワシとアンナ。
互いに得物を抜き、間合いを取る。
「さて、始める前に一つ聞きたい」
「何よ?」
「お主はなぜ強くなりたいのじゃ?」
「……女でも強くなれるってところをみんなに見せたいからよ」
「そうか……」
もう少し話をしてみたいところじゃが、これ以上は戦いが終わってからじゃな。
「行くわよ!」
昼間と同じく、先手はアンナ。
だが今度はより精度に重きをおいた突き。
速度は遅いが間隔をずらして回避しにくくしたり、攻撃の合間に振り払いや叩き落しなどを駆使してこちらを狙い続ける。
「やるのう!」
ワシは剣で槍をさばきつつ間合いを近づけようと踏み出すが、アンナはそれをさせじと槍を小刻みに振り回す。
しばらくはアンナの攻勢にワシが対応する流れが続いた。
「昼間は完全にあなたを侮っていた……今度はもう絶対に慢心はしない!」
「その言葉や良し! さあお主の力を見せてくれ!」
火花が散り、砂埃が舞う。
アンナが攻め、ワシが受ける、
そんなお互い決め手に欠いた戦いが続く中、唐突にアンナが叫んだ。
「この技は使うまいと心に決めていたけれど……あんたに勝つにはこれしかない! とっておきの奥義を見せてあげる! はぁぁっ――!」
後ろに飛びのいて間合いを取ったアンナから大量の魔力の気配。
槍からは炎が揺らめき、身体からも赤いもやが出始めた。
「『赤雷』!」
アンナから槍の一撃が放たれる。
「ぬお!」
まさに雷のごとく、ジグザグの軌道を描きながら槍が一直線にワシの胸元へ。
『絶槍』とは段違いの速さに、なんとか剣で弾いたが体勢を崩してたたらを踏んでしまう。
「ふう……今まで見たことのない技じゃな」
「そりゃああたし独自の技だからね。実戦でも見せたのは1度だけよ」
「なんと――!?」
まだ若い娘というのに自分だけの技を編み出しているとはのう……。
やはり時が進めば新たな強者は生まれるものじゃな。
「言っておくけど、『赤雷』の真価はこれだけじゃないわ!」
アンナが槍を再び構えた途端その姿がかき消え、直後目の前に槍の穂先が迫ってきた。
「むっ!?」
剣を振り上げ、槍を弾いたがアンナの姿は捉えきれない。
周りを高速で駆けまわる槍の炎と赤いもやがかすかに目に映るだけ。
「その若さで恐ろしき強さよ……」
剣を握る手には汗がつたう。
ここまで胸が熱くなる勝負は久しぶりじゃ……。
今この瞬間ほど女神に感謝の祈りを捧げたいと思ったことはないわい。
その後も背後や側面から鋭い槍の一撃が飛んでくるのをワシはなんとか受け流し続ける。
「さあ! そろそろ終わりにするわよ!」
周囲からアンナの声が聞こえた瞬間、トドメとばかりにほぼ同時にあらゆる方向から槍の一撃が飛んでくる。
「むんっ!」
とっさに魔力を放出して攻撃を弾き飛ばし、アンナの動きを止めた。
「なっ!?」
「今じゃ! 『土竜剣』!」
ここが攻め時とワシはすかさず魔力を剣に込め、地面へと突き刺す。
たちまち地面に亀裂が入り、陥没や隆起で空き地全体が激しく揺れ動く。
「なんて奴なの!? 地面をデコボコにしてあたしの動きを止めるなんて!」
「人間、まっ平らな土地でなければ上手く走れるものではないからのう」
「それでも!」
不安定な足場の中、アンナが燃える槍を突き出す。
だが先ほどまでの速度はなく、たやすく槍を弾いた。
「くっ!」
「これで終わりじゃ!」
飛ぶように地面を駆け抜けてアンナの懐へもぐりこみ、剣の腹を振りぬく。
「ぐふっ!」
そのまま軌道を変え、アンナの首筋に剣を突き付けた。
「ほれ、またワシの勝ちじゃ」
「……参ったわ」
アンナは膝をつき、槍を手放す。
「ふう……紙一重であったがどうにか勝てたわい」
「2度ならず3度も負けるなんて……もう一度基礎からのやり直しね」
「その強さなら、次戦ったときは危ういかもしれぬのう」
「よく言うわよ。あたしの目ではあなたまだまだ余力がありそうだったけど?」
「いや、お主の速度はなかなかのもの。それ以上に速くなられるとこちらとしても対処が難しくなるわい」
戦いを終え、お互いを称えあっていると周囲が騒がしくなってきたことに気づく。
「まずいのう。いくら周りに住居がないとはいえこれほど暴れていたら人が来るのもやむなしか……」
「あなたが空き地をこんな風にしたのだから当然よね」
「とりあえずワシの宿屋までついてくるがいい。お主も少し休んでいくべきじゃ」
「お構いなく…・・と言いたいけどさすがにあなたの一撃は身体に結構応えたからね。お言葉に甘えるとするわ」
こうしてワシとアンナは人々が集まる前に空き地を後にし、月の盃亭へ向かうのであった。
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