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「進め! ホープ=ブックヤード!」 第3話

明日の朝までに仕事仕上げなきゃならんのに(家持ち帰りの術)、なんでこんなの書いてるんだろうか。




『目標を補足しました。下降をお願いします、どうぞー』

『了解、これよりミッションに入る。全員戦闘態勢に入れ、どうぞー』

『『了解! どうぞー』』

『いや、なんでハルキ様捕まえるのに戦闘態勢なのさ? どうぞー』

『ふぉっふぉっふぉ、甘いですな。坊っちゃまはこちらが本気を出したところで傷一つ負う事はないでしょう。むしろ殺しにかかる程度がちょうどいいかと、どうぞー』

『怖いよ! フラン様が殺しにかかったら死んじゃう! どうぞー』

『テト、今まで何度もこのようにしていても坊っちゃまに本気で一太刀とて入れたことはございません、どうぞー』

『嘘だ! どうぞー』


 早朝にフラット領からエル=ライト領につづく経路で網を張っていると、随分と下を飛行するウインドドラゴンが見えた。魔道具通信をこんな近距離で行うとは思わなかったけど、ウインドドラゴンの上で会話しようと思ったらこうするしかないよね。しかし、内容が物騒なんだけど……。

『テト、それでは坊っちゃまのウインドドラゴンの前に出て下さい。まだ最大戦速が出てませんので追いつけるはずです、どうぞー』

『分かったよ、どうぞー』

『各員安全帯の解除を命じる。落ちれば死ぬかもしれないからワイバーン召喚して生き残るように。助けはしない、どうぞー』

『『了解! どうぞー』』

 フラン様の部下をノリノリで引き受けているヨーレンとダスティ=ノーランドも困ったもんだよ。ハルキ様捕獲作戦に各隊から凄腕かつ暇そうなやつを引き抜いたんだってさ。たしかに僕は暇だったんだけど……。何なんだよ、この雰囲気は。

『合図とともに飛び移る。各員ワイバーン召喚にて坊っちゃまのウインドドラゴンの進路妨害を、どうぞー』

『『了解、どうぞー』』

『最後の命令です。…………死ぬ事を禁じます、どうぞー』

『『了解!! どうぞー!』』

『いや、なんなのさ、もう』


 ***


「来やがった! 爺だ!」

「それはまずいですわね!」

「テトもいやがる! 逃げるぞ!」

 ウインドドラゴンが上空から接近する同族の気配を察した。テトの召喚するウインドドラゴンの頭の上に仁王立ちしているのは爺だ。あれ、命綱も何もないけどどうやって体を固定してるんだろうか。

「まだ間に合う! 今のうちに全速力で……」

「しかし、ハルキ様! エル=ライトの町はすぐそこです。私たちだけでも降ろしてもらわないと!」

「そうですよ! 今日中にジンビー=エル=ライト様の所に行かなければならない任務なんですから!」

「だぁ! ちょっと待ってろ!」

 仕方ないので、ミア達三人を乗せる形でワイバーンを3体召喚する。そして空に置き去りにした。

「「「きゃぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」」」

 後からテトのウインドドラゴンが通過したために暴風で錐揉みしながら落ちて行ったような気もするが、気にしてられない。


「ハルキ様お覚悟!」

「通しませんですぜ!」

 後ろを振り向こうと思った瞬間に前方に二体のワイバーンが出現し、進路を妨害しようとしてくる。あれは第5部隊副隊長のヨーレンと、第3部隊のダスティ=ノーランドだ。

「逃しませんぞぉぉぉ!!」

 そして後ろからフランを乗せたテトのウインドドラゴンが近づいて来ていた。これ以上近づかせると爺の事だから跳躍して乗り移ってくるに違いない。これはマズイ。

「とりゃぁぁぁ、ノーム召喚!」

 ダスティが大量のノームを召喚して俺のウインドドラゴンにまとわりつかせようとしてくる。ひと昔前だったら、その戦法は非常に有効だったし、実際よくやったんだけど、すでに時代遅れだ。

「ヒルダの授業を受け直してこい!」

 ウインドドラゴンが一回転する。それに伴う暴風でノームはほぼ全て吹き飛ばされてしまった。回転の中心の俺にはそこまでの負荷はかからないが、ウインドドラゴンの翼付近に召喚されたノームにはものすごい遠心力がかかる。それがダスティのワイバーンにぶつかってもろとも落下していく。

