11.お泊り(前半)
土曜日の朝。
私はいつもの時間にセットされた目覚まし時計のアラームで目を覚ました。外の光がカーテンの隙間から零れ落ちていた。今日は九条さんの家にお泊りの日。
パジャマから白のワンピースに着替えて部屋を出た。階段を下りてリビングへ行くと既に家族全員揃って座っていた。璃子さんが朝食の準備をしていたので私もお手伝いをしようと向かうと兄様達が席から立ち上がり璃子さんのお手伝いを始めてしまった。
テーブルの上に次々に朝食が運ばれあっという間に準備が終わってしまった。流石兄様達、私がどんくさいから見てられなくて手伝ったんだろう、そう思いながらいつもの席に腰掛けた。
「おはようございます、めぐみさん。今日はお友達のところに何時に向かうのですか?」
頂きますと声に出して食パンに手に取っていた私にお父様が私に声をかけてきた。私は午前10時に駅で待ち合わせだということを伝えた。すると長男の孝之兄様が話しかけてきた。
「そこの駅だったら僕の用事先の近くだから、車で送ってあげます。めぐみさん荷物あるなら後で取りに行きますから用意しておいてください」
「え…?私歩いて行くつもりですが……」
「僕が送っていきますから。父様、それでよろしいですよね?」
「ええ、そうしてあげてください。めぐみさん、それでよろしいですね」
「あ、はい…。孝之兄様、有難うございます。宜しくお願いします」
お父様も、兄様も過保護過ぎではないだろうか。そう思いながらお母様の方に目をやると、にこやかにしていた。まぁ、送ってくれるならそれでいいか、そう思った。
朝食を済ませ出かける準備も終わり荷物を持って部屋を出ると凛久兄様が立っていた。兄様は無言で私のカバンを持つとそのまま玄関に向かった。兄様の後ろについていく私。凛久兄様も私のことを気にしている?それとも心配しているのか?兄様達の行動の意図が掴めない。
玄関を出ると車が既に用意されていた。孝之兄様がドアを開けてくれたのでそのまま乗り込んだ。凛久兄様は後ろの席に私の荷物を置いて私のことを見ると笑顔で手を振った。
「凛久兄様、有難うございます。行ってきます」
「…ん。気を付けて、ね」
言葉少ない凛久兄様。これでも精一杯の笑顔だといわんばかりの表情をしながら手を振っていた。孝之兄様が出発するねというと車はゆっくり走り出した。どうして私が外出すると兄様達は必要以上に助けてくれるんだろうと思いながら外の景色を眺めていた。
駅に到着すると孝之兄様は後ろの席においてあった私のカバンを持って外に出て私の席のドアを開けてくれた。外に出てカバンを渡してもらうと兄様は笑顔で手を振って再び車に乗って走り出した。至れり尽くせりだ。
改札口前で待っていると九条さんが時間通りに現れた。薄い青色の服に白のスカート、白い靴をはいていた。笑顔で手を振りながら近づいてきたので私も笑顔で手を振って迎えた。
「おはよう、鷹司さん。待った?」
「おはよう。今さっき付いたところだよ。可愛い服装だね。九条さん可愛い顔だからとってもお似合いだわ」
「え~!ホント?ちょっと気合入れちゃった。ありがと。鷹司さんもとっても可愛いワンピース。凄くお似合いだよ」
「有難う」
「うん!それじゃ、行こうか」
「うん」
九条さんについて歩き出した。家に行く途中あの三人組の話になった。なぜ私があの子たちと仲良くなったのかとか、あの子たちの中等部時代の事とか、色々な話が聞けた。今後の参考になる話でとてもありがたい、そう思った。
「もうすぐ、着くよ」
「割と駅から近いんだね」
「そうなの。だから通学も楽で」
「そうね」
ずっと笑顔な彼女を見ていると本当に可愛いなって思ってしまう。こんな可愛いなら男子にモテるだろうに。どうして彼女は私を選んだんだろうか。いまだに謎だ。そう考えていると九条さんが私の手をぎゅっと掴んだ。いきなりの出来事で驚いた私は彼女の顔を見ると恥ずかしそうに頬を赤くしていた。恥ずかしいのかな。外で女の子同士が手を繋ぐのって恥ずかしいよな。でもなんか嬉しそうだし私はその手をぎゅっと握り返した。
「嬉しい…。私ずっと鷹司さんと手を繋いで歩きたかったの。本当に嬉しいわ」
「そう、なんだ。私の手でよかったらいつでも握って、ね」
「うん!そうする」
そうこうしていたら彼女の家の玄関の前に着いた。ドアの鍵穴に鍵をさし、ドアを開けて私は家に入った。フローラルな香りがすっと鼻孔をを擽る、いい匂いだ。
彼女の部屋に通された私はクッションの置いてある所に座るよう言われた。彼女は飲み物を取りに行くと言い残し部屋を後にした。ここが彼女の部屋なんだ。玄関口から匂った香りとはまた違った匂いが漂っていた。ラベンダー?アロマオイルの香りかな?そう思いながらあたりを一通り眺めた。
ピンクをベースにした部屋。大きなベッドと、可愛らしい机と椅子。部屋の中央には小さなテーブルがセットされている。壁には整った本棚や制服が吊るされているのが見えた。今日ここで私は一夜を過ごすんだなって改めてそう思った。




