44.友達の家で勉強会
今日は勉強会の日。
さやちゃんから事前に教えて貰った住所に向かっていた。
大きなお屋敷の門の前、ここがさやちゃんの家。門の前に全員揃っていた。
「遅くなってごめんなさい。皆さん早いですね」
「あ、おはよ~めぐちゃん」
「おっはぁ~!」
「おはよう、鷹司さん」
皆さんに挨拶を貰ってしまった。
あいちゃんは私の傍にぴったりくっついた。
外は気温が高くて蒸し暑いから本当は離れてほしいところだが、そんなことを彼女に行ってしまうと絶対拗ねだす。
家に入れば涼しいはずだからここは我慢。
前田さんがインターホンのボタンを押すと、門が自動で開いた。
西園寺家は名家だと聞いてはいたがここまでとは思わなかった。
皆も驚いた様子で開いた門を通り玄関へ向かった。
玄関の前に人が立っているのが見えた。
この家の使用人らしき中年の男性が私達に一礼してドアを開けた。
「沙也加お嬢様のご学友の皆様。こちらへお進みください」
男性の後ろに着いて行くと部屋のドアの前に案内された。
男性は扉にノックしてからドア開いた。
「いらっしゃい。外暑かったでしょ?さぁ、こちらへどうぞ」
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します」
「久しぶりだ、この部屋に来るの」
皆が空いている椅子へ適当に座った。
今日の主役である小鳥遊さんを私とさやちゃんで囲んだ。
これからみっちり教えて学力アップを目指してもらおう。
今日は悪ふざけなしで行くぞ。そう心に誓った。
「それじゃ、始めよっか。小鳥遊さんはどの教科から始める?」
「そんじゃぁ、数学からお願い」
「あ、私数学得意ですから教えられそうです」
「ほんと!?鷹司さん頼りさせてね」
「はい。お任せください」
「ふふふ。めぐちゃん気合入ってるね」
私の隣に座っているあいちゃんの声が聞こえたが今日は小鳥遊さんが主役なので反応するのをやめておいた。
勉強を始めてから一時間が経過した。
小鳥遊さんの苦手な数学を基礎から私なりに丁寧に教えた。
小鳥遊さんは分かりやすいと私の教え方を褒めてくれた。
ほかの参加者も小鳥遊さんと同じ勉強をしていて私の教え方が分かりやすいと褒めてくれた。
キリがいいところまで進めていったん休憩することになった。
さやちゃんは使用人さんに飲み物を持ってくるようお願いしていた。
小鳥遊さんは苦手な数学が理解出来たと喜んでいた。
私も教えて学力が向上してもらえるのが嬉しかった。
飲み物が届くと其々グラスを手にして飲み始めた。
冷たくておいしいオレンジジュース。
「今日、あとどれくらい勉強出来そう?」
さやちゃんが小鳥遊さんにそう尋ねると、小鳥遊さんは少し考えてから後国語と英語を教えてほしいと言った。
「英語だったら私得意だよ。恵梨香」
あいちゃんが小鳥遊さんにそう伝えると、教えてほしいとお願いしていた。
国語はさやちゃんが担当することになった。
私は他の前田さん、瀬戸さんに分からない教科を教えることになった。
お昼過ぎまで勉強会は続き昼食休憩することになった。
「お腹すいたね~。私ここまで勉強頑張ったの初めてかも」
「結衣は勉強しなさすぎだって。このままだと留年するかもよ~」
「留年は嫌だぁ~」
「ははは。だったら勉強することね」
「も~!愛ちゃんの意地悪ぅ~」
前田さんと瀬戸さんの会話を聞いていた他の子たちがクスクス笑い出した。
前田さんはむすっとした顔で拗ねてしまった。
食事が運ばれてきた。テーブルの上を片づけて料理をテーブルの上に置かれた。
クリームソースのパスタを皆で話しながら食べた。
こういう風景に私がいるという事の不思議さを感じてしまった。
この空間はとても楽しいし、とても新鮮だ。
今まで友達の家に行くこともなかった私が、今は二人のお友達の家に言った経験が出来るとは…。
夢物語のようなキラキラしたモノが私の目の前に広がっている。
「どうしたの?黙っちゃって」
あいちゃんは私が一人で黙ったまま皆のことを見ていたのを不思議そうに見つめている。
「こういうのって、いいなって。そう思ってたの」
「そっか。めぐちゃんにはこの風景は新鮮だったんだね」
「何で分かったの?」
「だって、そう顔に書いてあるもの」
「うぅ~、私顔に出てたの?」
「ふふふ。出てたよ~。でも楽しいよね。皆で食べるご飯」
「うん。凄く楽しい。あいちゃんと二人も楽しいけど、皆と一緒も楽しいね」
「そうだね。私優先って、本当なんだね」
「うん。そこは譲れない」
「ありがと。めぐちゃん大好き」
「私も好き」
私とあいちゃんが会話しているのをさやちゃんがじっと見つめているのが目に入った。
私と目が合ったさやちゃんが笑みを浮かべて私たちのところへやってきた。
「二人だけの世界になってたわね。本当にべったりなんだから」
「しょうがないでしょ。相思相愛なんだから。ね~、めぐちゃん」
「うん。さやちゃん何か用だった?」
「何もないわ。二人が楽しそうにしてたから揶揄いに来たの。でもなんだかやる気がなくなったわ」
「沙也加は意地悪だよね。それにめぐちゃんには優しいし…」
「そうかしら?私もめぐみさんのことが好きだからよ」
さやちゃんがとんでもないことを口に出した。
それを聞いた皆が一斉に驚いた表情で奇声を放った。
キーンと甲高い奇声に私の耳が悲鳴を挙げた。
両耳を塞いで音を遮断するのに必死だった。
「何を言ってるの!沙也加」
「何って?事実を言っただけよ」
前田さんがさやちゃんの所へやってきてニヤニヤしながら話し出した。
「西園寺さんって鷹司さんの事が好きってさぁ~、どういう好きなのぉ~?」
「そうね…」
前田さんのツッコミともとれる質問にさやちゃんは目を閉じて考え込んだ。
数秒たった後、目を開けたさやちゃんは口を開いた。
「人として、好きよ」
「それってさ~LOVEってこと?」
「ノーコメント」
「ずる~!西園寺さんずるーい」
「プライベートなことだから。それに二人の前で離すことじゃないわ」
さやちゃんが私とあいちゃんに視線を向けてそう答えた。
あいちゃんは黙ったままさやちゃんを睨んでいる。
少し体が震えているようだった。
私は彼女の手を取りぎゅっと握りしめた。
言葉に出すのではなく態度で示そうとした。
私の意図に気づいてくれたのかさやちゃんを睨むのを止めて私の方へ視線を向けた。
黙ったまま見つめ合い、そして笑顔で笑いあった。
さやちゃんの発言で午後の勉強開始が遅れてしまった。
あいちゃんとさやちゃんは何もなかったかのように午後の勉強会を進めている。
私はそんな二人を見ながらこんな私に対して好意を示してくれることを有難く思い、あいちゃんの嫉妬をどう宥めるか考えた。
さやちゃんとは一度ちゃんとお話する必要がありそうだ。
前にはっきりあいちゃん優先と伝えたが、もっと直接的に伝えるべきだと思った。
今日の勉強会はその後何事もなく終了した。
帰り道、あいちゃんが私の腕を抱きしめて離そうとしないのが少し面倒くさかった。
夕方の夏も、まだまだ暑いよね…あいちゃん。




