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ナーアヴェン~ある雨雲の物語~  作者: シャムローズ
第四章:グレーイの帰還
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~雲散霧消~

♪ BGM : DEVILMAN crybaby - Crybaby

 

 デュオルクは、眼球がまぶたの外へ出そうになるほど、目をカッと大きく見開いていた。頭をあらゆる方向に動かし、目の前にいる全員の動きを、まるで狩りをしている猛獣のようにじっと見つめた。


 その間、ウルナーは巨雲の腕の中で窒息しそうになっていた。彼女は必死に抵抗したが、無駄だった。この体型差では無理もない。ついにグレーイは、元の灰色の雲の姿に戻ってしまった。


「いい子だ、グレーイ。理解が早くて助かるよ!」と、デュオルクが犬のように吠えた。「あとは、そこの年老いたメスフクロウ。貴様に口を開くことを禁じる。喋るな。一言も発するな。貴様のようなマジマルがどういう能力を持っているか知っているぞ…もし一歩でも動けば、このチビの首を叩き落としてやるからな!」


 こんな風に慌てるデュオルクを見ると、本当に追い詰められているのが誰なのか分からなくなる。グレーイなのか、それともデュオルクなのか?


 グレーイは、一歩も動かずにデュオルクを倒す方法を考えた。しかし悲しいほどに何も浮かばなかった。瞬殺出来るかもしれないが、それではウルナーの身にも危険が及ぶ。最悪の場合、命だって奪いかねない…過去に一度、ウルナーを危険な目に遭わせてしまったことが、グレーイの中ではトラウマになっており、二度と同じ過ちは犯さないと心に誓っていたのだ。


 パリはパリで、慎重に行動していた。パリはデュオルクの力がハルの石によるものだということを、実は見抜いていた。なぜならあの奇妙な力は、あのトゲトゲの蛇、アテリスの洞窟で感じたものと同じだったからだ。


 しかも、その力が使われるところも目の当たりにした。それはパリの、つまりマジマルの持つ力に酷似していた。つまり、精霊たちの力だ。だが、ただの精霊ではない。ミナモト、つまり力の4大元素からではなく、別の何かから作られているようだった。


 さらに、恐るべきことにデュオルクは、精霊を召喚している様子を見せていない。どちらかと言えば、精霊の力を自分の中に有している、という感じだ。


 とはいえ、今は思索にふけっている場合ではない。何か打開策を見つけなければ!比べるまでもなく、デュオルクの力は自分を遥かに凌駕している。鬼とフクロウでは、当然だ。しかし、だからといって再びあの『殲滅の力』を使うことは出来れば避けたい。前回受けたダメージがあまりに大きく、今もまだ完全に回復はしていない。使ったが最後、もう目覚めることはできないだろう。それに、今回はウルナーがいる…


 この八方塞がりの状況に、パリは大人しくしているしかなかった。動かず、好機をじっと待とう。


 空が雷鳴を上げ、不吉な風が町を通り抜ける中、デュオルクは突然、高らかに笑い始めた。まるで今まで笑ったことがないように。歪んだ笑い声が辺りに響き渡った。その光景を前にして、グレーイは震え、怒りと無力感に耐えていた。涙が目の奥から込み上げてくる。


「ははは、言葉も出てこないか!」白い鬼が叫んだ。「そこから動くなよ。貴様だって、このチビが死ぬのは嫌だろう?こいつが死んでも、俺様は痛くも痒くもないが、貴様だってこいつが死んでもいいことないよな?俺様が望んでいるのはたった一つ。貴様の死だ、神の失敗作め!」


「卑怯者め…誇りも捨てたか。」とグレーイは静かに応えた。


「そうだな、犠牲ってやつは必要な時がある。だがな、俺様も貴様もよーく分かっているはずだ、正しいのは俺様だってな!」デュオルクは嘲笑を浮かべた。「貴様は呪いなんだよ!さて…動くなよ、そして、死ね!!!」


 グレーイはイライラと歯を強く噛みしめた。あまり長いこと考えていられる時間はない。


 だが、どうしたらいい?デュオルクを倒し、ウルナーを失うのか?それとも、このままやられる方がいいのか?どうすれば…!


