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64.二人だけの…

一月二日は鷹司家一族揃っての新年会が開かれた。

毎年新年の挨拶周りを兼ねてグループ会社が経営しているホテルの大広間を借り切って行われている。

叔父や叔母、従妹兄弟達様々な人間が総勢40名集まるこの新年会。

正直一番苦手なイベントごとではあるが、両親が困ってしまうので黙って参加していた。


後2日たてばあいちゃんと二人きりの新年会。

それまではぐっと我慢して笑顔を振りまいてこの日を凌ぐだけ。


それから午後5時過ぎで新年会は終了した。

久々に親戚に会ってとても疲れた私は自宅へ帰ると部屋着に着替えてベッドの上にダイビングして疲れを癒した。

暫くしてから凛久兄様が夕飯のお誘いを受けリビングで家族全員で食事をして一日が終わった。


そしてそれから2日後、今日はあいちゃんが私の家にやってくる日。

午前10時過ぎに到着すると連絡を貰っていた。

玄関のベルが鳴り橘さんがあいちゃんをお迎えしてもらい、私の部屋に案内してくれた。

ノックの音と共にドアが開くとそこにあいちゃんが立っていた。


「どうぞ、入って」

「お邪魔しまーす。めぐちゃん、これケーキ。一緒に食べよ」

「うん。それじゃ私お茶取ってくるね。座って待ってて」

「うん。お願いね」


私に向かって手を降るあいちゃんの姿がとても可愛く見えて、私もあいちゃんに手を振ってから部屋を出た。

橘さんと一緒にリビングまで行き、予めお盆に用意しておいたティーポットにお湯を注ぎ暫く待ってからお盆の上に乗せて部屋に戻った。


「お待たせ。今お茶淹れるね。あれ、何してるの?」


お盆を机の上に置いてあいちゃんを見るとベッドに顔を埋めている姿が目に入ってきた。

私の声でびっくりしたあいちゃんはゆっくり振り向いた。


「ご、ごめん…。ベッドの匂い嗅いでて…」

「え?お布団匂うから止めたほうがいいよ。なんだか恥ずかしい」

「ごめん。でもすごくいい匂いだったからつい…」

「そんなことよりお茶にしない」

「うん。そっち行くね」


あいちゃんは私の座っている横に座るとカップの取っ手を持ち一口飲んだ。

私も一口飲み、あいちゃんの持ってきてくれたケーキを頂いた。

イチゴのショートケーキが私の好物としっているあいちゃんはいつも買ってきてくれる。

あいちゃんはいつもモンブランが好物でいつも食べていた。

私とあいちゃんはここ数日の出来事を話して時間を潰した。


お昼時になると橘さんがお部屋にお昼ご飯を運んできてくれた。

事前にお願いしておいたのだ。

二人きりで食事をしたいという私の我儘に答えてくれた。


「わ、これ凄い。イクラ丼、だよね?」

「そうだね。お正月だから。イクラ大丈夫?」

「うん、大好き」

「良かった。さ、食べよ」

「うん、頂きまーす」


おいしそうにイクラ丼を食べるあいちゃんを見ながら私もイクラ丼を食べた。

あっという間に食べ終わりお盆を返しに部屋をでて食洗器にお皿とスプーンを入れて部屋に戻った。


「お腹いっぱいだね。めぐちゃんちょっとこっち来て」

「うん。わかったよ」


手間に帰しているあいちゃんの傍に行き、隣に座った。

あいちゃんは私の後ろに座りなおして後ろから抱きついてきた。

なんだかとても恥ずかしくなってしまった。


「何々?どういうこと?」

「後ろハグ、だよ。ドキドキするでしょ?」

「う、うん。ドキドキする…」

「こういうのも好き?」

「初めてされたから好きかどうか分からない、かな」

「めぐちゃんって本当に今までお付き合いした人いないんだね」

「お付き合いどころか、お友達すらいなかった、から」

「そういってたよねぇ。私どうしてもそのことが腑に落ちなくてさ~」

「…?本当の事、だよ」

「どうしてこんなかわいい子に友達が出来なかったんだろう。もし私がもっと早くめぐちゃんと出会ってたら寂しい思いさせなかったのにな~」

「可愛いかどうか、置いておくけど。本当に誰とも会話すらしなかったよ。さやちゃんが同級生だった時もさやちゃんとは会話してないし」

「沙也加ねぇ~。あの子本当にめぐちゃんの事好きだよね。なんで虫と化してたんだろ。今頃遅いんだっての。ね、めぐちゃん」

「さやちゃんは私のこと好きなの?」

「どうみても、そうでしょ。私そういうの分かるもん。絶対あげないけどね」

「ははは…そういえば…」


そういえば、さやちゃんが妙なことを前に話してくれたことを思い出した。

小学生の時話ができなかったのはある理由があったとか。

その理由はいつか私にも分かるときがくるとか来ないとか。

なんだか周りの人はその理由を知っていて、私だけその理由を知らされていない、というか伏せらせているのかもしれない。

私が黙ったまま考え事をしていると、あいちゃんはお腹あたりに置いてあった両手を私の胸に当ててきた。

胸を揉まれた私はあいちゃんと離れようと暴れるが、離れられなかった。

一方的に服の上から胸を触ったり揉んだりされて変な気分になってしまい、仕舞には変な声まで出してしまった。


「あんっ……あ……い、嫌…あ、あいちゃ……や、やめ……あんっ」

「…めぐちゃんのおっぱい、柔らかぁい。気持ちいい…?」

「や、やめてって……ん……はぁはぁ……あ、あぁん」


