~相克~
♪ BGM : ポケモン - ラストバトル(VSライバル)
守部がそう言い終えるや否や、ザグニが猛スピードで攻撃を仕掛けるたびに飛び出した。文字通り、飛んでいった。そして何か目に見えないものにぶつかり押し戻された。それに触れると、壁がみんなの目の前に現れた。そう、アテリスはバリアを自身の周りに張り巡らしていたのだ。緑色の大きな泡のようだった。
「ザグニ!」パリが叫んだ。「コイツもアタシと同じで精霊使いよ!気を付けなさい!」
「精霊の力か!?」石炭が口元に笑みを浮かべながら尋ねた。「オモシロイじゃねぇか…マジマルを倒せるのはこれが初めてだ!」
そして大慌てで駆けよってくるグレーイ、パリ、そしてアプルを見た。
「このミミズ野郎を倒すのに、てめぇらの力は必要ねぇぞ。」と高慢な態度で見下すように言った。「てめぇらは何の役にも立たねぇ…コイツを焦がすのに、2秒あれば十分だ!」
もちろんグレーイはむっとしたが、言い返す余裕はなかった。ザグニはアテリスに向き直った。アテリスは泰然自若と次の攻撃を待っていた。石炭はアーティシュを連続して蛇向かって投げつけた。その全てがバリアに阻まれ、巨大な爆発が起こった。山全体が揺れているかのようだった。
その煙の奥でアテリスは、1センチたりとも動いていなかった。静かに次の攻撃を待っている。嘲笑していたが、突如煙が吹き飛んだ。煙幕を覆っていた渦の中心にいたのはザグニだ!拳が激しい炎に包まれている。
打撃を与えると、蛇のバリアは激しく震えた。しかしそれだけだった。少なくともそう見えた…燃え盛る石炭は拳を振り上げ、ライオンのように咆哮し、更に強力なアーティシュを拳にまとわせ、それから再びバリアに一撃を食らわせた。
炎が泡の形のバリアを包み、そして間もなく耳をつんざくような爆音が鳴り響き、バリアは木っ端みじんに砕け散った。アテリスは不意を突かれた表情をしている。ザグニはすかさず蛇に向かって突進していった。今、このエルムの力は最高潮に達していた。ジンがここまで高まったことは、これまでなかった。次の一撃は間違いなくアテリスの頭を吹き飛ばすだろう。
数メートルまで距離を詰めたところで、トゲトゲの大蛇の瞳が突然、髪の毛と同じくらい細くなった。そして、ザグニ自身でさえ気が付かないうちに、その体が蛇の歯で覆われ、今にもその体内に飲み込まれようというところであった。
アテリスの大きな毒牙の一つがザグニのお腹の辺りを貫いた。突然の焼けるような痛みに、哀れな石炭は金切声を上げた。この恐ろしい光景を、仲間たちは戦々恐々と見ているしか出来なかった。
突然、アテリスは牙が熱くなり、口内が焼ける感覚に襲われた。そしてザグニを痰でも吐くかのように吐き出した。ザグニは遠くに投げ飛ばされ、地面を転がり続け、やっと止まった。
アプルが急いで駆け寄った。ザグニの傷口からは激しい炎が噴き出していた。アプルは両手を合わせ、傷口に当てた。すると手を合わせたところから、まるで太陽の光のような柔らかな光が注ぎ込まれた。アプルが治療を始めると、ザグニは口の中に不思議な甘い味が広がるのを感じた。
こうすることで、治療の水の流れを加速させることが出来るのだ。治療が始まるとすぐにザグニは楽になった。アプルは嘘をついていなかった。本当に非常に優秀なヒーラーだったのだ!
突然、ザグニが激しく動き始めた。
「ぐぁあ!い…痛い!!!」
「落ち着いて!」アプルが叫んだ。「毒が広がっているのよ…」
「な…何?!」
「心配しないで。あなたの火の血は、私なしでも立派に毒と闘ってる。どうやら毒に対する免疫があるみたいね!」
石炭はまだ動ける状態ではなかったが、他の仲間の前で面目を失いたくもなかった。そこで、やっとの思いで体を起こし、座ることに成功した。火で出来ていてよかった。そうでなかったら、今頃蛇の胃の中でお陀仏だ。
ハルの石の守部を倒すのはやはり容易ではなかった。3エルムと1マジマルでも、失敗する可能性があった。
アプルがザグニを治療している間、パリとグレーイは蛇に立ち向かった。どうやら何か作戦があるらしい。アテリスは、代わる代わる無謀に挑戦してくる彼らを見て楽しんでいた。守部の目には全てがただのゲームに見えていた。挑戦者を馬鹿にしていたのだ。唯一の脅威は白の貴婦人だけだった…
「これが貴様たちの全力か、なんと哀れな!」アテリスは叫んだ。「そして、貴様、フクロウ。そんな姿になってまで、エルムに近付きたいというのか?そんなに似せたいのか?無意味な戦いの元凶であり、精霊の力も届かぬ、我らマジマルより劣った存在だというのに!」
「あんたには感謝しなくちゃいけないみたいね。そう、アタシも誇り高きマジマルよ!でもね、あんたはエルムのことを何にも知らない。あんたがしてること全て、アタシには気に入らないのよ!反面教師にさせてもらうわ。神がアタシに、進むべき道を示してくれたことに感謝しなくちゃ!」
