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40.別荘~海水浴場~

二日目の朝がやってきた。

今日は海辺で海水浴をする予定になっている。

女子三人は水着に着替えて日焼け止めクリームを肌が出ている箇所に塗っていた。


「めぐちゃんの背中にクリーム塗ってあげよっか?」

「え?でも自分で出来ると思うけど」

「しっかり塗らないと日焼けしちゃうわ。私の背中もお願いね、めぐみさん」

「ずるーい!私もめぐちゃんに背中塗ってほしい!」

「……二人とも」


私の背中をあいちゃんとさやちゃんが交互に塗り、私は二人の背中を交代で塗った。

なんか私の仕事多くない?


それにしても二人ともスタイルいいな…。

あいちゃんはクロのビキニ姿。

胸も大きくて、お腹はスラっとしていて足が長くて、まるでモデルさんのような。


さやちゃんはパレオをつけた水着姿。

胸は私とあいちゃんよりは小さめだが形のいいお胸で、お腹はすらっとしていて綺麗だった。


私はこの間購入した白のワンピースの水着。

二人に比べると本当にぽっちゃりとしていて恥ずかしくなってしまう。

持ってきていた紫のパーカーを羽織って部屋から出た。


「それ、暑くない?外暑いよ?」


あいちゃんはパーカーを着た私を心配そうにそう言った。

私は大丈夫と答えた。


外に出て私の姿を公開するのはとても恥ずかしいから、などと言えるわけもなく…。

本当は暑いけれど我慢するしかなかった。


「準備出来たから出発しますね」


孝之兄様は皆を車に乗せて海に向かった。

別荘から海水浴場まで約十分弱の距離にあり、徒歩でも行けるのだがこの暑さだということで兄様が心配して車で行くことになった。


海水浴場の駐車場には既に沢山の車が停車されていて、家族連れや友達同士、複数のカップル達が浜辺に向かって歩いていた。


孝之兄様は近くの駐車スペースに車を停車させパラソルや椅子などの道具を車から降ろして、それを凛久兄様と私たちで浜辺に運んだ。


私は飲み物が入ったクーラーボックスを持って皆の後ろを歩いた。

沢山の人で一杯になっている浜辺の景色が目に飛び込んできた。


「沢山いる…」

「どうしたの?大丈夫?」

「あ、うん。大丈夫。沢山人がいるなぁって」

「そうね。あ、凛久様がパラソル開いてるわ。私たちも急ぎましょ」

「うん。さやちゃん」


さやちゃんは私のことを気にかけてくれたんだろう。

毎年ここには来ているけれど浜辺に来て海水浴はしたことがなかった。

いつも家族だけのスペースがあって誰もいないところで家族だけの海水浴。

それが私たちの海水浴だった。


凛久兄様はテンポよくテキパキと設営をしていた。

パラソルと椅子が揃った頃に孝之兄様がやってきた。


「準備完了ですね。それでは、海を楽しみましょうか」

「はい」

「愉しもう~」

「私は少し休憩するわ。疲れちゃった」


あいちゃんは元気よく手を挙げて孝之兄様の号令に答えていたが、さやちゃんは椅子に座って一息ついていた。

私は早速一泳ぎしようと思い兄様方のいる所へ向かった。


「兄様方、よろしいですか?」

「ああ、そう、だね。孝之兄様、僕が連れていく、から」

「うん。分かりました。凛久君にめぐみさんをお任せします。めぐみさん、気を付けてくださいね」

「はい。孝之兄様。凛久兄様、ではお願いします」

「うん。さ、おいで」

「失礼します…」


凛久兄様の左腕を私は両手で掴んで海へと向かって歩き出した。

私たちの姿を見たあいちゃんが後からやってきた。


「どうしたの?どこか行くの?」


あいちゃんが不安そうに、そしてちょっと不機嫌そうな表情でそう質問してきた。


「あいちゃん。これは、ね。いつもお願いしてるの。海に入るときは兄様方にエスコートしてもらってて」

「なんで?私が行ってもよかったのに」

「う、うん…。これだけは…ね」

「九条さん。めぐみさん、いつも海で一人でいると、他の男に話しかけられる。それが怖いから。僕たち兄が、それを守る。だから」

