50.お見舞い
体育祭で足を怪我してから暫くは学校を欠席することになった。
歩くのが辛いと家族に話したら学校を休みなさいと言われたからだ。
お父様も仕事を休んで看病すると言い出すと、お母様に怒られてしまったり、兄様達が交代交代で部屋を訪れて世話をしたいと訴えたり、どんだけ私に過保護なんだろう。
学校まで迎えに来てくれた橘さんも心配してちょくちょく私の部屋に顔を出す始末。
皆に心配をかけてしまって心が痛くなる私。
そんな日が2日続いた。
そして今日は学校を欠席して4日目。
まだ松葉杖がないと歩くことができないが、湿布の取り換えや包帯の交換など自分で出来ることをしていた。
午前中橘さんが買い物外出をすると言い残し私一人になった。
ベッドに横になりながら読書をして過ごしていると玄関口の呼び鈴がなった。
宅配か何かだろうと思い手元に置いてある玄関用リモコンで応対した。
「おはよう、かしら。めぐみさん、沙也加です。お見舞いに来たのだけれど」
「え?さやちゃん!?あれ…学校は?」
「お休みよ。体育祭の振替なの。それより中に入っても?」
「あ、う、うん。今鍵開けるね。私まだ歩くの痛むから応対できないけど」
「うん。わかってる。お部屋にて。私がそちらにお邪魔するわ」
私は玄関の鍵を解除するとさやちゃんが家に入ってきた。
暫くしてからドアのノック音がしたので、どうぞと言うとさやちゃんが笑顔で私の部屋へ入ってきた。
突然の訪問で驚いた私の顔が面白いのか、クスクス笑うさやちゃんだった。
私はベッドから上体を起こすと、さやちゃんは近くにあった椅子に腰かけた。
「お怪我の具合はどう?大分日にちが経ったけれど」
「うん。もう腫れもひいてきたよ。あ、怪我した時助けてくれたって聞いたよ。有難う、さやちゃん」
「勝手に体が動いちゃったの。めぐみさんが倒れた瞬間走って貴女のそばに行かなきゃって。自分でも驚いたわ」
「そうなんだ。ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ。勝手にやったことだから、気にしないで。それで何時から学校に来られそうなの?」
「月曜日には。それまではずっと部屋で過ごすことになるけど」
「そう。足見せてくれない?」
「うん。どうぞ」
私は布団を捲って足を出した。
さやちゃんは立ち上がってベッドに座り私の足をじっと見つめていた。
人が私の足を凝視しているのをまじかで見ると恥ずかしさが込み上げてくるのが分かった。
暫く黙って私の足を見ていたさやちゃんが私の顔に視線を移した。
「痛々しいわね。でも骨折とかでなくて安心したわ」
「うん。本当にドジだよね、私って」
「そんなことないわ。生活は出来るのかしら?」
「うんとね、家族が私に過保護でね。助けてくれるから大丈夫かな」
「そうなの。いい家族ね。羨ましいわ」
「ちょっと甘やかしすぎ、だと思うけど、ね…」
友達に自分の家族の話をするのはまだ慣れない。
今まで家族の話をすることがなかったからだろうか、むず痒くなるのだ。
さやちゃんはまた視線を私の足に向けてじっと見つめ始めた。
「私の足太くてみっともないでしょ…見られると恥ずかしい」
「そんなことないわ。とっても細くて綺麗だなって思ってみてしまうの。ちょっと触ってもいいかしら?」
「え…触るの?私の足を?」
「そうよ。ダメ、かしら?」
「ん…。少しだけなら」
「ふふふ。ありがとう、めぐみさん」
さやちゃんはそう言ってから私の足を優しく撫で始めた。
怪我をしていない方の足の裏から徐々に上に上がってくる感触がくすぐったい。
今度は足の付け根を触り、脹脛と脛の当たりを触り、ゆっくり太腿を撫でてきた。
「本当に綺麗だわ。脹脛も柔らかかったけど、やっぱり太腿が一番ね。こうやって揉むと気持ちいいでしょ?」
