「進め! ホープ=ブックヤード!」 第2話
いや、プロットも何も書いてないからいつ終わるか分からんのよね。
というよりも第3部書けって?
いやいや、こっち書けって人も多いんじゃないの? ん?
おかしい、今現在フラット領に派遣している召喚騎士団はいないはずだ。派遣しているのは第2部隊が2人ずつでの行動と、エル=ライト領に第1部隊のミア班をジンビー=エル=ライトの要請で採掘現場の労働力として派遣しているくらいである。ヒノモト国との定期連絡は1人だし、それ以外は特に他領地には行ってないはずだし、3人組での派遣はミア班以外いないはずだ。であるならば、俺に黙って現地の人間と接触を図っているもしくは…………。
「まさかレイクサイド召喚騎士団を名乗る不逞の輩か……」
これは由々しき事態だ! 実は俺、ホープ=ブックヤードは仮の名であり、その実態はレイクサイド領領主ハルキ=レイクサイドであるのだ。この部下の名をかたる不逞の輩の出現などという面白そ……重大な事件を解決しなければならない義務がある! ふへへ、このままここで潜伏して接触を図るというのもいいな。
「店主、レイクサイド召喚騎士団だって? 実は俺、前から彼らと話をしてみたかったんですよ」
「そうなのかい? クレイジーシープの肉を提供してくれたし、俺から紹介してやるよ」
「有難うございます」
よしよし、一応変装をしておこう。と、言っても変装の道具なんて持ってきてないからパイロットゴーグルをつけるくらいしかできない。まあ、それでもいいや。
俺はテンションが最高に上がりまくった店主が勢いで作ったクレイジーシープのクラウンローストを一つほおばりながら彼らを待つことにした。しかし、美味い上に見た目が派手だ。クラウンとは王冠の事で、肋の肉を王冠の形に組み合わせてオーブンで焼き上げるという最強料理である。前世でも食ったことねえよ。今度領主館でも作ってもらおう。しかし、これ全部は食えない。
しかし、不逞の輩と接触を持ったあとにどうするかが問題だ。ホープ=ブックヤードは知れ渡ってる偽名だから、ここはジェイガンでいこう。店主にも恥ずかしいからという理由で偽名を使う事を伝えておく。そしてジェイガンとなった俺は酒を飲ませてそいつらにいろいろと聞き出し、最終的に成敗するのだ。ふへへ。完璧な作戦である。
そうと決まればレイクサイド召喚騎士団に憧れを持つ冒険者を演じなければならない。好きな召喚士は? え? ハルキ=レイクサイド? それはそうだけど、ありきたりすぎるから、やっぱりここは渋い所を突いて第4部隊副隊長「子守お兄ちゃん」ペニーとかどうだろうか。いや、男性目線としては女性召喚士に憧れを持つというのもありだ。だったら第3部隊隊長「聖母」ヒルダ一択だろう。ふへへ。
「ハ、ハ、ハ…………」
「奴らを成敗するならば、実力も隠してた方がいいな。だったら召喚はワイバーンまでにしとくか。戦闘にはアイアンドロイド使えば十分だろう。どうせフィリップ相手でもアイアンドロイドで勝てる気がするしな」
「ちょ……成敗って……」
「3人とか言ってたし、まあ、20人でも変わりないんだけど。あいつら召喚の仕方がまるでなってないし。レベル下がってた時でもインセクトキラービーで戦えるんじゃねえのかってくらいへたくそだしな」
「なんと……」
「いや、待てよ。今から来る奴らはそんなレベルにも達してない奴らなはずだから……」
「「「!?」」」
「ノームすげえって言っておけばいいか。いや、ある意味ノームは究極だ。しかし、これ美味いなもう一本食っておこ…………あれ?」
気づいたら店の中に騎士が3名ほど入ってきていた。全然気づかなかった。そして、見覚えがある。
「ミア? シスタにファラまでなんでここにいるんだ?」
「ハ、ハ、ハルキ様、私どものワイバーンではエル=ライト領まで2日かかりますから、どこかで一泊する必要があるのでございます」
3人ともにひきつった顔をしている。
「むしろ、何故ハルキ=レイクサイド領主がこんな所で御飯を食べていらっしゃるのでしょうか……」
え? もしかしてこれから来る3人組って本当のレイクサイド召喚騎士団でミア班の3人だったってこと?
