~無双~
♪ BGM : ドラゴンボール超 ブロリー- 野生児、ブロリー
舞い散る砂埃の陰に、何物かの陰があった。他のエルムとは違う。彼らがこの戦いの場に足を踏み入れたその瞬間、激しく一帯が揺れ始め、まるで惑星が今にも爆発するのではないかと思うほどだった。
こんなにも好戦的なオーラがこの世に存在しているなんて、誰も想像もしたことがないだろう。まるで熱波が水平線を捻じ曲げてしまったかのように、色も形も混ざり合い、空間は歪んだ。本当にこれがこの世界に属する存在なのか?
その中の一つだけ、他のものと一線を画していた。これが全ての現象の元凶だ。色を全て吸い込んでいるかのようだ。強大な力がそこ一点に集中しており、まるで現実の出来事とは思えなかった。主人公たちはまだ地面に押し付けられており、親指一本でさえ動かせ時にいた。この謎多き来訪者が発している圧力のせいだ。
これらの生き物のジンを一目見ただけで、予定通りに事が運びそうにないことを悟った。アテリスでさえ、この驚異的な力に不意を突かれたようだ。意識を取り戻したばかりのグレーイは何が起こっているのか分からず、必死に立ち上がろうともがいていた。
グレーイは、徐々に消えゆく埃で出来た霧の方に顔を向けた。そして、その後ろにナニカがいるのにすぐに気が付いた。実際、グレーイが疑問に思ったのは、そこに「誰が」いるのか、ではなく「何が」あるのか、だった。
そこにいるのは3エルムと1マジマル、合計4つの、主人公たちと同じ編成のパーティーだった。
最初に姿を現したのは、煙の背後に既に見えているほど巨大な存在だった。黒い石でできたゴーレムのようで、その姿は人型から程遠く、エルムより遥かに原始的だった。顔はひび割れた火打石のように傷んでおり、頭には大きな炎が揺れていた。
アグニズに多少似ていたが、こちらの方が何倍も大きい。デュオルクやスラゼと比べてみると…この巨人の前では、彼らでさえちっぽけで痩せて見えるだろう。
次に現れたのは中くらいのサイズのエルムだ。肌は灰色で、砂のように少しザラザラとしている。まるで火山から流れ出た溶岩のような涙を流している。立派な黒い甲冑を身にまとい、鞘に収められた件が腰のところで揺れている。頭にはアメリカインディアンの酋長のような羽飾りをつけていた。
次のエルムは後方に留まっており、ナニカに乗っている。とても大きな黒色のヤクだ。エメラルドの瞳をしている。このヤクがマジマルだった。間違いなく、このヤクが一行の異常なまでのジンを隠し、奇襲を成功させたのだろう。
そのヤクに乗っている騎手は、顔が掘られたマスクで、本物の顔をすっかり隠している。大きなターバンが光輪のように頭に巻かれ、体の形に沿って豪華に仕立てられた鎧を身に着けていた。それは薄くて体に密着しており、他の仲間と比べてはるかに貧弱そうだ。鎧を着ていても小柄で、それどころか痩せこけているように見える!
しかし、最も途方もないジンを発しているのもこのエルムだった。計測不可能なほど…
ヤクを除けば、彼らは皆火のエレムだった。見た目からも分かったが、何よりもアグニズと同じ匂い、焦げた段ボールのような匂いがする。おそらくこれが、カルシネ大陸の匂いなのだろう…
間違いない、全員アルドン帝国の一員だ。やがて、真っ黒で中央に燃え盛る青い円が描かれている軍旗が2枚現れた。
状況はこれ以上悪化しようがなかった。もし彼らがハルの石を手に入れれば、世界は破滅まっしぐらだ。今、グレーイ、パリ、アプルはその理由をやっと理解した。彼らの力は常軌を逸している!
