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61.【番外編】二人の初詣

今年が後数分で終わり、新しい年が明ける。

ボクは恋人の楓と家の近くの神社に向かって歩いている。

初詣に誘ってくれたのは楓だった。

ボクは九条さん達に誘われていたが楓と二人で初詣に行きたかったから、正直に話してお断りしていた。


隣には着物を着て笑顔で話している楓が、ボクは厚手のジャンパーにGパン姿だった。


「ジュンも着物着てくればよかったのに。なんで着てこなかったの?」

「ボクが似合うはずないでしょ…。ベリーショートで男子っぽい顔だし。楓が着物姿でちょうどいいんだよ」

「そんなぁ~。私の彼女はとっても美人さんなのになぁ~」

「…美人ではないよね。それよりもうすぐ着くよ。手、繋ぐ?」

「うん。繋ぐ」


ボクの手を楓が握り、手を繋いで神社の境内に向かった。

少し長い階段を上ると開けた境内に着いた。後2分で年が明ける。

初詣に来ていた人たちが時計やスマホを見ながら0時になるのを待っていた。


「もうすぐだね。ジュンは今年どうだった?楽しく過ごせた?」

「ん~…。そうだね。楽しかったかな。楓にも出会えたし、ね」

「ふふふ。嬉しいこと言ってくれちゃって。そういうジュンが大好き」

「ボクも楓が大好きだよ」


時計の針が重なった。

皆が大きな声で『ハッピーニューイヤー』『明けましておめでとう』と叫びあっていた。

ボクと楓は向き合って両手を繋いで小さな声で『あけましておめでと』と言い合った。


お賽銭箱の前に着いたボクたちはお賽銭を投げて鐘を鳴らし、二拍一礼して両手を合わせた。

お祈りを済ませた後は御神籤を貰いに巫女さんのいるところへ向かった。

ボクが引いた後楓が引く順番だった。


「私『大吉』だった!ジュンは?」

「『中吉』。楓大吉凄いね。今年もいいことありそう」

「ジュンと一緒だから今年も絶対楽しいよ。あそこに縛りにいこ」

「うん」


御神籤を引いた人たちが木の枝にしばりつけている場所に向かい、先ほど貰った御神籤を枝に付けた。

境内を後にして帰り道甘酒を貰って通る人たちの邪魔にならない場所で休憩した。


「この甘酒おいしいね。私あんまり甘酒飲まないんだけど、これは飲める」

「確かにおいしいね。あったまる…」

「夜中だし、寒いよね。私着物の下にヒートテック着てるんだけど、それでも寒いよ」

「風邪ひかないようにね。そうだ、ボクが楓を抱きしめてあげよっか?」

「えへっ。こんなに人がいっぱいいるところで抱けるの?」

「問題ない。見られても恥ずかしくないし」

「じゃ、お願いしよっかな」

「うん。それじゃ…」


ボクと楓が向き合うとボクは楓を優しく抱きしめた。

楓もボクの背中に手を当てて目をつむっていた。

楓の体温がボクの体温と混ざり、楓を温かく風邪をひかないように。

ボク達の傍で歩いている通行人たちは抱きしめ合っているボクたちを横目に通り過ぎていく。

ボクはちらっと通行人を見るために目を明けると、偶々目があった男性が慌てた様子で通り過ぎていくのを可笑しく思えた。


「もう大丈夫。あったかくなったから」

「もういいの?ボクはまだ平気だけど」

「もういいよ。恥ずかしくなってきたから…」

「楓は恥ずかしがり屋さんなんだね」

「ジュンってばっ。もういいから。離してって!」


楓の抵抗でボクは手を離した。

楓の顔が真っ赤になっているのがとてもかわいく思えた。

暫く二人の沈黙の後、ボクは何も言わずに楓に手を差し出した。


楓はボクの顔を見た後差し出されたボクの手に自分の手を重ねた。

ボクは手を優しく握りしめ手を繋いで神社を後にした。


神社を離れると外に人の姿は無く、何の音も聞こえなくなった。

暫く歩いていると空から白いものが落ちてきた。


「あ、雪だ…。ジュン、雪降ってきたよ」

「本当だ…。道理で寒いわけだ」

「ね、でも綺麗ね。私雪は好きなの。あたり一面白くなって綺麗じゃない」

「そうだね。確かに綺麗だね」

「ジュン。あそこでちょっと座らない?」

「…うん。いいよ」


楓が指さしたバス亭のベンチに二人で腰かけた。

し~んとした音と一本しかない街頭の明かり。

今、この世界にはボクと楓の二人だけしか存在していないと思わせる場面だ。

楓は黙ったまボクの太腿に手を置いた。


「楓?」

「…ジュン。お願いあるの」

「何?」

「……キス、してほしい」

「うん…」


楓の顎を僕は手を当てて少し上に向けた。

楓は目を瞑ったまま口を少し明けていた。

ボクは楓の唇に自分の唇を重ねた。


「ん…。っちゅ……ちゅ…」

「んんっ。……ちゅ…ちゅチュ……」


お互い口を交わしその度に漏れる生々しいリップ音が耳の中で響き合う。

もうそろそろいいかとキスを終わらせると、楓は黙ったままボクを見つめていた。

まだキスしたいのだろうか。目がウルウルしてて凄くかわいい女の子だな。

この子がボクの彼女なんだよね。

ボクって凄く幸せ者だよ、全く。


「まだキス、したいの?」

「……もうすこし…だめ?」


楓が首を少し傾げて人差し指で自分の口に当てながらおねだりする姿に、ドキドキしてしまったボクは楓の肩に手を置いて楓の唇にキスをした。

夜中のうす暗い中ボクと楓だけには明るい光が放たれているのではないかと思わせるぐらい、二人の世界にずっぽり入り込んでいた。


空は暗く、雪が段々と多く降り始めた。

ボクと楓はバス停のベンチから出て、二人手を繋いで自宅へと向かって歩き始めた。

今年の初詣は特別な思い出が出来た。

年明けから楓の可愛い部分が見られてすごく楽しかった。

楓はボクの大好きな女の子。

これからも宜しくね、楓。

二人の姿は段々と小さくなり暗闇に消えていった。

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