後ろで店主が「何ぃ!? ハルキ=レイクサイド領主!?」とか叫んでいる。最高だったテンションがさらに上がったらしい。
「えっと…………」
ここで、俺は逃避行中だった事を思い出した。そしてこの3人はよくフィリップに命令されて俺を捕まえに来る3人である。
「極秘任務中だ……もぐもぐ」
羊の肉が美味かった。
***
結論から言うと、3人はクレイジーシープの料理とワインで買収された。店主も看板に「ハルキ=レイクサイド御用達」って書いていいというと静かになった。店の奥で伸びている。
「フラット領の冒険者ギルドには来たことがありましたから、宿と晩御飯の店を聞いたのですよ」
完全に俺と同じ経路である。
「王国全土、どこの冒険者ギルドに行ってもレイクサイド召喚騎士団は優遇されますからね。第4部隊のおかげでしょうか」
たしかに全国の冒険者ギルドで第4部隊を知らない者はいないはずだ。最近は小領地郡にまで手を伸ばしだしているらしい。
「でも、まさかミア隊長が新婚旅行から帰ってそうそうエル=ライト領に派遣とは思いませんでしたよ」
「んな事言っても人手が足りん」
「ファラ、仕方ありませんわ。それに主人にだまって旅行を企画していただいたんですもの。任務はきちんと遂行いたしますわ」
ヘテロとの旅行が終わったミアをエル=ライト領に派遣したのは申し訳なかったが、仕方ない。他に人おらんもん。え? 俺? ナンノコト?
「それで、ハルキ様は次はどこに行かれるんですか?」
シスタが興味津々で聞いて来た、いつもは追いかける立場だからな。
「あぁ、明日にはウォルターたちに嗅ぎつけられるからなぁ。エル=ライト領あたりに行こうかと思ってる」
「あら、でしたら同行いたしますか?」
ミアがそう言う。
「なるほど、隠れ蓑もいいかもしれん」
「私、ウインドドラゴンに乗ってみたいです!」
「あ、私も!」
「仕方ねえな。フィリップよりも先に乗せてやるよ」
こうして俺はミア班を隠れ蓑としてエル=ライト領へ向かうことになった。
***
「情報が入りました。フラット領で間違いなさそうです」
その人物は部下が召喚した闇の精霊シェイドがもたらした情報を伝える。聞くのは初老を越えたくらいの男性だった。その腰にはミスリルソードが佩かれているが、他の騎士とは造りが違うというのは見る者が見れば分かる。年齢とは関係なく立ち姿が他の誰よりもしっかりしていた。
「明日にはすでにいなくなっているでしょう。で、あるならば他の領地に網を張るべきでは?」
「おっしゃる通りですね。とりあえずは王都ヴァレンタインとエル=ライト領、シルフィード領の行きつけの店と冒険者ギルド網羅してあります。フラット領の諜報員は引き続き接触はせずに監視を申しつけました」
「私が行きましょう」
「はい、ワイバーン召喚のできる召喚士を手配いたします」
「いえ、ワイバーンではすぐに逃げられます」
「しかし……彼女は……」
「ええ、あの方の意向に沿うならば彼女はダメでしょうね」
最速の風竜を召喚できる召喚士は4人。そのうち2人には重要な任務が待っていた。もう一人は追跡の対象である。
「でしたら…………」
「もう! なんでまた僕なのさ!」
その日、レイクサイド領主館から最狂執事を乗せた第4部隊隊長のウインドドラゴンが飛び立ったという。
物語はハルキVSフランの様相へ……いくのか?