止めてほしいといってもやめてくれないあいちゃんを私は暴れて振り切った。

乱れた服を直してあいちゃんの方黙って見つめた。

ちょっと怒った顔をしてみよう。

あんまりこういうのはされたくないから。

じっと見つめているとあいちゃんが困った顔をしながら話し出した。


「ご、ごめん……めぐちゃん、怒っちゃった?」

「……止めてって言ったのに…」

「ごめん。もうしないから」

「ほんと?」

「うん、少しじゃれてみたくなっただけだから」

「…今日は新年会だから許してあげる」

「ありがと。ホントごめんね」

「もういいよ。それに…全く嫌ってわけでもないし…」

「え?でもさっき嫌だって」

「雰囲気考えてくれればって話」

「そ、そうだよね。ごめん…」


眉を八の字にして明らかにテンションを落とし下を向いて落ち込むあいちゃん。

私だけ恥ずかしいことされるのは不公平だよね。

ちょっとびっくりさせてもらいたいな。


私は落ち込んでいるあいちゃんの真正面に座り、両手で顔を上に持ち上げた。

少し涙目になっていてちょっとやり過ぎたかと思いつつ、私はあいちゃんの唇にキスをした。


「ちゅっ」


リップ音が大きく聞こえるくらいのキスをするとあいちゃんは頬を赤くした。

恥ずかしがっていて凄く可愛い、そう思いながらもう一回キスをした。

私からキスするのはあまりなく、久々に耳まで真っ赤にしているあいちゃん。

頭を撫でながら話をした。


「これでおあいこ、だよ。私は胸を触るのに抵抗があるから。キスにしたけど」

「うん。めぐちゃんからキスしてもらって、今すごくドキドキしてる」

「ん。ドキドキしなさい」

「もぅ…めぐちゃんのイジワル」

「ふふふ。なんか凄くバカップルみたいだね。今の私たち」

「そうだね。バカップルだ、これ」


二人で大笑いした。

バカップルっていうのが言葉では理解出来ても、実際にどういうことか知らなかった私だったが今の自分たちがそうなのだろうと理解した。

それから部屋で二人きり黙ったまま手を繋いだり、読書したりして過ごした。


夕食はリビングで橘さんも含めて食事をすることになった。

今日はカニ鍋だ。

久しぶりに食べる鍋料理。

橘さんと私と交互で具材の出し入れをした。


「ふ~、お腹いっぱい。橘さん、めぐちゃん、ご馳走様」

「お粗末様でした」

「ご馳走様。たち…じゃなかった。璃子お姉ちゃん、有難うね」

「いいのよ。それより休憩が終わったら二人でお風呂行ってらっしゃい」

「うん。そうさせてもらうね」

「有難うございます」


食器を片づけた後部屋に戻ってベッドの上に座った。

暫くカニ鍋の話をしていたが、あいちゃんが急に話題を変えた。


「橘さんってめぐちゃんのお姉さん、なの?」


あぁ、そうか、知らせてなかったから不思議に思っていたんだ。

私は橘さんとの秘密の関係をあいちゃんに教えた。

勿論口外禁止と念を押した後に。


「そうなんだ。姉妹ごっこか。それにして橘さんって凄く美人だよね。恋人とかいるのかなぁ~」

「いないみたいだよ。この間聞いてみた。それにお姉ちゃんって……」


この話はしていいのか、内緒の話なのか。

そういえば橘さんのレズビアンってことを内緒にしてと本人から釘を刺されてはいない。

あいちゃんなら話してもいいのか…。


「めぐちゃん?」

「あ、うん。り、お姉ちゃんって実はレズビアンなんだって。だから好きな人は女性だけらしいよ。今はそういう人もいないみたい」

「レズビアンなんだ…。あんな美人なのに。あ、そういうの関係ないか」

「ねぇ、あいちゃん…。私たちもレズビアン…?なのかな」


橘さんの話の後からずっと気になっていたことだった。

私は今実際に女の子と恋愛をしている。

ということは私はレズビアンなのだろうか。

それともあいちゃんだから付き合っているだけで、レズビアンではないのだろうか。

私の質問にあいちゃんが答えてくれた。


「う~ん…。私の意見、なんだけど。私はめぐちゃんが好きだから恋人なりたいって思ったよ。それが偶々女性だったというだけ、みたいな感じ?」


やっぱりそうなんだ。

私もあいちゃんだから恋愛しているだけで、あいちゃんが偶々女性だったというだけだ。

だから私たちはレズビアンではない、ということでいいのか…?


「そう、かもしれないけど。私は今まで男の子を好きになったことがないから。正直分からなくて」

「私もだよ。というか中学から女学園だからね」

「私たちって似た者同士、なのかな?」

「かもしれないね。だから仲いいのかも」

「そうだね。それに考えたって分からないしね」

「そうそう。理解出来ないことは考えない。そろそろお風呂行こ」

「うん。行こっか」


私たちは着替えの下着とパジャマを抱えてお風呂場へ向かった。

お互いの身体と髪を洗いっこした後ゆっくり湯舟に浸かって体の疲れを癒した。

お風呂から出て歯磨きをして、ドライヤーでお互いの髪の毛を乾かした後、少し話をしてからベッドに入って一緒に寝た。

今日は恥ずかしかったこともあったけれど、色んな事や話が出来て楽しく過ごせた。

無事二人だけの新年会は幕を下したのだった。

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