「くっそーーーーーーー!!!!!!!!!!!」雨雲は空気が割れてしまうほどの大声で叫び、地面に両手を叩きつけた。


 その手がメリメリと地面に食い込み、巨大な穴が出現した。数秒間、まるでこの世が終わってしまったかのような静寂が、辺りを包んだ。そして、遂にデュオルクは腕をグレーイに向け、黒いエネルギーの塊を作り上げた。


 もし、グレーイがそこから動かなければ、間違いなくその攻撃は直撃し、一発であの世行きだ。だが、避ければウルナーはどうなる!?グレーイは頭を抱えた。


 くそ、なんで戦いを長引かせてしまったんだろう!?やろうと思えば、もっと早くケリをつけることが出来たじゃないか!なんて愚かなんだ、俺は!ハルの石の力を見くびっていた。それは未だにデュオルクの中にあり、力を増幅させているというのに!


 数メートル離れたところで、アプルは、恐怖の光が広がっているその目で、眼前の光景を見守っていた。グレーイをこのまま死なせたくはないので、グレーイのもとに飛び込み、戦いの場から引き離そうと考えた。以前にグレーイが自分を救ってくれた。生まれ故郷は破壊され、家族を失って絶望の底にいた時、グレーイが生きる光を見せてくれた。だから、今度は私の番だ。


 目の前で、友であるグレーイが死の危機にあるのであれば、自分の命を差し出す覚悟さえあった。例え対象がパリでも、アグニズでも、同じことをするだろう。アプルはもう二度と、家族と呼べる存在を失いたくなかった。大切な存在を失ってなお生き続けることの辛さを知っているのだ。


 確かに一緒に旅をした時間は短い。しかし、その短時間でも、極めて強い絆が結ばれていた。絆の強さは、過ごした時間の長さではない。グレーイとアンシャンバーダルが、既にそれを証明している。



 アプルの頭の中で様々な考えが交錯する中、デュオルクが一瞬こちらに視線を向けたのを見た。まさか、考えを読まれた?違う、鬼は攻撃の備えをしながら、慎重に全ての動きを看視していたのだった。


 必要であれば、ウルナーさえ躊躇いなく殺すつもりだった。少しだけ残っていた良心すら、ハルの石によって完全に葬り去られていた。


 ついにデュオルクはその腕を伸ばし、攻撃を放つ構えをした。この攻撃で、ネフェリアの町の一部が消し去られる可能性もあった。もしかしたら、町の反対側に住む住民たちは、まだ家にいるかもしれない。残念ながら、もうこの町の長は、自分の町の住民の安否など、これっぽっちも頭になかった。その目に映るのは自分と、雨雲だけ。


 グレーイはその構えを見る前に心を決めていた。犠牲になるのは、自分だけで十分だ。


 みんなのことを思えば、ここで幕を引く方がいいのかもしれない。自分のせいで他の誰かが死ぬなんて、まっぴらごめんだ。他の誰か、にはもちろんウルナーも入っている。


 グレーイはデュオルクに向き直り、その目を真っ直ぐに見据え、死を覚悟して立ちはだかった。しかしその瞬間、グレーイの頬を、涙が伝い始めた。


 英雄は、守りたいものを守るために己を犠牲にする時、泣くものだろうか?いや、恐らく違う…しかし、この世界で生き続け、もっと世の中のことを知りたいと願う雨雲は、涙を堪えられなかった。


 泣くグレーイの目の前でデュオルクは、ネフェリアを脅かす脅威を確実に仕留める為に、手のひらにエネルギーを集中させていた。その顔はまるで、血に飢えた猛獣のような恐ろしい顔付きであった。


