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神竜に丸呑みされたオッサン、生きるために竜肉食べてたらリザードマンになってた  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第三章 カムラ聖堂院

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第七十四話 DD

 迷宮が消え、その跡地に迷宮に入っていた者達だけが残った。

 ユウキにノイシェ様、アイにポーラ様、ノゾミちゃんにユーリ様、ルル様。他生徒たちとカクレの刺客たち。生徒救出のため迷宮に入った守護騎士たちもいる。


「馬鹿な!!」


 そう大声で言ったのは片目を眼帯で隠した女性だ。


「アレは……」

「エダ先生よ。パラディンクラスの担任」


 後ろに立っていたロゼが教えてくれた。


「そんで間違いなく今回の()()よ」

「へぇ。担任……黒幕……黒幕!?」

「ええ」


 エダは今の会話が聞こえていたのか、こっちをちらりと見ると、背中を向けて逃走した。


「とりあえず捕縛した方がいいのか」

「頼めるかしら」


 エダを追おうと走り出した時、体に違和感を感じた。


「たっ――はぁ!」

「ダンザ?」


 汗が滴る。

 肩で息をする。

 久しぶりの感覚だ。俺はいま、息を切らしている。


「ちょっと、大丈夫?」

「ああ。問題ない」


 考えられる要因はさっきの神竜弓の一撃。あれだけの破壊力、何のリスクもない方がおかしい。

 スタミナと魔力を大分と持ってかれたな。どっちも3割ぐらいは持っていかれたか。

 久しぶりに息を切らしたため、ビックリして足を止めてしまっただけ。エダを追いかけるのは簡単だ。


 俺は息を整え、ダッシュする。一息の間に700メートル先にいたエダを追い抜き、正面に回る。


「なっ!?」

「えーっと、とりあえず大人しくしていてくれるか? 手荒な真似はしたくない」

「ちぃ! 舐めるな!!」


 エダは左眼の眼帯を外し、左眼を露わにする。黄色の角膜に裂け目のような黒の瞳孔。アレは……、


(じゃ)の目、石化の魔眼か」


 魔眼。視認した対象に特定の魔法を掛ける眼。石化の魔眼は魔眼の中ではかなり有名。

 石化の魔眼は視認した対象を石化させる。ただ、それは両眼共が石化の魔眼だった場合の話。片方しかないなら相手の動きを止めることしかできないはず。俺の今のステータスならば力業で突破できるだろうな。


 馬鹿正直に喰らってやってもいいが、ここはいっちょ利用させてもらうか。

 魔眼の効果が発動する前の1瞬で俺は刀を抜き、その刀身にエダの魔眼を映す。


「まずい!!」


 刀身に映った魔眼と、エダの眼が合う。

 エダは魔眼の効果を受け、動きを止める。


「ま、単純な対処法だな」

「くっ!」


 俺はエダの腹を鞘で殴る。


「ごはっ!」


 痛みで倒れるエダ。エダの背に乗り、後頭部を掴んで地面に顔を押し付ける。

 エダを組み伏せたところでロゼとハヅキとドクトが追いついてきた。


「まずはロゼ。お前の推理を聞こうか」

「推理するまでもないと思うけどね。あの機能しなかった魔導札を用意したのはエダ先生だし、カクレが王族の居るルートにしか現れなかったのは、予めカクレの連中に王族が通るルートをエダ先生が教えていたからと考えるのが自然……」

「ちょい待ち」


 ドクトが話に割り込む。


「生徒たちは自由にルートを選んだはずだ。予め王族が入るルートを指示するのは無理じゃないか」

「ルートなんてどこでもほとんど同じなんだから足の速いペアから手近のルートに入る。エダ先生は生徒たちの足の速さを知っているからどのペアがどこに入るかわかるってわけ。万が一、予想が外れても石化の魔眼で生徒の速度を調整すれば誘導できる」

「あ~、なるほどなぁ」

「それに私たちがどれだけ説得しても迷宮演習を強行したり、門が閉まりかかっている時ですら私を迷宮に入れないよう叫んだり、怪しいとこしか無かった」

「とりあえず両足を壊しますか? 抵抗できないようにしてからすぐに尋問を開始するべきだと思いますが」


 ハヅキは光の無い目で提案する。


「そうね。なんでカクレと協力したか聞きださないとね」


 拷問は気が進まないがそうも言ってられない。こうしている間にも他の何らかの計画が動いている可能性があるしな。綺麗事は言えない。ドクトも拷問には賛成っぽい面持ちだ。




「アレだけ念入りに準備をして、王族1人殺せないとはな」




 二階建ての建物の上。そこに、黒いマントを羽織った真っ白な肌の男が立っていた。


「なんだアイツ……」


 軽く眺めただけでも只者でないとわかる。


「エダよ。王からの伝言だ。『貴様には幻滅した』と」

「デューク様……!?」


 口から牙が見えた。

 耳が尖っているし……まさかアイツ!


「ヴァンパイアか……!」

「嘘……この声!!」


 ハヅキの体が、がくがくと震える。


「久しいな。ハヅキ……我が弟子よ」

「リーダー……そんな、なんで……! 姿が違う!!」


 リーダー?

 ってことは、もしかしてコイツがカクレの……?


「お前の前にリーダーとして姿を見せていたのは余の眷属。余が精神を操りし傀儡だったからな。今の余こそ本体……カクレのリーダー、デューク=ドぅ!!?」


 噛んだ。

 カッコつけて登場したヴァンパイアは盛大に噛んだ。


「まったく、噛むことが生業ゆえ、舌もよく噛んでしまう」

「ホントにアイツがカクレのリーダーなのか?」


 ハヅキに聞くと、ハヅキは怯えた面持ちで、


「間違いありません。あの噛み癖も昔のままです」

「デューク=ドグマ。略してDD(ディーディー)。それが我が名だ」


 DDは建物から飛び降り、俺たちの正面に立つ。

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