「そうだったんですか。そうよね。めぐちゃん可愛いもの」

「あはは…。ごめんね。ちょっと海で泳いでくるだけだから」

「私も行くよ!一緒に泳ごう」

「あ、うん。でも私運動音痴だから遅いけど、よかった?」

「大丈夫だよ。愉しもう!」


あいちゃんはそう言って一緒に海に向かって歩いた。

足の付け根まで海に入ったところで凛久兄様に来ていたパーカーをお預けして首くらいまで浸かれる場所まで向かった。

凛久兄様は腰まで海に入れる場所で私たちを見守ってくれた。

実はこれもいつもお願いしていることだった。

一度海で溺れそうになった経験があり、一人で海に入ることを禁止されているのだ。

本当にドジなんだ、私は…。


「気持ちいいね~。めぐちゃん」

「うん。日差しが強かった分、海の中が冷たくて気持ちいい」

「ちょっとこっち来て」

「うん。どうしたの?」

「それっ!」


あいちゃんに近づいた瞬間、彼女は私の右腕を掴んだ。

楽しそうに笑っている姿を見るとどうも許してしまう自分がいた。


「海の中でもイチャイチャできるね」

「そう…だね。あまりくっつくと凛久兄様にバレそうだけど」

「大丈夫だよ。仲良しだなって思うだけだもん」

「だといいけれど」


それからあいちゃんとぷかぷか浮いたり、少し潜って海の生き物を見たりして遊んだ。

ちょっと疲れがたまってきたのでそろそろ一旦パラソルのある場所に戻ろうと私があいちゃんに声を掛けると、彼女はもう一回海に潜ろうと言ってきた。


二人一斉に海に潜ると彼女がトントンと私の肩突いたので彼女の方に視線を向けた。

すると彼女は顔を近づけて私の唇にキスをしてきた。

お互いの唇を3,4回重ねると息が苦しくなってきたので顔を出した。


「はぁはぁはぁ…。あいちゃん…、苦しかったよ」

「はぁはぁ。ははは。これも思い出に残るキスだね」

「そうかもしれないけど。溺れたら危ない…」

「大丈夫!私がめぐちゃんを守るからっ」

「…そろそろいこ。兄様も待ってるから」

「分かったよ。いこ」


あいちゃんのはしゃぎっぷりに毎回ビックリさせられる私と、それを愉しんでいる彼女。

凛久兄様と合流すると、兄様がバスタオルを私に渡してくれた。

上半身と塗れた髪をタオルで拭いてからパーカーを来て孝之兄様とさやちゃんがいるパラソルへ向かって歩いた。


私たち三人が海に行っている間、孝之兄様とさやちゃんは、というと…。


「めぐみさん、楽しそうですね」

「そうですね。あんなめぐみさん、私今まで見たことがなかったです」

「そうでしょうね。本当に困った両親です…」

「私はもっと早く、めぐみさんと仲良くなりたかったです」

「…本当に申し訳ないです」

「でも、今を楽しむことにしました。私のゴタゴタも、もうすぐ解決しますし」

「ああ、あの件ですか。よかったのですか?それで」

「ええ。私は嫌だったのです。勝手に決められた許嫁なんて」

「でも沙也加さんは西園寺家の一人娘ですし。そういうお家柄では?」

「嫌なものは嫌だったんです。だから条件を付けて納得させたんです。これで両親も無理はさせないでしょう。本当に鷹司家にはご迷惑をお掛けしました」

「いえいえ。それはいいのです。それにめぐみさんにとってもいいことですし」

「そう言ってもらえると助かります。めぐみさんには感謝しかないです」

「めぐみさんの事、宜しくお願いしますね。沙也加さん」

「はい。しっかりと」



私の知らない所で私の知らない話を孝之兄様とさやちゃんがしていたのを私はその時知ることはなかった。

意味深な会話の全貌を知ることになるのはまだ先のこと…。

海から上がってきた私たちを二人は笑顔で迎えてくれた。

孝之兄様は私とあいちゃんにドリンクを渡し、凛久兄様は自分でドリンクを選んでいた。


日差しが強く、暑さが増す中海水浴場に来ている人たちの楽しそうな声が充満していた。

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