 まさにその瞬間、まるで隕石のようにザグニが空から降ってきた。いや、飛び降りてきた。そしてデュオルクの背中の真ん中、グレーイが、長がハルの石を取り込む前に殴った場所と、寸分たがわぬ位置に、燃え上がる蹴りを叩き入れた。


 火の粉が雨のごとく舞い、眩い爆発が起こった。


「てめぇ、その子が痛がってるじゃねえか!くそデブ野郎!」と石炭が叫んだ。


 デュオルクはものすごい勢いで吹き飛ばされた。攻撃された弾みでウルナーを手放し、ウルナーも叫びながら地面を転がった。ぐちゃぐちゃの泣き顔で、声は枯れていたが、逃げるように力の限り走り出した。かつては町の長だった悪魔から逃げるために。


 だが、デュオルクもすぐに立ち上がった。ウルナーを見つめるその目は、血を求めて光っていた。口元からよだれを垂らし、割れそうなほどきつく歯を食いしばっていた。


 デュオルクが何かをする前に、再び黒い雲と化したグレーイが、瞬時にデュオルクの喉元を掴んだ。そして恐ろしい力で締め上げた。グレーイが力を込める毎に、デュオルクの意識は遠のいていった。


 グレーイは手も力も緩めることはなかった。逆だ。どんどん力を強くしていった。アプルとパリは、その光景を目にしてすぐに気が付いた。グレーイは、デュオルクを殺すつもりだ。


「グレーイ、ダメ!」と、パリが叫んだ。「そんなバカの為に手を汚すな!あんたはアイツとは違う!アイツはもうおしまいだ。殺したってなんもならねぇよ!」


「このクソッタレは、バーダルを殺したんだ!!!」グレーイは怒鳴り返した。「当然の報いだ!!!」


「パリの言う通りよ!」震えながらアプルも加勢した。「お願い、パリの言うことを聞いてちょうだい!そいつの罪を暴いて、裁いて、罰してやればいい!でも殺しちゃダメ!それに、グレーイはそんなこと出来ないでしょう?私は知ってるわよ。あなたは、そんなことが出来るエルムじゃないって。お願い、グレーイ…あなたはもう、あの長を倒したのよ…」


「当然、俺が殺らないと、死んでいたのは俺か、ウルナーだった…」


 その横で、ザグニは何も言わなかった。グレーイの体内を血液のように駆け巡る怒りがどれほどのものか、よく分かっていた。ただ、深刻な表情のまま無言で、グレーイの傍にいた。


 ウルナーはそこから数メートル離れたところにいた。もう走ってはいなかったが、涙を止めることはできていなかった。視線の先にいる雲は、ウルナーが知っている雲とは異なる様相を呈していた。あれは、かつてグレーイだったものだ。今ようやくウルナーはそれに気が付いたのだ。


 再会した時にグレーイにこう言葉をかけた。『でもグレーイはちっとも変ってないね!』ひょっとして間違っていたのだろうか?見た目には分からないところで、グレーイは変わってしまっていたのでは?そう自問し、ウルナーは勇敢にも顔を上げ、涙をぬぐい、声を上げてこう言った。


「グレーイ!うちは無事だよ!だから大丈夫!心配しないで!それにね、デュオルクにも子供がいるの!だから、もしグレーイが殺しちゃったら、そいつと同じ罪を犯すことになるし、一生後悔すると思うの!ネフェリアのみんなが、グレーイのこと、どう思うと思う!?みんなが言ってる『灰色の雲は危険だ』ってことを、グレーイが自分で証明しちゃうことになるんだよ!?」


 本当にこれが子供の言葉だろうか?思慮分別のある言葉だった。グレーイはウルナーの声を聞き、ハッと我に返った。そして、喉元を締め付けていた手が徐々に緩んでいった。


 憑き物が落ちたのように突然、グレーイは平静を取り戻した。


 その時のグレーイの脳裏には、アンシャンバーダルとの思い出が鮮明に浮かんでいた。井戸での騒動、グレーイという名前をつけてもらったこと、それを誇りをもって受け入れた、あの日のことを…