最初に体を起こしたのはアテリスだった。この大蛇にとっても簡単なことではなかったが、屈辱的な姿勢でいるのはプライドが許さなかったのだ。凄まじい重力がありながらも立ち上がり、敵の姿を正面に捉えた。しかしアテリス自身、実はこの怪物たちと戦うことがいかに無意味なことか分かっていた。それにも関わらず、奇妙に微笑んでいるように見える…
その瞬間、仮面をかぶったエルムが大蛇に目を向けた。その目に大蛇を映した瞬間、火打石のようなエルムの巨体が、すぐさまアテリスの目の前に現れた。まるで瞬間移動したかのような素早いスピードで、巨大な体躯にもかかわらず、主人公全員合わせたよりも速い…
アテリスは、まるで魔法のように突然目の前に現れた敵の姿を見る時間しかなかった。次の瞬間には強烈な一撃を食らっていた。大きく振りかぶった拳がアテリスの顎を直撃した。その強烈なアッパーカットの音は、山の外からでも聞こえるほど響き渡った。
その威力は絶大で、天井をぶち破っただけでなく、そのまま朝の眩しい空に浮かぶ雲まで投げ飛ばされた。その時まだ意識のあった大蛇は、空と太陽の美しさをじっくりと眺めることができた。
憎んでいたはずのその光と暖かさが心地よく、安らぎを覚えた。怒りも緊張も全て消え去り、残ったのは、目の前に広がる柔らかな地平線を、もう二度と拝むことが出来ないかもしれない地平線を、美しいと眺める一匹の蛇だけだった。
下では、黒い巨人がアーティシュの球を放っていた。そして、巨大な赤い軌跡を後ろに残しながら、真っすぐに哀れなマジマルの元に向かっていった。そして…一瞬の闇の後、信じがたいほどの規模の爆発が青色の空を明るいオレンジ色に染め上げた。周囲の地域にまで響くほどの轟音が鳴り響き、主人公たちは耳鳴りに襲われた。
そして…偉大で誇り高き大蛇、ハルの石の守部であるアテリスの存在は消え去った。後に残されたのは、天井に開いた穴から差し込む一筋の光だけだった。
一瞬の静寂。グレーイたち一行は、自分たちの最期の姿を想像していた。アテリスにでさえ太刀打ちできなかった我々が、どうやってこいつらに立ち向かえばいい?アグニズの様子が一番酷かった。死んだ魚のような目をし、最悪の悪夢が目の前に現れた、というような表情をしていた。
こんな状況にも関わらず、パリの心はまだ希望を持っていた。パリはハルの石からわずか数メートルのところにいたのだ。未来はどうなるか分からないが、失うものも何もない。だってもう最悪の事態の渦中にいるのだ。これ以上悪くなりようがない。パリが心を固めるのにそう時間はかからなかった。何があっても、帝国があの石を手に入れてはいけない。
いや、誰もあの石を手に入れてはいけないのだ!
パリは全ての力を振り絞り、出来るだけ多くの精霊を呼び出した。精霊たちに一所に集まるよう呼び掛けると、すぐに集まってきた。全てのエネルギーを一か所に集めた。ハルの石にだ。そして白の貴婦人は、今までのマジマル生で一度も発したことのないほどの恐ろしい叫び声を上げ、こう唱えた。
「殲滅せよ!!!」
まるで冥界からやってきたキメラが、怒りで咆哮するがごとく叫んだ。その獣じみた叫び声は、帝国の謎の戦士たちをも驚かせた。
白い光の環がハルの石とその周囲を包み込み、その光で主人公たちは壁に投げ飛ばされた。パリも例外ではなかった。アルドン帝国の一行はその場から身じろぎ一つせず立っていたが、頭に羽飾りをつけたエルムだけが、腕で顔を覆って爆風から身を守っていた。
光が洞窟全体に広がり続け、グレーイたちが壁に押し付けられ悲鳴を上げる中、千の秘密を隠す大岩の姿は、徐々に粉に変わっていった。嵐が止んだときには、先ほどまで石があった場所には、代わりに地中深くまで窪んでいる巨大なクレーターが残されていた…
そう、誰しもが欲していたハルの石は、誰の手にもわたることなく破壊された。アテリスが守ってきたものは、守部の後を追うように、彼が消えた数秒後に同じく消え去った。これが運命だったのだ。
パリはジンを使い果たしてしまったのか、地面にバタっと倒れ込んだ。仲間たちは、火の戦士たちと対峙するためにまだ立ち上がろうとしていた。石が消滅した今、この悪魔たちと対決しなければならない…これがが最後の戦いとなるのは明らかだった!
しかし、轟音の後に訪れたわずかな静寂の中で、声が聞こえた。
「親父…?」
ためらいがちにアグニズの口から出たその言葉は、遠く離れた場所にいたグレーイとアプルの耳にもはっきりと届いた。まさか、この中にキングエンペラー、カザン帝王がいるというのか!?この惑星で最強のエルムが!?
突然、恐ろしい騎士が動き始めた。パリが石を破壊した衝撃で出来たクレーターをじっと見つめた後、頭が震え始め、次に体までも激しく震え始めた。まるで激しい痙攣に襲われているかのように見える。不気味な光景だ…
そして彼は天井に向かって腕を上げ、春の空のように暖かく青い球を出した。アーティシュか?次の瞬間には洞窟内の温度は数十度も上昇し、まるで洞窟全体が巨大なオーブンに変わってしまったかのようだった。
その小さな球には、少なくとも、山全体を消し去るほどの力が宿っていた…
アドレナリンの力を借りて、アグニズは突然立ち上がり、パリに向かって駆け寄った。パリと棋士との間に立ち、両腕をあげ、体を炎で包み込み、かつては自分の父親だったエルムの目を真っすぐに見据えた。歯を食いしばり、目には殺意を宿している。アグニズは、これから起こる全てを覚悟しているようだった!
アグニズが最強のエルム、カザンと対峙した。
この再開がもたらすものはいかに…




