33.勉強会
明日から学期末テスト一週間前の時期になった。
中間テストの時私は総合学年一位を取った。
小学生のころからこの成績はずっと維持し続けている。
高校に入って初めて出来た恋人や友達の影響で成績が下がるかもしれないと思っていたが、常日頃自宅学習が習慣になっていたらしく成績は下がらなかった。
そして今度の期末テストに向けて自宅で静かに勉強すると思っていたのだが、ある人物の悲痛な叫びによって一人で静かにとはいかなくなってしまった。
「あのさぁ~、期末テストさぁ~、誰か勉強教えて~!」
「結衣…貴女、もしかして成績下がったの?」
「うぅ…、今度の期末テストで赤点取ったら夏休み強制補習っていわれたぁ~!」
「もう…、日頃から勉強しないからそういうことになるんでしょ」
「だってぇー。誰かぁ~、お助けくだされぇ」
呆れ顔の瀬戸さんと必死で夏休みの強制補習を回避したい前田さん。
前田さんの希望を叶えてあげたいと思いつつ、っ私自身の勉強もある為軽はずみな提案は出来ない。
前田さんに救いの手を差し伸べたのは以外にもあいちゃんだった。
「だったら、皆で勉強会しない?」
「おぉ~!やりたぁい!」
「遊びじゃないのよ?それ分かってるわよね?」
「わかってるってばぁ~。愛子ちゃんってば、怖い顔しないでー」
「んっとにも~。皆はどうしたい?」
瀬戸さんが他の子達に話を振ると私以外全員賛成だった。
正直勉強会って参加するのが面倒くさいと思ってしまう私。
黙ったままどう回避しようかと思案していると西園寺さんが私の肩に手を置いた。
「ね、鷹司さんはどうするの?」
「私ですか。私は出来たら一人で勉強したいです」
「そうなの。確かに鷹司さんは向いてないかも」
そう言いながらクスリと笑う西園寺さん。
そのやり取りをこっそりあいちゃんが見ていたということを私は後に知ることとなった。
話が進む中参加の意思表示をしてないことが発覚してしまい、どうするのかと問われてしまった。
正直に答えたい、話そうと口を開こうとすると、西園寺さんが先に話し出した。
「鷹司さんって人がいるところで勉強するの苦手みたいなの。昔からそうだもの。だから無理強いはよくないと思うんだけど」
そう話すと小鳥遊さんが話し出した。
「それもそうね。自由参加としましょうよ」
「そうね。参加する人は?」
瀬戸さんの問いに私と西園寺さん以外が手を挙げた。
西園寺さんも参加しないんだ、なんか以外かもしれない。
でも何であんなこと言ってくれたのだろう。
別に人がいても居なくても勉強くらい出来るのに。
彼女のフォローの意図することが分からないが取り合えず一人で勉強出来ることが決まった。
各々解散することとなり、私と西園寺さんは自宅に向かった。
暫く他愛もない話をしながら歩いていたのだが、西園寺さんが急に立ち止まった。
「どうしたんです?急に立ち止まって」
「うん。あのね、鷹司さん。お願いがあるんだけど…」
「はい。どんなことでしょうか」
「あの…、私とテスト勉強しない?」
「え?西園寺さんと、ですか?」
「うん。私の部屋でもいいし、鷹司さんのお部屋でもいいから」
「何故です?先程勉強会に参加されなかったのに」
「私まだ馴染めてなくって。だから参加できなかったの」
「そう、なんですか…」
西園寺さんが他の子と馴染めていないことは薄々気づいていた。
いつも私の傍に座ってあまり他の人とコミュニケーションされているところを見たことがなかったからだ。
本当は参加したかったのかもしれない。
少し可哀想だと思い彼女を私の部屋に案内することにした。
一旦自宅に戻ってから私の部屋に行くと言い残し彼女は自宅へ戻った。
私も自宅へ戻り制服をハンガーに掛けて私服に着替えた。
暫くすると西園寺さんが訪ねてこられたので自室へと案内した。
「早速始めよっか」
「そうですね」
私と西園寺さんはテスト勉強を始めた。
最初は二人とも黙ったまま勉強に取り組んでいたが、暫くすると西園寺さんが私に質問するようになった。
西園寺さんはそこそこ勉強は出来るらしいのだが数学がとても苦手であることが判明した。
数学もクイズと思えばとても楽しい科目だと私は思うのだが、それを以前小鳥遊さんに伝えてしまったところ、勉強が出来る人だからそう思うんだ、と言われてしまった。
なのでこのことは誰にも言うまいと心に決めている。
「休憩しましょうか。私お茶持ってきます」
「あ、うん。有難う」
私はお茶を取りに部屋を出た。
キッチンには橘さんが既に私たちのお茶を用意してくれていた。
橘さんにお礼を伝えて再び自室に戻った。
「どうぞ。これお茶うけです」
「有難う。それにしても鷹司さんって凄く綺麗にされてるのね」
「あまりものが無いので」
「そんなことないよ。それにいい香りもするし」
「バラの香りが好きなんです」
「そうなんだね。今度私もこの香りにしてみようかしら」
「後でメーカー教えましょうか?」
「有難う。是非教えてほしいわ」
彼女との会話がこんなに進むなんて今までなかった。
彼女は笑うととても素敵になる。
肩まで伸びている髪の毛は艶々で綺麗な黒髪。
いかにもお嬢様という雰囲気を醸し出しているのに、話をすると意外にも気さくだったりするのだ。
「ところでさ、鷹司さんって付き合っている人、いるの?」
「え?付き合ってる人は居ませんけど」
「そうなんだ…。じゃ、私が鷹司さんの彼女に立候補しても、いいかな?」
「え!?」
突然な話にビックリしてしまった。
どういうことか訳が分からない。
困惑した私に対して西園寺さんは真剣な表情をしていた。
「前から鷹司さんの事好きだったの。友達としてではなくって。人として…」
「でも、私たち同性ですよ。異性なら兎も角」
「性別は関係ない。私は貴女に惹かれたの。貴女の人としての魅力に」
「魅力って…。私の小学校の時の事知ってますよね?暗くて人と話すこともなくて。友達もいない私のどこに魅力があるんですか?」
「小学校の時は本当に御免なさい。何度も声を掛けようとしてたの。でもお母様から絶対声を掛けてはダメだって止められてて。それに鷹司さん本人も知ってることだからって言われて」
「何のことです?私は知りませんよ?」
「え?知らなかったの?じゃぁ、知らないでずっと耐えてたってこと…?」
何の話をしているのかさっぱり理解できない。
西園寺さんから詳しいことを教えてほしいと懇願したが、この話はまた後でちゃんと話すと言われてしまい中断した。
昔のことだし気にしても仕方がないと割り切ることにした。
彼女の告白の件もうやむやになり、中断していたテスト勉強を始めることになった。
テスト勉強が終了したのは夕食前だった。
彼女のお迎えが来たと橘さんが伝えてくれたので彼女は荷物をまとめ始めた。
「また勉強しようね。後さっきの話の続きもしたいし」
「…分かりました。また明日勉強しますか?」
「ええ。また明日しよう」
「分かりました」
部屋を後にして彼女はお迎えの人と共に自宅を後にした。
私の事が好きだという人物があいちゃん以外に出現することになるとは夢にも思わなかった。
それも私の過去を知っている人からだなんて、ありえない話だ。
この話は絶対あいちゃんには秘密にしないとダメだ。
明日西園寺さんの口を塞がないと。
期末テストも頑張らないと。
今度の期末テストも総合一位になって、友達がいても成績は維持出来ると自分自身に証明するんだと思いながら再び自室へと戻った。