 厳しい訓練の日々のこと、ボロボロの小屋で越したいくつもの夜のことも、白い老雲と過ごしたかけがえのない日々の思い出が、次々に浮かんできた。例外なく、デュオルクと評議会に立ち向かうために、あの老いたエルムが命をかけた日のことも。全ては今日の日の為だったのではないか?今バーダルの体は、グレーイがそうしたまま、大きな木に寄りかかっているはずだ。


 体はそこに未だあれど、精神はどこかに旅だってしまった。グレーイがその行先を知るはずもない。ああ、師が生きていてくれたら、この疑問の答えを教えてくれただろうに。そう、あの頃のように。


 心の中でグレーイは、バーダルがいつものあの笑顔で笑っているのが見えた。そして、あの控え目な笑顔で、心の中のバーダルが言った。「お前のおかしな質問にはうんざりじゃ、小僧!」


 ついに、グレーイはデュオルクを完全に解放した。だが、デュオルクがぐったりと倒れ込もうとした時、グレーイは拳を振り上げ、すさまじい力でその顔面に叩きつけた。迷いなく叩き込まれたその拳は、まっすぐにデュオルクの顔に命中し、凄まじい衝撃で体が折れ曲がった。


 その一撃はあまりにも強烈で、デュオルクは瞬く間に町の反対側に向かって吹き飛ばされた。宙を舞う最中、長は意識を取り戻した。体中を駆け巡るような激痛は感じたが、何が起こっているのかは全く理解が追いつかなかった。ただ、奇妙な空気の流れに運ばれていることだけは感じた。


 グレーイは怒りに任せて、ツの力を解き放ちながら叫んだ。


「俺は灰色の雲だ!!!!!!!!!」


 その言葉とともに放たれた波動は、大型の津波のように一気に広がり、空っぽの家々を吹き飛ばして、間もなく白い鬼となったデュオルクに到達した。


 そして、衝撃波がその体に直撃し、デュオルクは自分の巨体が少しずつ、大量の水と空気の波の中に消え去っていくのを感じた。周囲で見守っていたものたちにとってはほんの一瞬の出来事だったが、デュオルクにとっては永遠にも思える時間だった。


 自分の体が溶けていくのを感じながら、不思議と子供だった時の自分のことを思い返していた。元気いっぱいにネフェリアの村中を駆け回っていたあの日々。学校での思い出もたくさんあるが、何よりの思い出は、村一番の悪ガキである、ヴァピオールと喧嘩をしたことだな。それから、父の顔が浮かんだ。その横で笑う母の姿も。家に帰ると、いつも玄関を開けてくれて、おかえり、と迎えてくれたっけ。


 その幸せな日々を、デュオルクは心の底から大切にしていた。心から願っていたことはただ一つ、もう一度その日々を取り戻すこと。アロイが町を支配していた時のように、絶望の中で生きるのはもう嫌だった。だから強くなろうと思った。だから権力が欲しかった。灰色の雲が再び現れても駆除できるほどの力が。


 繰り返される悲劇を断ち切れば、また幸せな日々が戻ってくると思っていたのに!


 どこで間違えたのだ?その問いに答えるように、突然バーダルの姿が心に浮かんだ。かつて、独房の中でアンシャンが発した言葉が、再びデュオルクの心に響いてきた。


「アロイが瞳に宿していた深い闇は、グレーイの目には見て取れん。むしろ、グレーイの瞳は光で満ち溢れておる!しかし、憎しみと言う闇は伝染病のように広がるものじゃ。しかも今日では、ネフェリアの町全体が、憎しみによって導かれておる。なぜなら、お前さんの中にその闇が宿っておるからじゃ。」


