第七十一話 バグvsセキュリティ
騎士団本部から飛び出た後、俺は建物の屋根を足場に迷宮を目指した。
迷宮の前に着地し、すぐ俺はドクトとハヅキに説明を求める。
「ダンザさん!?」
「状況は!?」
「迷宮の門が開かない。王族がいるペアの前にカクレが出現。ロゼはユウキとノイシェ様がいるルートに入った。恐らくそのルートが一番危険だと判断したんだろう。王族のいる門はそれぞれ――」
ドクトが簡潔に、必要な情報を述べる。
「了解。俺はユウキ達のいるルートに行く。他のルートは手分けして頼む」
「つっても門が開かな――」
俺は背負っていた破界の槍“界葬棒”で、とりあえず正面のAルートの門を穿ち、ぶっ壊す。
「相変わらず規格外だな……」
「門は全て俺が壊す」
俺は門を全部破壊した後、ユウキ達のいるDルートに入った。
それから高速で迷宮を踏破し、第4階層に入る。すると、2つの人影を見つけた。
――ユウキとノイシェ様だ。
ノイシェ様がユウキを抱きかかえている。
「ユウキ!!」
「ダンザさん……? ダンザさん!!!」
ユウキとノイシェ様の状態を一瞬で分析する。
ユウキはかなり無理をしたんだろう。魔力がほとんどなく、疲弊している。だが目立った傷はない。
ノイシェ様も同様だが、ユウキよりちょっとは余裕があるようだ。
どちらも死の危険はないし、刺客の気配もない。問題はロゼの姿が見えないこと。
「ダンザさん! 何も聞かず、上の階に行ってください!! ロゼさんが、このままだとロゼさんが――!」
「ッ!!」
俺はユウキの横を通り過ぎ、第5階層に繋がる転移ゲートを踏む。
第5階層に入ると、すぐさま万識の腕時計が鳴り出した。
(警報音!? 万識の腕時計の液晶には『102』のナンバー。この警報ナンバーは確か、法の番人の出現を知らせるモノ!!)
僅かだが状況は読めた。
俺は巨大な衝突音のする方へ走る。
(ロゼ!!)
ロゼが法の番人と鍔迫り合いしている。ロゼの妖精のシールドが割られ、法の番人がロゼに迫る。
「こんのっ!!」
俺は思い切り地面を蹴り砕き、ロゼと法の番人の間に飛び出す。その勢いのまま、法の番人の頭に頭突きを喰らわせ弾き飛ばす。
か、間一髪だ……!
俺はロゼの方を振り向き、
「大丈夫か?」
いつかの彼女の真似をする。
「まったく、無理しちゃダメだぞ。お嬢さん」
---
六本腕の黒い巨体。これが法の番人か。
「ダンザ……」
「ロゼ。そこの男はカクレの刺客か?」
「え、ええ……」
俺は木を背に座っている黒髪の青年に視線を移す。
「あ、アンタ……何者だ?」
青年は恐ろしそうに、でもどこか嬉し気に俺を見る。
「法の番人をぶっ飛ばすとか、ありえないぞ……!!」
俺は問答無用でカクレの男の腹を蹴る。
「ごはっ!!?」
男は白目を剥き、気を失ったまま200メートル先の転移ゲートまでぶっ飛び下の階へと転移する。
「ここは俺に任せてお前も下の階に行くんだ」
「法の番人と戦う気?」
「お前が下に行くまで時間稼ぎするだけだ」
ロゼは心配そうな表情を一瞬するが、すぐに走り出した。
ロゼを追おうとする法の番人。俺は法の番人の前に立ちふさがり、その六本腕から繰り出される斧、ノコギリ、金槌、雑巾、箒、バケツを躱す。
六つの武器の中で一番恐ろしい雰囲気を纏っているのは雑巾。雑巾が触れた地面が、まるで空間ごと削り取られたように消失した。アレに触るのはまずい。
(よし)
ロゼの気配が消えた。俺もここから脱出――
「メンテナンス中です! メンテナンス中です!」
法の番人が手に持った雑巾を投げた。
「ばっ!?」
雑巾は下の階へ繋がる転移ゲートにぶつかり、転移ゲートを消失させた。
(やられた!? 逃げ道を……!)
「ウイルス発見! ウイルス発見! 直ちにデリート! デリートデリートデリィィィィト!!!!」
「まったく……」
こうなりゃやるだけだ。
刀を右手に、槍を左手に持つ。
「法の番人を相手にすることになるとはな……」
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