そして振り返り、一瞬だけアプルに視線を投げた。今やアプルは親友であり、初めての真の友であった。アグニズ、グレーイ、アンシャンバーダルもいるが、彼らとは、りんごのエルムとの間に芽生えたようなものは得られなかった。
エルムの親友でるパリ…パリ自身も時々、これは夢なんじゃないかと思うほどだ。しかし、現実である。
パリの言葉に吐き気を催したアテリスは、攻撃的な声でこう言い放った。
「こんな惨めなヤツをご主人様に持った精霊に同情する…それで貴様は…」
アテリスが言い終える前に、グレーイが突然ツを噴射した。グレーイは不意打ちの攻撃が大好きだった!しかし、敵の素早さを見くびっていたようだ。大蛇は難なくツの波を避け、攻撃対象がいなくなったツはそのまま後ろの壁へ突進し、激しく爆発して、壁の一部分を吹き飛ばした。
実は、これこそが狙いだった。グレーイの攻撃は目標に当てるためではなく、目くらましのためだったのだ。アテリスの注意がグレーイに完全に向いている間に、パリはハルの石に向かって突進していた。
しかし、パリが石に完全に近づく前にそれに気付いた蛇は、パリを見るや否や麻痺状態にさせてしまった。蛇が自身の精霊を呼び出し、白の貴婦人の動くを封じてしまった。あと10メートルというところだったのに…
パリはうめき声をあげ、どうにかこの力比べに勝とうともがいたが、アテリスの強大な力の前では無力だった。見えない鎖を解くことは叶わなかった。
蛇は、敵が必死にもがく姿を見て快感を覚えていた。だから、パリのこのリアクションも、純粋に自分の注意を引くためだったとは考えもしなかった。グレーイとパリは、自分たちがアテリスのスピードに敵わないことはわかっていた…だから、この力の差を埋める唯一の方法として、協調攻撃を仕掛けることにしたのだ!
つまり、守部のことを見くびっていたわけではない。
アテリスは突然、顔面に巨大な一撃を受けた。守部がパリの方に顔を向けた瞬間、グレーイがヴァハを使って瞬時に蛇に向かって突進したのだ。その一撃には全ての勢いと力が込められていた。ザグニが自分の拳にアーティシュを纏わせたように、グレーイも自分の拳をツで包んでいた。
その一撃が蛇の顔面に命中した瞬間、ナミアが巨大な水爆弾のように爆発し、その衝撃でグレーイ自身も後方に吹き飛ばされた。
守部はグロッキー状態だった。今回は、守部の方が敵を見くびっていたようだ。グレーイがこんなに速く動けるとは、予想だにしなかったのだ。
蛇の頭は完全に横を向き、口を大きく開け、目は虚ろだった。しかし、グレーイはこれで終わりにするつもりはなかった。むしろ、完全に「終わらせる」ために、再度ツの波を放つ準備をしていた。
しかし、放つ前にアテリスが意識を取り戻してしまった。その瞳が雨雲を捉えたかと思うと、一瞬のうちにその鼻先でグレーイを払いのけた。グレーイは天井の壁をズザザザーっと引きずられる格好で擦りつたい、そして地面にポトリと落ちた。
「グレーーーーイ!!!!」とパリが叫んだ。
「下劣な害虫よ、お遊びはここまでだ!」と蛇が低く唸るような、怒りのこもった声で叫んだ。「貴様ら、俺様の道を横切ったことを後悔させてやる…全員、1エルムずつ食ってやる!!」
その言葉と共に、アテリスのジンは一変した。もう対等に戦えるレベルのものではなかった…実際、主人公たちの力を全て合わせたよりも、蛇の力の方が遥かに強力だった。実は最初から、この蛇は準備運動をしていたに過ぎなかった。その上、今や立っているのはパリだけとなってしまった…
可哀そうなアプルは戦闘要員には程遠かった。まだ感情を上手く制御することが出来ず、洞窟に入った瞬間から震えていた。グレーイが地面に倒れるのを見て、完全に打ちのめされてしまった…
その小さな赤い体はガクガクと震え、今にも気絶しそうに見えた。気が付かないうちにザグニの治療を止めてしまっていた。もうかなり痛みが和らいでいたザグニは、アプルの異常にすぐに気が付いた。
「グレーイの面倒を見てこいよ。」とりんごに言った。「俺のことは心配するな。俺は…痛っ…耐えられる。」
ザグニが消え、アグニズが再び姿を現した。アプルは返事をしようと口を開いたが、その前に激しい爆発音が響き渡り、石の破片が四方に飛び散った。
一行が蛇の巣穴に入るために通った壁が粉々に砕け散ったのだ。巨大な爆発が起こった瞬間、その場にいた全員が、トゲのある蛇も含めて、地面に倒れ込んだ。目に見えない圧力によって地面に押し付けられた。まるで重力が10倍になったかのような、かなり強力な力だ。
何物かがハルの石の洞窟に侵入してきた…非常に強い何物かが…
アテリスと主人公たちの戦いに割って入ったのは、何物なのか。
味方か、それとも…