そうさやちゃんは言いながら私の太腿を揉んでいた。
最初はくすぐったいと思っていたが、太腿を揉まれると気分が良くなってきた。
足のマッサージを受けている感覚ってこういう風なのかと思った。
さやちゃんの手の平はどんどん足の股に向けて上がってくるのが分かる。
もうこれ以上上がってくると股間にさやちゃんの手の平が、指が当たってしまう。私はさやちゃんの手を掴んだ。
「これ以上は…」
「あらら。めぐみさんの股、触ってみたかったのだけれど」
「さやちゃん…ダメだよ。えっちなのは…ダ、ダメ…」
「えっち?女同士なのにダメなの?」
「ダメだよ。さやちゃんだって人に体触られるの嫌でしょ?」
「嫌よ。でも好きな人だったら触ってほしいって思うけれど」
話がかみ合わない。
私はいつも相手から攻められると受け身になってしまうのがとても嫌だ。
私はさやちゃんの手を私の足から離し、さやちゃんの太腿に置いた。
「前に言ったと思うけど、さやちゃんの好意には答えられない…」
私は目を閉じてさやちゃんにそういうとさやちゃんは私の手を自分の手で重ねた。
「それは知ってるわ。私の片思いだから気にしないで。もしめぐみさんが迷惑と思うなら、もう貴女に近づかない」
「そういう言い方はズルい…。私だってさやちゃんの事は友達として好きだから…。私と離れるのは嫌だよ」
私は顔を下に向けて小さな声で話をした。
するとさやちゃんは私の顔を両手で掴んだ。
さやちゃんの目と私の目が一緒になった。
さやちゃんの二重瞼と長いまつ毛が凄く綺麗だ。
さやちゃんの目に見とれていた私にさやちゃんは話し出した。
「ごめんなさい。私の我儘だと思うの。私はめぐみさんともっと仲良くなりたいと思ってしまうの。私の気持ちを貴女に押し付けるつもりはないわ。あまり困らせたらダメね」
「うぅ…」
「泣かないで。可愛い顔が台無しだわ」
さやちゃんの優しい声に何故か寂しさを感じてしまい涙が出てしまった。
さやちゃんがハンカチで私の涙を拭ってくれた。
「今日はお見舞いだったわね。ついめぐみさんと居ると甘えたくなってしまう」
「私もさやちゃんに甘えそうだよ…」
「偶には私に甘えてもいいのよ。別に浮気してるわけじゃないし。あいも分かってくれると思うわ」
嫌々…分かってくれないと思います。
話をしたらめちゃくちゃ怒りそうで怖い怖い。
でもさやちゃんのふんわりとした髪からいい匂いが安らぎを与えてくれている。
本当は私、さやちゃんとハグしたいと思っていた。
だがしかし、あいちゃんの顔が頭をよぎると理性で抑え込んでいたのだ。
さやちゃんはそれから持参した学校のプリントを渡してくれた。
クラスは違うだが家が近くなので私のクラスの担任の先生に頼まれたと言っていた。
全ての用事を済ませると自宅に帰るとのことだった。
「長居しちゃったわね。めぐみさんが元気そうで安心したわ」
「有難う。来てくれて嬉しかったよ。下まで送っていけなくてごめんね」
「大丈夫。橘さんに鍵を閉めてもらうわ」
「うん。また学校で」
「またね。さようなら」
さやちゃんはそういって手を振ってから部屋を後にした。
私も手を振ってさやちゃんの後ろ姿が見えなくなるまで見つめた。
お見舞いに来てくれて気が紛れてなんだかほくほくするのが分かった。
一応、あいちゃんには今日の事を伝えておいた。
すると、あいちゃんは悔しがりながら自分もお見舞いに行くと言い出した。
さやちゃんのことが気に入らないのか、それともさやちゃんの事が嫌いなのか。
私は二人の関係について考えたが分からなかった。
早く学校に行きたいな…そう考えるようになった私。
高校生になって友達が出来て私自身が変わり始めているを感じていた。




