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彼女に捨てられて仕事もクビになった俺は、ヤンデレ金髪巨乳女子高生に拾われました  作者: 湯島二雨
第26章…豪華客船

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犯人を発見しました

 機関室にいた怪しい男。

その男を一目見ただけで、この男が殺害予告の犯人だと確信した。

楓ちゃんも確信しているようで、瞬時に戦闘モードに切り替わった。


間違いない、こいつが犯人だ。()()()()()()()()んだ。


こいつとは初対面だ。初対面だが、()()()()()だ。

忘れもしない、あの忌々しい記憶。そっくりだなぁこいつ。こいつの顔を見るだけで人生最悪な記憶が鮮明に思い出される。


ドローンのコントローラーと思われる物体も近くに置いてあるし、ほとんど証拠だろこれ。



怪しい男は俺たちを見てギョッと目を見開いて驚いた。


「貴様ら……! なぜ私がここにいるとわかった……!?」


いや、なぜわかったのかとか言われても……まさかこんなにわかりやすいところに本当にいるとは思わなかったよ。

字を間違えたことといい、やはりアホかこいつ。


とにかく俺は、そいつに少しだけ近づいた。



「あんたまさか、貝塚グループの社長か」



「! なんでわかるんだよ……!」


「息子にそっくりだから一目見てすぐにわかったよ」



そう、目の前にいるこの男……貝塚グループのバカ御曹司、貝塚メノウにそっくりだ。

白髪やシワがあって身長も少し低いが、貝塚メノウに瓜二つといってもいい容姿。個人的にはこいつの顔を見ただけで吐き気がしてくる。


そうかぁ、呪うと祝うを間違えるようなアホが社長やってるのが貝塚グループか。

親がこんなんじゃメノウみたいなバカ息子が生まれてくるのも納得だ。



「で、中条グループの社長に殺害予告したのもあんたってことでいいんだよな?」


「フン、ああそうだ! 中条グループだけは絶対に許さん! 呪い殺してやる!!」



『呪い殺してやる』って読むことはできるんだな。あの紙はやっぱり漢字を書き間違えただけか。

あの『祝い殺してやる』ってメッセージが本当に祝っている可能性もゼロではなかったんだが、今この瞬間ゼロになった。


で、こいつがお父様の命を狙う動機……もうほとんど予想はついているが、一応聞くだけ聞いてみるか。



「なんで中条グループの社長を狙うんだ?」


「そこにいる中条楓と、先代社長の中条賢三がウチの大切な息子メノウを酷い目に遭わせただろうが!!」


「酷いことをしたのはあんたのバカ息子の方だぞ」


「黙れ!! メノウは逮捕されて、貝塚グループは一気に終焉を迎えた!! 私の人生も詰んだ!!

メノウに社長を継がせて、これからも未来永劫豊かに貝塚グループを発展させていくはずだったのに、中条グループのせいですべてが台無しだ!! 全部中条グループのせいだ! どうしてくれるんだ!! 絶対に許さん、殺してやる!!」



なんで中条グループのせいなんだよ、ふざけんなよ。逆恨みにも程がある。

誰かのせいにしたいなら俺のせいにしろ。中条グループに迷惑をかけるな、来るなら俺に来い。

ていうかメノウが社長になったらもう終わりだよこの国。



「……涼くんのおかげであなたを追い詰めることができました、貝塚さん。お父様の命を狙った罪は大きいですよ。あなたは元々終わってたようですが今回の事件でさらにダメ押しで終わりましたね。ブタ箱で息子さんと仲良くしててください」


楓ちゃんは貝塚を睨みつける。普通の人なら失禁してしまいそうな恐ろしさだが貝塚は怯まない。バカ息子もそうだったが自信と度胸はかなりヤバイ、アホだけど。



「……確かに私はもう終わりだ。だがな、貴様らも道連れにしてやる!」


貝塚父は大きな斧を持った。こいつのすぐ近くには船の心臓といってもいい、大事なエンジンがある。

この野郎、やっぱり船を沈める気か!



「ははは、殺し屋を雇う作戦もドローン作戦も失敗することは想定済み! 中条グループの社長がそのくらいではやられないのはわかっていた!

だがな、いくら強かろうと海に沈めてしまえば関係ない! 貴様らはちっぽけな人間、みんな等しく海の藻屑となるのだ!!」


「やめろ!! そんなことしたらあんたも死ぬぞ!?」


「私はもう終わりだって言っただろうが!! 自分の命さえも捨てても構わない、忌々しい中条グループに復讐ができるのならなァ!!」



ダメだ、貝塚父はもう目がイっちまってる。口で何を言っても無駄、壊れるまで止まらない。


貝塚父は斧を振りかぶってエンジンを破壊しようとした。

俺は全力で阻止しに行く。しかし間に合わない!



パキューン!!



ここで楓ちゃんの狙撃が炸裂。

楓ちゃんが撃った弾は貝塚父の手の甲に命中し、斧を吹っ飛ばした。


危なかった、ギリギリのところで阻止できた。マジでありがとう楓ちゃん。楓ちゃんマジ最高。



そして楓ちゃんは撃った直後にすぐさま貝塚父に銃を突きつける。


「動かないでください。手を上げてください。妙なマネをしたら撃ちます」


手にBB弾が当たった瞬間は顔をしかめた貝塚父だったが、撃たれたところを押さえながらもニタァと笑みを浮かべた。


「……フン、命を捨てる覚悟を決めた者にBB弾などあまりにも甘っちょろいな」


「別に私はあなたを殺す気は毛頭ありません。船を沈めるのだけは絶対阻止する、それだけです」


「私は防弾チョッキを着ている。BB弾などでは脅しにもならないぞ」


貝塚父は上着をビリッと破った。確かに防弾チョッキを着ていた。

それを見た楓ちゃんは突きつけていた銃を下ろした。


「確かに、この銃ではあなたを倒すことはできませんね」


胸の谷間に銃をしまった楓ちゃん。

そして楓ちゃんは戦闘モードの目になった。最強無敵の美少女の本領発揮されるであろう目だ。



―――だが。

前に出ようとする楓ちゃんを、俺が腕で止めた。



「楓ちゃん、こいつは俺がやる」


「涼くん、でも……」


「頼む、俺にやらせてくれ。キミの美しいドレスを汚したくないんだ」


「涼くん……!」



楓ちゃんが戦った方が勝率が高いのはわかっている。

しかし、今日はパーティー。キレイなロングドレスを着た女の子を戦わせるべきではない。


足を引っ張りたくない、役に立ちたい。

去年は何もできずに守ってもらうだけだった。今は違う。地獄の修業を積んできた。俺だって戦える。


俺は真剣な目でまっすぐ楓ちゃんを見つめた。

戦闘モードだった楓ちゃんの瞳は、普段通りの瞳に戻り、ニコッと笑った。



「うん、わかった。ここは涼くんに任せるよ」


「ありがとう」



笑顔で俺に託してくれた。俺は必ず応えなければならない。応えなければ男じゃない。

これで勝つしかなくなった。楓ちゃんに任せてもらって負けましたじゃ済まされない。

ケガをするわけにもいかない。これでケガしたら優しい楓ちゃんは自分を責めてしまうだろうからな。


こいつに勝つ。船を守る。そして楓ちゃんにかっこいいところを見せたい。

集中力に欠けてばかりの俺だが、ここは全開で集中した。


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