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魔王城の双子姫 1ー1

『貴様ら、眠りを妨げた報いは受けてもらうぞ! それを受け入れられないならば……今すぐ立ち去れ!!』


 丘の上から飛び降り、風圧で吹き飛ぶのではないかという距離に着地した狼。


 その声はーーーー懐かしい愛狼のものだった。


「みんなはそこで待機していてください」


 一歩前へ出る。

 そして俺は【念話魔法】を発動した。

 なぜ念話を使うかというと他の人にこの世界の知り合いだったことは知られたくないからだ。


 恐ろしい牙が口からはみ出しているが、それも愛らしく思えてきた。


『俺だ俺、フェンリル。……覚えてないのか?』

『念話だと? 久しく使うな……鬱陶しい!』


 強靭な爪が襲いかかる。

 急いで【結界魔法】を発動する。

 爪は結界とせめぎ合い、結界をぶち破った。

 俺はそれを間一髪で避ける。


『いや、おかしいだろ! なんで襲ってくるんだ!?』


 おかしいと思ったのは、結界を砕いた力ではなく、いきなり襲いかかってきた事だ。


『これ程の結界、久々に出会ったな。魂までは喰わん、安らかに死ね!!』

『だから〜話を聞けっての!!』


 なんでこう話が通じねぇんだ!

 完全に幻獣としての能力を付与された爪が襲いかかってくる。


 もう我慢の限界だ。久しぶりに愛狼と再開したと思ったら向こうは忘れていると来たもんだ。

 鬱陶しいのはお互い様だってんだ!!


【氷塊魔法】で氷の鎖を創り出す。

 しかし、フェンリルの爪を止められるほどの強度は込めていない。


 そもそも前足を標的としたのではなく……後ろ足を標的としたものだ。

 後ろ足が両方とも地面に繋ぎ止める。


 そしてカチっと魔素回路を切り替え、【爆裂魔法】を連続で放つ。

 一つ目はフェンリルの攻撃を吹き飛ばすため。二つ目以降はフェンリルを吹き飛ばすためだ。


『何っ!? 【爆裂魔法】だと!? この魔法は変遷前の! 主の魔法を真似しやがって、許さん!』

『だから俺だって言ってんだろうが!』


 トドメの五発目、愛狼の前足は浮き、体は仰け反った。

 がら空きになった腹に一発。

 本来ならば吹き飛ばされるはずだが、氷の鎖がそれを阻んだ。


『服従のポーズの完成だ! フェーカス、これで思い出したか?』


 俺はフェンリルの腹の上に乗り、剣を突き出した。

 どんな生物であろうと弱点である腹を相手に見せることは服従を意味する。


『その姿、その言動、主の物に違いない。しかし……主は死んだ!』

『生きて……ないけど、俺は俺だ。死神の子、アルフォードだ』


 ああ、これでこの世界が俺の元いた世界だということは確定したのか……。

 まぁ、悲観することもないか。


『えっ? マジっすか? マジであのアルフォード君?』

『ああ、大マジだ。そう言えばさっきの死ねとか死ねとか……あの暴言の反省は?』


『あ〜あれはその……すいませっした!!』


 良し! 主従関係再構築完了!!

 これで急ぐ必要もなくなったし、……足も手に入った。


「お待たせしました」

「本当に何者なの? シャルテアちゃんは……おかしいよ」


 むっ? 酷い言いようだな。そもそもおかしい点なんて見当たらない……ああ、フェーカスのことか。


「ちょっと前に知り合いだったんですよ」

「そうなの?」


『そうなんですよ〜、アルフォード君は僕の主なんですよ!』

「主? 幻獣種の中でも上位に位置するフェンリルの? ますます分からないよ。というかアルフォード君じゃなくてシャルテアちゃんだし」


 アホか俺は。こいつに嘘を求めるのが間違っていた。


『フェーカス、俺の今の名前はシャルテアだ。出来るだけ俺のことには触れないでくれ』

『分かりました! シャルテア君ですね!』


 はぁ〜、期待出来ないな……てか、あんまり理解してなさそうだし。


「とにかく、フェーカスが乗せていってくれますから、ここからは楽できますよ」

『任せてくださいっ! そう言えば、どこに行くんですか?』


「フェーカスさんでしたか? 僕達が向かうのは夜の森、魔王城ですよ」

『えっ……と、魔王倒しに行っちゃったりします?』

「しないですよ。今回は別件です」


 あからさまにほっとするフェーカス。

 どことなく怪しい。

 何か隠し事があるように見える。


 とりあえず、出発することにした。

 全員に【相対座標固定魔法】を付与し、落ちることがないようにした。


 ここに来るまでの五倍程度の速度アップだ。

 陽射しが差してきた頃には山岳地帯の中腹まで来ていた。


 しかし、そこでフェーカスは足を止める。


『フェーカス、何か問題でもあるのか?』

『いえっ! むしろ倒してくれるとありがたいんですけど……強いんですよね〜』


『その口振り、お前戦ったことがあるのか?』

『はい、ここら辺まで来ると眷属達が現れるんですよ。これが面倒で面倒で……あっ、来ましたよ』


 眼前の空には複数の影が。

 竜族だろうか? しかし、竜族ほどの大きさは無い。

 約全長十五メートルのフェーカスよりも小さいくらいだ。


「眷属達だそうです。応戦準備を」


 数は十五ほど。倒せない相手ではない。


「地面に落とすので後はお願いします! (【氷塊魔法】を展開、【威力累乗魔法】を付与、続けて【追撃魔法】を付与)」


【追撃魔法】とは、相手の魔力と自身の魔法を魔力的に繋げることで、攻撃を追撃させる、相手を逃がさない魔法だ。

 一定距離が離れれば、その繋がりは切れてしまうので万能という訳では無い。


 しかし、五十メートルほどなら余裕だ。

 逃げ切られる前に、俺の氷の杭が翼を射抜くだろう。


「行きますよ! フェーカスもサポートに!! (魔法陣を一斉発動!)」

「『了解!(です!)』」


 その時、別の場所からも轟音が聞こえた。


読んでくださってありがとうございます!!

感想等宜しければお願いします。

ブクマや、評価等ありがとうございました!

これからもよろしくお願いします。

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