「ぎゃあぁぁぁぁぁああああ!!」

「達者でなっ!」

「ハルキ様!」

 そしてヨーレンが立ちふさがる。ヨーレンは第5部隊の副隊長をはっているだけあってワイバーンの乗りこなしがかなり上手い。そして無茶な乗り方もできるほどに鍛えられている。が、それが逆に作用することもあると教えてやるしかない。

「ノーム召喚!」

 召喚したのは数体のノームだけだ。ただし、ダスティとは違って全体的にまとわりつかせるのではなく、片方の翼の先に集中的にである。あっと言う間にバランスを崩すワイバーン。錐揉みしようにも翼がいう事を効かないからできない。回転しながら落下するしかない。ついでにアイアンドロイド2体を召喚して翼を掴ませる。ものすごい勢いで落下しだした。

「なんのっ!」

 ヨーレンがワイバーンを乗り捨てて、次のワイバーンを召喚する。乗り換えのために跳躍した。ヨーレンはこういう事もできる男なのである。だから、予測がつきやすい。

「だろうな!」

 タイミングを見計らって召喚しておいた俺のワイバーンがヨーレンをむんずっと掴んで明後日の方向へと飛び去る。フラット領の海にでも落とせばいいと思うんだ。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「低空飛行でな!」

 じゃないと、魔力が供給できない距離で強制送還された時点で落下するから死ぬかもしれん。


「ううう、さすがにハルキ様だよ。あれだけの少ない召喚でダスティとヨーレンがなすすべなく……」

「ふぉっふぉっふぉ、さすがは坊っちゃまです」

「どうすんの?」

「ふぉっふぉっふぉ、いつも通りです」


「やべぇ! この距離は!」

 気づいた時には数十メートル後方までウインドドラゴンが近づいて来ていた。あれほどのでかい召喚獣を妨害しようと思えばそれなりの召喚獣が必要となる。しかし、この距離は……。


 ずんっ!


 ウインドドラゴンの後方に何かが落下する感触があった。まずい。ふっと振り向くと、そこには「勇者」フラン=オーケストラの姿があった。

「お覚悟ぉぉ!!」

「てぇい!」

 とっさに黒騎士を召喚する。そして次の瞬間には召喚した黒騎士が爺の剣で強制送還されていた。というよりも召喚してなかったら、俺死んでたよね? しかし……。

「悪いな! まだ帰らないもんね!」

 黒騎士召喚のために爺はウインドドラゴンの動きに気づいていなかったようだった。ウインドドラゴンが急上昇する。必死に鞍にしがみつく俺と爺。

「逃がしませんぞぉぉ!!」

 この速度でも振り落とされないとは爺はさすがである。シートベルトしていても吹き飛ばされそうな俺とは大違いだ。

「逃げるっ!」

 かなり上空まできた。テトのウインドドラゴンがだいぶ下に見える。

「万策尽きましたな!」

 これでも振り切れない。だからと言ってウインドドラゴンの鞍の上で爺に勝てる召喚獣はさすがにいないだろう。

「では、おとなしくレイクサイドへ……」

「帰るのは爺だけだもんね!」


 そして襲ってくる。浮遊感。……そう、ウインドドラゴンが送還されて俺たち二人は宙に投げ出されたのである。

「なんとっ! しかし、それではテトのウインドドラゴンからは逃げられませんぞぉぉぉぉおおお!!!」

 フランが落下しながら叫ぶ。まあ、俺も一緒に落下してるんだけど。

「逃げるったら、逃げる!」




「召喚!!」



 ***


「フラン様、大丈夫?」

「テト、助かりました。さすがに私でもあの高さから落下すれば死んでいたでしょう」

「まあ、ハルキ様は分かってたからああしたんでしょ?」

「ふぉっふぉっふぉ、そうでしょうな」


 こうして落下中に二体目のウインドドラゴンを召喚して、俺はさらに東へと逃げ延びたのだった。

「なんなんだよ、あの総魔力の量…………」

「テト、以前坊っちゃまがコツをおっしゃっておりました」

「えっ!? なになに? どうすれば総魔力があそこまで上げられるの?」

「…………無駄に召喚すればいいとのことです」

「…………参考にならないよね」

「…………そうですな。さて、ダスティとヨーレン回収に行くとしましょうか」

「了解、どうぞー」


書籍の見本が来て、完全にやり切った感が出てしまったんですよ。それでも何となく書けるというのは半年の積み重ねのおかげですかな?

いやいや、第1部の終わりの話を書くまでは書籍を続けさせてもらわねば。


…………(; ・`д・´)!! ここで書いてしまえばいいんぢゃね!? いや、しかし……。

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