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39.別荘(BBQ)

「さぁ、着きましたよ。ここが僕たちの別荘です」

「うわぁ~。凄く大きいお家ですね」

「…なんで、こうなっているんだったっけ…?」


事の始まりは、孝之兄様と夏祭りから帰ってきたときの話まで遡る。

浴衣から私服に着替えてお風呂へ入ろうと思い部屋を出るとお父様がリビングへ来るようにと声を掛けれた。私はリビングへ行くと家族全員が集まっていた。


「めぐみさん、今年も別荘へ行きますよね?」

「はい。その予定です、お父様」

「そう、ですか…。困りましたね」

「どうかなさったのですか?」

「実はね、会社でトラブルが発生してしまって、私と佐知子さんは別荘に行けなくなってしまったのです。だから今年は行くのを止めにしようかと思ったんですよ」

「そうなのですね。私は絶対に行きたいとは思ってませんから、行かなくても大丈夫です」


別に別荘に行きたいわけではない。

毎年恒例行事だったから何も考えず参加していただけだ。

仕事の都合では仕方ない。そう思っていたが、孝之兄様が話に割って入ってきた。


「お父様。それでしたら僕が連れて行くのはどうですか?車の運転は出来ます」

「孝之君、いいのですか?負担をかけてませんか?」

「大丈夫です。凛久君とめぐみさんと行ってきます」

「3人はちょっと少ないですねぇ。めぐみさんのお友達を誘ったらいかがかしら?」

「お母様…。急なお誘いになってしまいますから、参加されるかわかりません」

「でしたら、一度お誘いしてみてはどうかしら。義昭さん、いいですわよね?」

「勿論構いませんよ。出発までまだ日はありますからね。めぐみさん、誘ってみてくださいね」

「分かりました。一度お声を掛けてみます」


半ば強引に友達を誘って別荘に行くことが決まってしまった。

私は直ぐにあいちゃんに参加出来るか電話をした。

彼女は即答で参加することを希望した。


「楽しみだねっ!誘ってくれてありがと~」

「急に御免ね。当日迎えに行くから」

「分かった。待ってるね」

「うん。有難うね」

「こちらこそだよ」


嬉しさが伝わってくる彼女の声を聞きながら自分も嬉しいと感じた。


次の日の午後、西園寺さんが自宅にやってきた。

橘さんが私を呼びに部屋に来た。

西園寺さん、何の用事なのだろう。

私は西園寺さんがいるリビングへ向かった。

ソファに座っていた彼女は私を見ると立ち上がって私のところへ歩み寄ってきた。


「こんにちは。突然御免なさいね」

「どうしたのですか?」

「実は、私も一緒に別荘へ行きたいと思って、お願いしに来たの」

「え?でも、西園寺さんもご家族で別荘に行く予定があるって…」

「ええ。その予定よ。だから現地で遊びましょ」

「…現地?」

「あら?知らなかったかしら。私の家の別荘とめぐみさんの別荘、お隣さんなのよ」


え~!!

そんなの知らない、聞いてない。

今まで彼女と別荘であったことがない。

突然のカミングアウトに動揺を隠しきれない私を彼女は笑って見つめていた。

一瞬気が抜けたがすぐに回復した。


「そうなんですね。知りませんでした。今まで現地でお会いしたこともないですし…」

「ええ。会うことが許されなかったもの。会わないようにしてたのはとても大変だったわ」

「許されないってどういうことですか?」

「あ~っと…。それは小父様達から直接お聞きになって…。私には分からないから」

「そう、ですか…。分かりました」

「今年はご両親が参加されないって聞いたの。それで参加者を探しているって。だから参加したいなって。ダメだったかしら?」

「ダメではないです。では宜しくお願いします」

「有難う。用事はこれだけだから。これで失礼するわね。現地で会いましょう」

「分かりました」


彼女が別荘で私たちと一緒に過ごす事が決まった。

それにしても許されないっていったい誰が?