「よくも貴様、長にそのような無礼なことを!」と、その場にいた一人の護衛が吐き捨てた。


「だが、お前さんには感謝もしておる。」バーダルは構わず続けた。「息子に辱められたツィムの気持ちが、今ならよく分かる…わしがあの時に犯した罪の代償を、今やっと支払えた気がしておるよ。唯一の後悔は、お前さんが、我々の中で最も才能ある雲だった幼雲が、こんな風になってしまったことじゃ…かつては、誰もが目を見張る雲であったのじゃぞ、デュオよ。」



 デュオルクは何も返さなかった。死に瀕した老いぼれの戯言だと思ったのだ。バーダルの結末は自業自得だと、デュオルクは自分に言い聞かせた。しかし、心の奥底では、何かが間違っていることも分かっていた。


 体がほぼ消えかけた時、いつからこうなってしまったのかを考えた。いつからこんなに残忍で乱暴になってしまった?一体いつ、かつて反吐が出るほど嫌っていたものになり下がってしまった?今の自分になったのはいつからなんだ…?


 かつての幸せな日々を取り戻すことは、もう出来ないのだろうか。幸せの答えは、ずっと目の前にあったというのに。幸せへの道は、まっすぐとある一点に向かって伸びていた。妻のヌベと、息子のツィムだ。


 なのにそれに気が付かず、自分の野望を成し遂げるために、家族を捨ててしまった。そして、奈落に落ちていくように、狂気と憎しみの沼へと落ちていった。蜘蛛の糸を誰かが垂らしてくれていたのに、それを掴もうとしなかった。


 グレーイの攻撃によって体が消えていく中、デュオルクの心には様々な記憶と思いが止めどなく溢れてきた。


 グレーイのツによる途方もない圧力で、顔が消えかかる最中、デュオルクは妻と息子のことを想った。最期の時に、こちらに向かって駆けてくる姿が見えた気がした。体中が不思議な温かさに包まれ、突然、目には涙があふれてきた。『許してくれ』と、ただ一言言いたかったが、もう遅すぎた。


 そして突然、ふっとネフェリアの長は、跡形もなく消滅した。遠くから見ていた住民たちには、壮大な花火が空を埋め尽くし、その爆発の衝撃で雲が消えていく様子だけを見ていた。これが、デュオルクの物語の最終章、最後のページである。


 この悲劇的で、美しくもある爆発の後、グレーイは仲間たちの方を振り返った。胸が締め付けられるように痛い。なぜだか、仲間たちの目を直視する気分になれず、足元を見た。だが、最終的に勇気を振り絞って、顔を上げた。


 最初にザグニを見た。その顔には、気まずい時にいつもしている厳粛な表情が浮かんでいた。ウルナーはその場で泣き崩れた。パリは無言だった。エルムの姿の時では、何を考えているのかを推しはかることが難しい。しかし、それでも察した。パリが感じているのは、悲しみに溢れた失望だと。


 そして…アプルの顔に、まさにその感情が現れていた。その表情を見た時、グレーイは、まるで凍った湖に落ちたかのような心地がした。その純粋な瞳が告げている。またしても、グレーイは失敗したのだ。


 デュオルクでさえ果たせなかったことを、アプルは視線だけでやってのけた。グレーイの心臓は真っ二つに切り裂けた。


 グレーイは顔を上げ、空を見つめた。雲がまだいくつか流れている。再び、数か月間共に旅をしてきた仲間たちの顔を見つめた。その瞬間アプルは、雨雲の真っ白な瞳の中に、不思議な輝きが一瞬だけ閃くのを見たような気がした。


 そしてグレーイは飛び立った。地上から空へ、漆黒の竜巻を巻き起こしながら。あまりの勢いで、空に残っていた雲をも吹き飛ばし、美しい青空と、光の筋を露わにし、その眩い大空へと、消えて行った。


グレーイは去った。仲間を残して遠くへ。

ネフェリアは長と誇りを失ったが、もっと大切なものを失った者もいる。

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