42.思ってたより…
別荘から自宅に戻ってから数日間が経過していた。
私は相変わらず部屋でのんびりと読書をしている毎日を送っていた。
明日は学校登校日。夏休みの課題提出があるが、私は既に全部の課題を終わらせているから鞄に課題を入れて明日提出するだけ。
今日ものんびり朝から積んでいた小説を読んでいるところである。
別荘から戻ってから誰とも会っていないがそういうこともありだと思っていた。
今まで沢山友達と遊んでいるからか、自分の中で満足してしまっているのかもしれない。
暫く読書を愉しんでいると携帯電話の着信が鳴り出した。
誰からだろう、画面を見るとあいちゃんからだった。
「もしもし?あいちゃん、どうしたの?」
「もしもし。あ、うん。めぐちゃんって今日どうしてるのかなぁ~って思って電話しちゃった」
「部屋で本読んでいるよ」
「そうなんだ。ね、これから一緒に遊ばない?」
あいちゃんからの遊びのお誘いの電話だった。
特に断る理由も無かったのであいちゃんと会う約束をした。
電話を切ってすぐに外出する準備をして橘さんに出掛けることを伝え家を後にした。
待ち合わせの場所へ向かって歩いていると向かい側からさやちゃんと小鳥遊さんが歩いていた。二人が私に気づくと声を掛けてきた。
「あら、こんなところで会うなんて珍しいわね。何処かへお出かけ?」
「あ、う、うん。あいちゃんと…」
「そうなんですね。私たちも偶然そこで会って何処かへ行こうって話してたんです。そうだ、皆で行きませんか?」
「小鳥遊さん、あいちゃんに聞いてみないと」
「そうですよね。私が説得しますっ」
「恵梨香さんったら。強引はいけないと思うけれど」
「大丈夫です。あいとは中等部からの友達なんで。鷹司さん、いいですよね?」
「あいちゃんがいいって言うなら」
「めぐみさんはすっかりあいに尻に敷かれちゃってるわね」
「あはは。それ、言えてます!あいって凄く嫉妬深いし」
「ははは。待ち合わせ場所すぐそこなのです」
「私達も行きましょ。いいわよね?めぐみさん」
「う…うん。いいと思う」
さやちゃんと小鳥遊さんの押しに勝てるわけもなく二人を連れて待ち合わせ場所へ向かった。
目的地に到着すると既にあいちゃんが待っていた。
私達を見るや私のところへ早歩きで向かってきた。
「めぐちゃん?これはどういうこと?」
「…えっと、ね。偶々二人に会って。一緒に遊ばないかって」
「なんでよっ!私と遊ぶって言ったじゃない」
私に詰め寄るあいちゃんを小鳥遊さんが間に割って入ってきた。
「あい。私が強引にそういうことにしたの。皆で遊んだほうが楽しいでしょ?別に鷹司さんを取るって話じゃないんだから」
「めぐちゃんは物じゃないんだから!それに私の恋人と二人で過ごす事の何がいけないの?」
「あらら。めぐみさんのことになると人が変わるんだから」
「沙也加はめぐちゃんに近づきすぎ!何されるか心配だよ」
「何もしないわ。めぐみさんとは近所に住んでるお友達ですもの」
「それ以外の感情は?」
「秘密よ」
「めぐちゃん!沙也加に何かされた?」
「…何も、されてない、よ」
「めぐちゃん!?歯切れ悪いけど?ほんとなの?」
「ホントだよ。さやちゃんとは何もないって」
「もういい加減にしなって。二人に失礼だよ、あい」
「だって…。恵梨香は知ってるでしょ?私の性格」
「知ってるからこそだよ。それに外暑いからさ。お店入ろう」
小鳥遊さんの誘導により一時休戦となったあいちゃんとさやちゃん。
私の腕を両手で掴んで離さないあいちゃんの姿を見ながら微笑みを浮かべるさやちゃん。
この二人は本当に怖い、そう思ってしまった。
暫く歩いた先に雰囲気のいい喫茶店を発見したのでお店に入ることになった。
お店の奥の4人掛けのテーブルに座り、店員さんに注文をした。
ひんやりとした空気と小さなボリュームで流れてくる心地のいい曲が私の聴覚を愉しませてくれていた。
「明日の登校日って宿題提出あったよね?皆終わってるの?」
小鳥遊さんの質問に私達三人は首を縦に振った。
「皆凄いや。私あと少し残ってるからな~」
「遊んでる場合なの?恵梨香ってギリギリまでやらないよね」
「ははは。まぁね。やる気でないんだもんな~」
「それだから成績下がってるんじゃないの?」
「手厳しいな~、あいは」
小鳥遊さん、成績下がってるんだ。
私と友達になって一緒に遊ぶようになったからなのかな?
それとも他に何か原因があるのかな?
私と出会う前の小鳥遊さんを私は知らないけれど、ちょっと心配だと思ってしまった。
「小鳥遊さん。もしよかったら私が勉強教えましょうか?」
「え?鷹司さんが?私に勉強を?」
「お節介ですよね。すみません…」
「いやいやいや。是非お願いしたいです!学年トップの人に教わるなんて凄く光栄です」
「ずるい!私も教わりたい!」
「私も教えてもらえないかしら?」
「あいちゃんは学年2位だし、さやちゃんだって学年4位でしょ。私に教わることないと思うけど」
「そうだよ。二人とも頭いいじゃんか」
小鳥遊さんはそう言って頬を膨らませて拗ねだした。
私は小鳥遊さんに勝手な罪悪感と私自身の満足感だけで勉強を教えるという提案をしただけなのに、三人共必死で私と勉強がしたいと訴えている。
この状況に少し可笑しくなってしまった。
すると三人も私の笑いにつられてしまっていた。
「中々纏まらないわね。だったら、私はめぐみさんに教わるのを諦めるわ。それで、私も恵梨香さんに勉強を見てあげる」
「いいの?」
「ええ。めぐみさんと私できっちり教えてあげるから」
「あー!それって結局めぐちゃんと勉強するってことじゃないっ。それだったら私も恵梨香に勉強教えるから!」
結局二人とも諦めることを止めようとはせず、私の意見も聞き入れる暇もなく勝手に話が進んでしまった。
小鳥遊さんは三人に教えてもらえることが嬉しいようでご機嫌な様子だった。
まぁ、それでもいいか、そう思った。
「それで何時にする?」
「私はいつでもいいけど」
「私も大丈夫」
「私も問題ないわ。何時でもいいわよ」
皆のスケジュールを併せて今週の日曜日に勉強会をすることになった。
私の家に皆を誘ってもよかったのだが、意外な人の家に行くことになった。
「私の家でやりましょ。部屋は沢山あるから」
「さやちゃんの家?そういえば一度もお邪魔したことがない」
「めぐちゃん無いんだ」
「私は一度だけお邪魔したことあるよ。夏休み前に」
「では決まりね。朝10時に私の家に来て」
さやちゃんの家、小鳥遊さんは行ったことあるんだ…。
ん?
そういえば何時からこの二人ってこんなに仲良くなったんだろう。
私だけ気づかなかっただけなの?
私の疑問に周りの女の子たちは気づくはずもなく、楽しく話をしていた。
私の思っていた小鳥遊さん救済計画も形を変え、勉強会となった。
明日の登校日で他の二人がこの話を聞いたら参加するとか言わないか心配になったが、参加したいなら拒むことはしないでおこうと思った。