でもこのことを両親に聞いてはいけない気がしたのでとりあえず保留することにした。


そして今である。

兄様達とあいちゃんと私は別荘の玄関口にいた。

荷物を其々の部屋へ運び終わると一度一階で集合することになった。

荷物を部屋へ置いて一階に向かうと既に西園寺さんが遊びに来ていた。

あいちゃんには事前に西園寺さんの参加は伝えてある。

本人はとても不満そうだったのを如何にかこうにか納得してもらった。


「さて、昼食の準備を始めよう。女性3人で食材を、男性でバーべーキューの準備をします」

「分かりました。あいちゃん、西園寺さん、お願いします」

「ええ。分かったわ」

「了解だよ。めぐちゃん」


女性達で食材の下拵えをして外の庭にあるテーブルに運んだ。

兄様達は手際よくバーべーキューの準備をしていた。

既に炭に火をつけていた。

もろもろの準備が終了すると串にささった食材を網の上に置き火にかけた。

ジューっと焼ける音と食材が焼けるいい匂いで食欲をそそる。

焼けた串から其々で食べ始めた。


「おいしいね~。このお肉やわらか~い」

「本当だね。玉ねぎも甘くておいしい」

「ベーコンもおいしいわ。めぐみさん、これも食べて」

「あ、はい。有難うございます」


西園寺さんが自分のお皿からウインナーを私のお皿に乗せた。

あいちゃんも対抗する為か、自分のお皿から私のお皿に鶏肉を置いた。


「これもおいしいから、食べて」

「う、うん。有難う」

「ふふふ。九条さんってめぐみさんと仲がいいのね」

「勿論。凄く仲良しだよ」

「…そうだね」

「へぇ~。羨ましいわね」


女3人集まって二人が私を取り合うって構図、今まで想像も出来なかった。

私たちのやり取りを横目に兄様達は食材をどんどん焼いていった。


沢山あった食材はあっという間になくなった。

全員お腹いっぱいになって苦しいと言いながら椅子に腰かけていた。

孝之兄様から暫く休憩するよう提案されたので女性陣は部屋に戻って休ませてもらうことにした。


「は~。もう食べれない」

「少し食べ過ぎたわ」


あいちゃんと西園寺さんはお腹に手を当てながら苦しそうにしていた。

私はそこまで食べていなかったからか苦しくはなかった。

三人で大きいソファーに座って休憩していたら、あいちゃんが西園寺さんと話をし始めた。


「西園寺さん。私たち友達だし、愛称で呼ばない?」

「ええ。構わないわ。沙也加、でいいわ」

「それじゃ、私はあい、と呼んでね」

「わかったわ。あい」


二人のやり取りを黙って聞いている私に二人が視線を向けた。


「めぐちゃんもね」

「私も?」

「そうよ。沙也加って呼んで」

「…呼び捨ては流石に」

「なんでもいいのよ」

「じゃぁ、さやちゃん、で呼ばせてもらいます」

「わかったわ。あと、ずっと気になっていたのだけれど。私に対して敬語は不要よ」

「これは…。癖というか…何というか」

「でもあいには敬語じゃないじゃない?」

「それは、私が敬語止めようって言ったから。ね!めぐちゃん」

「う、うん。そうだね」

「じゃぁ、私も敬語はやめて、ね?」

「あ、う…うん。わかり…分かった。さやちゃん」


恥ずかしいやり取りをしている気がしてそわそわする私に二人は笑顔になっていた。

私は二人目の敬語禁止を約束したのだった。


その後話の流れで休憩が終わったら海に行くことになった。

今日は海には入らず浜辺を散歩することにした。


明日は、海水浴があるからだった。

水着姿を晒すのは恥ずかしい。

いつもはパーカーを来ているので明日もそうしよう。

そう思いながら海辺を三人で散歩した。


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